裏野ドリームランド調査報告書‐その後‐
学園祭の直後、大規模なドリームランドの捜査が行われ、地下室の中の拷問部屋が発見された。死臭と黴臭さ、腐った人間の肉片、完全な防腐処理をなされた少年少女の生首……。想像を絶する狂気の現場に、世間は震えあがった。その被害者遺族に群がるマスメディアの群衆はすさまじく、まるで彼らを痛めつけているように思えてならない。私の報告の後、気味悪がられたドリームランドの取り壊しは決まった。しかし、たった二つだけ、そのままの形で残ると決まった場所があった。
町の雑踏の中に足を踏み入れると、オカルトとは無縁の人々の営みがあった。そんな街の中には、善意の募金を繰り返す人もいるし、スマートフォンと睨めっこしながら、面接会場に急ぐ就活生もいる。にぎやかに騒いだり、わがままを言う子供たちがいる。その中に、懸命に募金活動を行う宮島の姿があった。
「おぉ、宮島。募金活動か」
宮島ははにかみがちに笑った。
「はい、なんか、あいつらに恥じない人にならなきゃ、って思ったら、いてもたってもいられなくなって……」
「そうか、頑張れ」
「はい」
裏野ドリームランドの入れ替わり事案は、どれも奇妙なものだ。明るくなる、積極的になる、子供好きになる、極端に憶病になる……。ある意味では個性的な変化がみられる。また、自殺志願者はこぞってタイミングを逃した、と笑うようになるという。私たちの知る限り、入れ替わり事案というものは霊的なものに体を乗っ取られる、と言ったものが多いように思えるが、この事例は、より根源的な、内面の変化なのではないか。私は、そのように考えている。そして、私たちが見たものと長く触れれば触れるほど、少しずつ、凍えた心が温まり、癒えていくのではないか。私は、そう思わずにはいられないのだ。