2. 季節的におかしい
「そ、そんな急に言われても!フィールドオブビ◯ーじゃないんだから!」
隣で私が種を齧る様子をずっと怪訝そうに眺めていた彼女は顔を赤らめながらそう口走ったが、私は5秒程のあいだ何を言っているのか理解出来なかった。
「I see.」
私がそう言ってから暫く静かな時間が流れた。
想いは届かない。分かっている。
突然だが、何というか彼女にはひまわりのような感じがある。いつもこの花のように太陽を向いていて、小町かつ天使といった様子だ。
一方私にはもうパンを買う金すら残っておらず、パンツを買う金も持ち合わせていない。
こうして向日葵の種を齧っているのも、今にして思えば腹が減っていた故の事だった。そして今もパンツを履いていない。
こんなクズ虫に彼女が振り向いてくれる筈など無かろう。
夏が終わり、この花が枯れる頃には種も無くなってしまうだろう。そうなると次はどうやって飢えを凌ぐか、考えなくてはいけない。
いや、ちょっと待て。何かおかしい。
向日葵が種をつけるのは花が枯れてからではないのか?
何故こんな満開状態で種がぎっしり詰まってしまっているのだ?
一体全体どうしてそんな事に今まで気が付かなかったのだろう。これではお花畑なのは、この公園ではなく筆者の頭ではないか。
それはさておき、この向日葵は明らかに普通ではない。しかし私はすでにこの花の種を一輪の約半分程口にしてしまっている。果たして大丈夫なのだろうか。
パリ、パリッ。
私が足元に落ちている大量の殻を踏み潰した音と共に冷や汗が背中を伝う。急に不安になってきた。加えて言えば、さっきから彼女の沈黙が長過ぎるのだが。帰りたくなってきた。