5月6日
今日のバイトは大変だった。
冷凍食品コーナーの棚に張った氷を取り除く作業をさせられた。
結構前に、商品が凍ってくっついたり、尖った氷に引っかかって破れてしまったりすると訴えたのを、ようやく受け入れてくれたのは良いが。
業者を呼ぶとかじゃなくて、自分たちで処理するんかい。
まあそれもいいんだけど、上司てめぇトンカチを自分で使っといて俺にはスパナか。
叩いて氷を砕いて剝がすってのに、結構小さめのスパナ寄越しやがって。
腕が疲れた、あと多分全部剥がしきれてないから、あんま解決になってないよこれ。
俺がもっと指摘できる立場だったらな……。
それで、今日は思い切って、実際に奴らに聞いてみることにした。
なんで俺の頭にいるのかを。
今日出てきたのは、コック帽を被った女性。20代後半ってところだろうか。
こういうコックが出てくるときは大抵レシピの考案だ、大抵難しいやつ。
「いい?バンズにはまずマヨネーズを塗るの!そしたら、塩もみしたきゅうりとトマト、パティを挟めば、とびっきり美味しいハンバーガーの出来上がり!」
ハンバーガーかい、バンズ売ってないんだよね。
「そこは作るしかないでしょ!バンズからこだわって焼くとまた格別よ!」
……果てしなくめんどくさい。まあそれはそれとして、お前なんで俺の頭ん中にいんの?
「究極のレシピのためよ!」
ああ、悪かった。目的を聞きたいんじゃない。Whyじゃなくて、Howで聞きたいんだ。一体どうやって俺の頭の中に存在しているんだ。
「究極のレシピのためよ!」
そう言って消えてしまった、いっぺん殴らせてほしい。
答えになってないって。
よしんば究極のレシピを作ったとて、俺にどうしてほしいんだよ。
そこ分かんないまま動く俺じゃない。
もっとまともなやつが来てくれないと、俺は地団駄踏むばかりじゃないか。