2、トランス~はじめてのたたかい
皆さんは異世界というものをご存知だろうか。まあ、説明しろとか言われてもそれぞれだと思うので、自分で調べてもらったほうが早いかな。最近のライトノベルって異世界転生物が多かったと思うけど、もしかして僕もその異世界転生とやらなのだろうか。あれ、もしかしてそれだったら僕死んでない!?急に心配になってきた。
「そういえば僕って死んだの?」
そうカノちゃんに聞いてみる。
「いえ、肉体をコピーして意識だけを睡眠をスイッチとして行き来できるようにしただけなので死んでしまったわけではないと思いますよ。一言で言い表すと夢の中、ってことです。まぁ実際は少しちがうのですけど。」
まぁ要するにこの状況をジャンルでいうと交錯物のちょっとひねったやつってことかな?カノちゃんが言うに夢の中ってことらしいので頬をひっぱってみる。………あれ、痛くない。すごい違和感。って言うか痛覚ないとか僕最強なんじゃないのかな?取りあえず本題に入る。
「じゃあ、僕に世界を救ってっていうのは?」
「そのままの意味ですよ。」
そういってカノちゃんはお茶をいれながら説明を始めた。
「この世界はラグナロクという実態のよくわからない組織が作ったといわれているんです。実は私、そこの幹部らしきものが言ってたのを聞いちゃいまして。『あと10個。あとはあの人たちが消えれば世界はカオス様と創造主の望みどうりになる。世界は融合する。』ってね。正直最初のほうはよくわからなかったけど世界は融合するって言うのは明らかにおかしいですよね。」
「もしかして、僕の世界とってこと?でもいったいどんなメリットがあるっていうんだろう。」
「普通に考えて、もし本当にこの世界を作るほどの力があるのなら融合させた後に世界を統一することも可能ですよね…」
「なるほど……だけど、そんな奴ら相手に僕に何ができるの?」
「マスターさんの力ならおそらく何でもできますよ。」
「何でもって……まぁ、僕にできるなら…」
「あの鍵、ゲートキーがあれば魔術の扉を開くことが出来るので。では、まずはその鍵を持って、武器をイメージして『トランス』と唱えればマスターさんの部屋から武器を呼び出せますよ。」
「え、僕も魔法が使えるの?じゃあ…」
半信半疑で今教えてもらった魔法『トランス』を使ってみることにした。そうだな…やっぱり剣がいいよなぁ…。鍵を握り、イメージを固めてその魔法を唱える。
「…『トランス』」
その瞬間、鍵が光ったかと思うとそこにはかっこいい剣が……なかった。
「あ、あれ?」
そこにあったのはなんというか、剣なんかではなく、その…じょ、定規が手に二本握られていた。30cmと50cmの定規が。
「え…ええっ!」
なんでよっ!いや、確かに二刀流だったらかっこいいなとか思ったよ!定規でどうやって戦えって言うのさ!?
「マスターさん?それは一体?」
「じょうぎ。」
「え?」
「だから、じょうg…」
ドォォォォン。どこからか爆音が聞こえ、定規のほかに握っていた鍵が黄土色から赤色に輝いている。
「なになに!?なんなの?」
「来るとは思っていたけどこのタイミングですか…マスターさん、奴らです。とりあえず行きましょう!『テレポート』!」
カノちゃんが『テレポート』という転送魔法?を鍵に向かって唱えると次は白い光に包まれ、先ほどの部屋とは違う場所(というか外)にいた。
「なんだ…こ…れ?」
ここがどこだかはわからない。そして、ここに送られてきたことへの驚きよりもその光景に驚いたからだ。その景色は家が焼かれ人が殺され…
「な…んで…」
「これはひどいですね…」
「あそこだ!あそこにもいるぞ!やれ!」
「?」
目の前から黒い何がやって来る。
「なんだ?」
「マスターさん、来ますよ!」
「うおっ!?」
僕はヒーロー系のアニメに出てきそうな敵戦闘員らしきものの刃を奇跡的な反射神経で受け止めた。そう。手に持っていた定規で。
「ちょ、ちょっとまずいよ!」
「マスターさん、ここは任せます!『コール』!来て、〈フルンティンク〉!」
カノちゃんは〈フルンティンク〉という剣を呼び出し戦闘員を倒していった。
「えぇ…」
だけどこのままだとこっちまでやられてしまう。仕方ない。これ、どうせあれでしょ。これ(定規)で切ろうとしたらバキッっていく奴なんだろうなぁ…ま、やられるよりかはマシかな。結構使い込んでたんだけど。えいっ。
………バキッ
「あっ…」
あぁ…今までありがとう。定規君。
