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おい誰か。もの言えぬ吾輩に、協力してくれないか?

注)コレは吾輩(猫)のご主人様とその恋人殿の日常の些細な喧嘩の一部・・を台詞のみでお送りするだけの短編小説です。

過度な期待はしないで下さい。


「ばっかじゃねーの!? 今日、五時に来るっつったのお前じゃねーか!!」


「うるさいわね! 私は来たくて来たわけじゃないんだから!」



ああご主人。

また恋人殿と喧嘩しておるのか。


まったく、顔を合わせるたびに怒鳴りあいをするのはやめてほしいものだ。


この間、吾輩の友猫が『君のご主人様の声、ご近所中に響き渡ってるよ』と言って来た時、吾輩がどれだけ恥ずかしい思いをしたか……ご主人達には分からないだろうな。


ああ。

この気持ちをご主人達に伝える術があれば良いのに。


おい誰か。

もの言えぬ吾輩の代わりに、奴らに手紙を贈ってくれないか?


『いつもいつもうるせぇんだよ。ちったー近所迷惑考えろ。』


これだけ書かれていれば、あとの余白は好きに使ってくれ。

できればご主人達が喧嘩をやめてくれるような内容が良い。


ご主人達のせいで、吾輩は恥ずかしくて外も歩けんのだ。




「なに一時間も前に来てんだよバカ! 嬉しすぎて心臓飛び出るかと思ったわ! 俺を殺す気か!? ふざけんなよ!!」


「知らないわよそんなの! 私はたまたま気が向いたらからはやく来ただけで……べ、別に、はやくあんたに会いたいからとかじゃないんだからね! 本当に気まぐれなんだからね!」


ああ。

また今日も始まった。


隣の部屋に住む友猫のミケたん(オス)曰く、とある業界ではご主人のような人の事を『ツンギレ』といって、恋人殿のような人の事を『ツンデレ』というのだそうだ。


ちなみにミケたんのご主人は

『ツンギレ彼氏にツンデレ彼女とかふざけんなよ! 天然記念物かよ! つーか濃すぎんだよ会話が! 末永く爆発しろ!』

と、某掲示板に書き込んでいたそうだ。


ご主人達のせいで不愉快な思いをさせてしまって、吾輩はとても申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

どうにかご主人に飼われる身として謝罪したい。


ああ。

吾輩にぱそこんを操る技術があれば良いのに。


おい誰か。

もの言えぬ吾輩の代わりに、某掲示板に書き込みしてくれないか?


『吾輩のご主人達のせいで、不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありません。つきましてはもう一匹猫を飼う気はありませんか? 青いお目々の可愛い白猫です』と。


吾輩はご主人達の会話を聞かされながら飼われ続ける事に絶望を感じてきたのだ。

吾輩を飼ってくれるという人がいれば、喜んでその人の元へ行こう。



「あんた誕生日なんでしょ? ケーキ持ってきてあげたわよ! 感謝しなさい!」


「お、お前やっぱりアホだろ! こんなもん食えるか!!」


「なんですってぇ!?」


「聞いてねぇよこんなサプライズ!! このケーキどっからどう見ても手作りじゃねーか!!」


「か、勘違いしないでよね! 最近ちょっとお菓子作りに興味があっただけで……本当にたまたまなんだからね!」


「たまたまで俺の大好きなザッハトルテかよ! お前、お菓子作り苦手だって言ってたじゃねーか!! なんだよこの完成度! こんなもんディスプレイして飾るしかないだろ!!」


「あんたのために頑張って練習したなんて死んでも言ってやらないんだから! っていうかディスプレイとかなに考えてんのよ! 食べないなら持って帰るわよ!?」


「はぁ!? くっそ! 覚えとけよ!? 写真撮ってツイートしてフォロワーに自慢してやる!!」


おい誰か。

もの言えぬ吾輩の代わりに、ご主人のツイートに書き込みしてきてくれないか?


『お宅の猫、毛が逆立ってますよ』と。


運良くご主人の撮ったケーキの写真に写り込めたのだ。

ご主人達に、飼い猫にまで引かれるような会話をしているという事実を教えてやってくれ。


できれば『m9^Д^)』この顔文字を使ってくれるとありがたい。

吾輩の鬱憤も少しは晴れよう。




「偶然、本当に偶然、あんたが欲しがってたCD見つけたから……これプレゼントね!」


「な、なんだよこれ……ふざけんなよ!? 俺の欲しいもんは先週発売のクレイのCDだけだっつっただろ!?」


「だからそれがクレイの新曲でしょ!? あんた目、大丈夫?」


「なんでサイン入りなんだよ!」


「た、たまたまサイン会に行っただけよ!」


「バッカじゃねーのお前!! それ昨日の北海道イベントだろ!? あのイベの前日お前仕事だったんじゃねーのか!?」


「うるさいわね! そんなの日帰りに決まってんじゃない! 北海道まで行ってやったっていうのに文句あるの!?」


「ねぇよバーカ! 家宝にするしかねぇよバーカ!!」


「ば、バカっていう方がバカなのよ! バーカ!」


「はぁ!? もう一回言ってみろ? さすがの俺でも許さねぇからな!? 抱きしめて一生離してやんないからな!!!」


「な、何度でも言ってやろうじゃないの! バーカバーカ!!」




おい。


おい、誰か。

もの言えぬ吾輩の代わりに、奴らに爆弾を贈ってやってくれないか?


個数は個々の判断に任せる。

多ければ多いほど、良い。


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― 新着の感想 ―
[良い点] コミカルで読みやすかったです! あと、ご主人達の会話と我輩君の温度差が激しくてめちゃくちゃ笑ってしまいました(⌒▽⌒) [一言] 続編を書いたりしませんか?
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