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水たまり

作者: 口羽龍

 8月の昼下がりの事だった。もう何日も雨が降っていない。とても暑い。あまり外を歩きたくない。そんな日が続いている。


 中学生の勇人ゆうとは路地を歩いていた。今日も部活を終えて、家に向かっていた。今日も疲れた。暑いから、早く帰ろう。帰ったら、アイスバーを食べるんだ。


「あっついな・・・」


 勇人は疲れていた。夏休みに入って、部活の時間が増えた。そのせいで、宿題をする時間が少なくなったが、大好きな部活ができるだけでも嬉しい。だが、部活がこんなに長くなるなんて。嬉しさとつらさの両方を感じていた。


「はぁ・・・。今日も疲れた。早く帰って寝たいな」


 と、勇人は路地裏を歩いていると、水たまりを見つけた。もう何日も降っていないのに、どうしてあるんだろう。夕立でも降ったんだろうか? この辺りで夕立があったような様子はなさそうだが。


「あれっ・・・」


 勇人は首をかしげた。どうしてここに水たまりがあるのか、意味がわからない。


「暑いのに、どうして水たまりが・・・」


 だが、勇人は気にしていなかった。早く帰って、今日1日の疲れを取ろう。


「まぁいいや。早く帰ろう」


 勇人は何事もなかったかのように立ち去ろうとした。と、勇人は何かの視線を感じた。誰かに見られているようだ。


「あれっ!?」


 勇人は振り返った。だが、そこには誰もいない。あるのはいつもの路地の風景と、水たまりだけだ。


「何でもないか・・・」


 勇人は再び歩き出した。家まではすぐそこだ。早く帰ろう。


 その時勇人は知らなかった。水たまりからドラゴンが姿を現し、勇人をじっと見つめているのを。


 勇人は家に帰ってきた。家からはいいにおいがする。晩ごはんを作っているようだ。今日は何だろう。全くわからないな。


「ただいまー」


 玄関から家に入った勇人の声を聞いて、母がやって来た。母はエプロンを付けている。やはり晩ごはんを作っているようだ。


「おかえりー。暑かったでしょう?」

「うん」


 勇人はすぐに2階に向かった。アイスバーを食べるより、疲れたので冷房に当たってベッドに横になろうと思った。


「はぁ・・・」


 勇人は2階の自分の部屋にやって来た。部屋には好きな選手のポスターがある。


「寝よう・・・」


 部屋の冷房を付けると、勇人はそのままベッドに横になった。疲れた勇人はそのまま寝入った。


 勇人は目を覚ました。だが、そこは自分の部屋ではなく、今さっき歩いていた路地だ。どうしてここの夢を見ているんだろう。勇人はその理由がわからない。


「ん?」


 勇人は歩き始めた。どうしてここを歩いているんだろう。何か不吉な事の前兆だろうか?


「どうして帰り道・・・」


 と、勇人は何かの気配を感じた。今さっき、この道を歩いた時もそうだった。今度は何だろう。


「えっ!?」


 勇人は振り向いた。そこには水でできたドラゴンがいる。水でできたドラゴンは勇人を狙っているようで、怖い顔をして、大きな口を開けている。


「ギャー!」


 ほどなくして、勇人は丸呑みされた。その直後、勇人は夢から覚めた。どうやら夢だったようだ。そう思うと、勇人はほっとした。


「ゆ、夢か・・・」


 ちょっと変な夢を見てしまったな。今日はどうしたんだろう。まぁ、気にすることはない。また明日、部活を頑張ろう。




 夜になった。小腹が空いてきた。何かが食べたいな。そういえば、今日はまだアイスを食べていない。家のアイスは切らしている。今夜はコンビニで買ってこようかな?


「コンビニ行こっか」


 勇人はコンビニに向かった。夜の路地はとても静かだ。昼間の騒然とした雰囲気がまるで嘘のようだ。そして、少し涼しい。だが、夜も汗ばむ気温だ。今日も熱帯夜のようだ。なかなか眠れそうにないな。


 勇人は例の水たまりを見つけた。夜もある。もうなくなったと思ったけど。


「あれっ、あの水たまり、今日もあるのか」


 勇人はコンビニに向かって歩き出した。と、勇人は後ろに誰かがいる気配を感じた。まただ。今さっきと言い、何だろう。まさか、恐ろしい事の予感じゃないのかと思った。


「ん? いないよな・・・」


 勇人は首をかしげた。やっぱりいない。


「どうしたんだい?」


 その声で、勇人はびくっとなった。目の前にいるのは、部活の同僚の中村だ。まさかここで会うとは。


 中村は思った。どうしてこんなに勇人は驚いているんだろうか? まさか、何かに狙われているんじゃないだろうな。


「何でもないよ」


 だが、勇人は何もないとごまかす。本当は悪夢を見たり、変な予感を感じているのに。


「そう・・・」

「夜だけど暑いな・・・」


 2人はコンビニに向かって歩き出した。2人でいれば安心する。こんなに安心できるのはどうしてだろう。変な予感がするからだろうか?


 2人はコンビニにやって来た。コンビニは冷房がかかっていて、とても涼しい。外とは正反対だ。


「ふぅ・・・、天国・・・」


 2人はしばらくコンビニにいて、少し涼んだ。そして、アイスバーを買ってきた。


「さて、帰ろう」


 2人はコンビニの前で別れた。勇人はアイスバーを食べながら、帰り道を歩いていた。帰り道はとても静かだ。誰も来ない。もう多くの人は寝静まったと思われる。


「えっ!?」


 突然、勇人は何かの気配を感じた。今までとは違う、強い寒気を感じた。誰かがいる。そう思って、勇人は振り向いた。だが、そこには誰もいない。


「いないか・・・」


 勇人は再び歩き出した。だが、また振り返った。やっぱり誰かいる。


「ハッ・・・」


 勇人は振り返った。そこには水でできたドラゴンがいる。今さっきの夢で見たドラゴンと一緒だ。まさか、あの夢は予知夢だったのか?


「えっ・・・」


 ほどなくして、水でできたドラゴンは大きな口を開けて、勇人に襲い掛かった。まさかこんな事になるとは。


「ギャーーーーーーーーー!」


 そして、勇人は水でできたドラゴンに丸呑みにされた。そして、水でできたドラゴンはあの水たまりの中に消えていった。


 その後、勇人の姿を見た者はいないという。そして、水たまりも消えた。

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― 新着の感想 ―
はじめまして! 拝読いたしました。 導入から次の展開へがテンポよく、すぐに物語の世界へ引き込まれました。 ドラゴンが出てきたのでファンタジー感もありつつ、最後には食べられてしまうという恐ろしさも楽し…
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