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だから、私たちは空に落ちていくフリをする。  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
間章

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11/22

「喉かわいた、ジュースのみたい、しゅわしゅわのやつ!」


 10


 ――――今でも、鮮明に覚えている。

 私はその時、小学三年生で、家族旅行の帰りだった。

 大渋滞している高速道路を避けて、ぐねぐねと何回も折り返す山道を、父が慎重に運転するのを、私は後部座席から見ていた。


 何せ、たくさん遊んだ後の長時間ドライブだったから、車に乗っているだけでも疲れてしまって、うとうとしては目を覚ます、を繰り返して。

 多分、夜の九時を回った所だったと思う、私は、助手席に座っている母に向けて、こう言った。


「喉かわいた、ジュースのみたい、しゅわしゅわのやつ!」


 我が家では、甘い炭酸飲料とかは、お出かけだとか、パーティだとか、特別な時でないと飲めなかった。


「うーん、でも、もうすぐお家につくわよ? それに、こんな山奥でジュースなんて」

「やだ! 喉かわいた!」

「いや、ちょっと待った」


 父が何かを見つけて、お、と声を上げたのだ。

 私のわがままに応えるように、街灯の少ない山道のカーブの途中に作られた、(こぶ)のような停車スペースに、ぽつんと古い自動販売機が置いてあった。


 それなりに深い山道の中において、多分、簡易的な休憩所を兼ねた場所だったんだと思う。

 父はそのスペースに停車すると、私には五百円玉を一枚渡して、言った。


「パパに温かいコーヒー、ママはミルクテイー、それと、ルカが好きな奴を買っておいで」


 ちょっとしたお使いをさせて、機嫌を取ろうという魂胆だったのだと思う。

 実際、私はやったあ、と気分を(はや)らせて、車を降りて、駆け足で自販機に向かった。

 父が何時も飲んでいた銘柄のコーヒーも、母が好きな方のミルクティーも覚えていた。


 お金を入れて、がしゃん、がしゃん、と両親の分を買って、自分のジュースを選ぼうとして、迷った。


 オレンジとメロンの二つがあって、どっちも好きで、だけど両方は飲みきれないし、どうしよう、と悩んでしまった。


 どれぐらい時間をかけたかは、もう曖昧だが、結局、メロンを選んだ事だけは、覚えている。


 もし、この時間がなかったら……どうなっていたんだろうか。

 私も巻き添えだったんだろうか、それとも、手早く出発することができて、避けることが出来たんだろうか。


 三つの缶を抱えて、振り向いたその瞬間。

 後ろから走ってきた、大きな黒いバンが、両親が乗っていた車に、追突した。

 二台の車が、ぶつかって、ひしゃげて、勢いのまま、私の眼前で、ガードレールを乗り越えて、山肌に向かって落ちていった。


「………………え?」


 数秒後、ドン、と大きな音がして、眼下に、赤い光が生まれた。

 メラメラと炎が燃え上がっていく様を、私は、ただ眺めていた――――――。




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