復活のスチャラカOL新人社員編(千百文字お題小説)
沢木先生のお題に基づくお話です。
秘密のアルバイトをお借りしました。
律子はスチャラカなOLである。
そんな律子に新人社員のお目付け役が言い渡された。
「無理ですよ、課長。お目付け役が律子君では何の意味もありません」
梶部係長は同期の平井課長に苦々しいながらも敬語で進言した。
「いいんだよ、それで。律子君がお目付け役でしくじれば、クビにする理由ができるだろう?」
平井課長は魔王のような顔でニヤリとした。
(相変わらず狡い奴だ……)
梶部係長は呆れてしまった。
そんな裏事情があるとは夢にも思わない律子は新人社員の杉村君の教育係を言い渡され、喜んでいた。
「やっと課長も私の実力を認めてくれたのね」
どこまでもポジティブシンキングな律子を同期の香は半目で見ている。
(毒を以って毒を制す、なのかな?)
性善説支持者の香は、課長の采配をそう解釈した。
「よろしくお願いします、律子先輩」
杉村君は絶対に残業をしないため、先輩社員にも睨まれている。
律子との組み合わせは、悪い意味での相乗効果が発揮されると誰もが想像した。
「私は厳しいわよ、杉村君」
律子が真顔でそう言ったので、二年目突入の出島蘭子は噴き出しそうになった。
律子の彼氏の藤崎君は心配そうだ。
「蘭子ちゃん、今夜、空いてる?」
三年目の須坂君がこっそり尋ねる。
「空いてますよ」
蘭子はニコッとして応じた。最近いい感じの二人なのだ。
そして定時が近づき、杉村君がサッサと帰り支度を始めた。
香達は律子がどうするのか見守った。
「よし、今日は飲みに行こうか」
律子は杉村君を引き連れて自分も定時であがってしまった。
「やっぱり……」
香は項垂れたが、課長はほくそ笑み、係長はそれを見て呆れていた。
そして次の日。
出社して来た律子を香が呼び止め、昨夜の事を問い質した。
「杉村君ね、ここの給料だけじゃやっていけなくて、秘密のアルバイトをしてるのよ」
「それまずいでしょ? ウチは副業禁止で、見つかったら即解雇だよ」
香は仰天した。すると律子は、
「昨日で辞めたみたいだよ、杉村君。何があったのか知らないけど」
「そうなんだ」
香は複雑な思いで頷いた。
するとそこへ杉村君が出社して来た。
香が声をかけようとすると、杉村君は課長室に直行してしまった。
「どうしたんだろう?」
香は律子と顔を見合わせた。
杉村君は課長室で土下座していた。
「平井課長、残業もしますし、早朝出勤もしますから、どうか律子先輩の教育係だけは勘弁してください」
思わぬ効果があり、苦笑いするしかない平井課長であった。
お粗末なのはよくわかってますって(泣)。