Boy’s side ~Part3
「碧いおもちゃ箱」シリーズでご覧下さい。
「君のいない夏」
君に触れた僕だけが抱いた
その温もりは確かなもので
忘れはしない忘れられない
君が姿を消したあの夏の朝
眩しかった日射し鳥の囀り
君がいない君だけが欠けた
日常を未だ信じられないで
ただ立ち尽くしている僕を
嘲るかのように今年もまた
夏は巡り来る孤独のままに
「君の涙」
さりげない偶然で君を抱いた夜
耐えていた君の濡れた髪の雫が
僕の胸の上に流れ落ちた
髪を梳くたび一筋に伝う
泣いているように
けれど決して流さない
君の涙のように
「至福の時」
ふと気がつくと探している
彼女の姿、彼女の視線
その夢見がちな瞳の奥には
遠く離れているらしい恋人の
姿だけが映っている
君は淋しさに泣いたりしないの
時に不安にかりたてられないの
心で君に語りかけながら
でも僕は真実を知ってる
君の涙も君の迷いも全て消し去る
その左手の薬指に光る金の指輪を
見つめているその瞬間の君の至福
「独白」
わからない
わからない
君を永遠に失って
それでも僕が生きている
生きていく意味がわからないんだ
「南国娘」
それはふとした瞬間に
君の髪からフルーツの香り
甘く酸っぱい果実のかほり
だから僕は急に君を抱き締めて
食べてしまいたくなったんだ
「離さない」
触れただけで壊れてしまいそうな
優しく儚げな君
こわれてもいい
抱き締めてこの腕の中から永遠に
誰にも渡さず離したくない……
「天使のような」
首筋に絡みつく指
吸いつく口唇
黒々と濡れた瞳で
僕を惑わす
君は堕天使
「幸福の条件」
お願いだ
瞳を開けてくれ
今一度、その声を聴かせてくれ
幸薄い貴女をこのままで逝かせたりはしない
何があってもこの魂を悪魔に売り渡してもだ
「君の涙」
君の流す涙だけは
見たくないと願っていたのに
僕が本当の心を口にしたばかりに
君を困らせ傷つけた
どうすれば君の涙を拭えるだろうか
ああ、こんなにも愛しているのに……
「ラ・シルフィード」
君は翔けてくる木漏れ日の中
僕は両手一杯で君を抱きとめ
その腕を天へ掲げる
君は空を舞う
シルフィードのように……
そんな幻影を想わせる君は美しく
今日も踊るチュチュを靡かせ
「君の笑顔」
長い髪を三つ編みにして麦わら帽子を
かぶった君の笑顔は心から眩しかった
了