「ん…さすがですね、マスターさん。」
あれ?カノちゃんの声が聞こえ、その発言が気になったので周りを確認してみると、まあなんと、定規君がいるではないか。まさか、さっきの音が敵が吹っ飛んだ音だったとは…。僕の別れの時間を返せ。
…ともかくこれはチャンス。定規君で敵が倒せるっぽいのでカノちゃんに加勢する。
「まだ行けますよね、マスターさん!」
「さすがに量産型2体程度でバテてたら男が廃るよ…」
「そうですね。さ、一掃しますよ!『フレイム』!」
カノちゃんがそう唱えるとその手に持った〈フルンティンク〉が炎を纏った。
「〈フルンティンク:フレア〉!はぁぁ!」
豪快にその炎を纏った剣をぶん回すカノちゃんは周りにいた量産型(仮称)を宣言通り一掃した。その跡には量産型の姿は無かった。……ただ一つを除いて。
「ほう、やるな。さすがは過去の町の焔神と呼ばれた女か。」
「ちょ、あれだれ?知り合い?めちゃくちゃ強そうだけど。」
「いえ、少なくとも私はあのような方に覚えはないですけど。」
そのカゲは一瞬にして炎…いや、焔を纏った。
「私は偉大なるユグドラシルの十大幹部の一柱、焔のボルケーノ。」
「ユグドラシル?ああ、例の組織か。」
「ぬ?そういえば貴様先ほど妙な武器で穿たれた者を倒していたな…貴様一体何者だ?」
なるほどあの量産型はエインヘリアルっていうのか。無駄にかっこいいな。量産型につける名前じゃないでしょ…
「まあいい。今日は貴様と勝負してみたくてな。焔神。」
「私ですか。いいでしょう。マスターさん、手出しは無用です。下がっててください。」
「僕なんかが手出ししたらたぶん即死だよ…」
そう言い残しカノちゃんは〈フルンティンク〉を手にボルケーノと一揆打ちになった。というか、僕初戦闘なんだけどなぁ。確かエグゼクティブって幹部とかそんな感じの意味じゃなかったっけ……いきなり幹部クラスとか聞いてないよぉ……。
「いくぞ、焔神!『コール』〈霊剣レーヴァテイン〉!さぁかかってこい!」
「はぁっ!」
「甘いっ!」
「くっ…。これならどうだ!『バーニング』!」
ボルケーノの炎の剣『レーヴァテイン』とカノちゃんの魔法『バーニング』、二つの炎が混じる。
「……期待外れか。」
ボルケーノはそう呟くと手に炎を纏って、
「本物の焔というものを教えてやろう。『バーニング』!」
「くっ……」
激しい攻防が続いていたところでカノちゃんが仕掛ける。
「ここでで終わらせるっ!『エクスプロージョン』!」
カノちゃんが距離を離し爆裂魔法を打ち込む。しかし…
「遅い。……『進化』〈レーヴァテイン:火山〉」
その爆裂魔法を炎剣から炎槍へ変化し、軽量化した『レーヴァテイン』は、ボルケーノは素早い動きで爆裂魔法を避けカノちゃんを裂いた。
「キャアァァ!」
悲痛な叫びとともに僕は目の前が真っ白になった。だが、その白は瞬く間に復讐の紅き焔でうまっていった。実際にはその瞳は黄みがかった白き瞳だったが。ここからは僕の意識は無くなっていた。実際には入れ替わった、と代弁するのがいいだろう。
「フン、噂に聞くほどでもなかったか。」
「…おい。ボルケーノ。俺が貴様を切り刻む。貴様が死に絶えるまで。」
「ほう、お前が私とやろうというのか。面白い。やってみるがいい。貴様、名前は?」
「いまから死にゆくものに名乗る必要性はないとみた。俺はお前を許さない。『再構築』〈霊剣ブリューナク〉。」
「ほう、その自信がどこまで続くかな?」
月夢の持っていた二本の定規は『再構築』により粒子になり、更に姿を変えていき1本の輝く耀の剱〈聖剣ブリューナク〉へと姿を変える。
「……『進化』〈ブリューナク:深海〉。」
「な、なに!?その力は…」
「う…あ、あれ…は…?」
すると光り輝く〈ブリューナク〉が深海の如く、海色に輝き、蒼いオーラを纏った。さらに月夢の瞳も耀から海色に輝く。
「散れ。『アビスシュトローム』」
深海の力がボルケーノにぶつかる。あまりにも一瞬だった。月夢には聞き取れなかったが、最後に「なぜその技を使える!?まさか、あなたが?そんな…そんなまさかぁぁぁぁ!」と叫んで消えていった。〈霊剣ブリューナク〉は二本の定規に戻り、その時同時に月夢の瞳も元の色に戻った。
2、読んでいただきありがとうございます。まさかの2での主人公の一時的覚醒。とりあえずたぶん次の3で1章が完結して2章に入ります。投稿は週2か週一です。基本、土日火のどこかで投稿させていただきます。これからもよろしくお願いします。




