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46、

ドアが勢いよく開き、そこに現れたのはノエルだった。

その後ろにはリンドン、そしてアレックスとスペンサーの姿も見える。


「ノエル、どうして君が……それに、お前たちも……」


レジナルドが振り返って言うと、アレックスとスペンサーがすっと前に出て、彼の両側に並んだ。

──え、何をする気だ……? と思ったのも束の間。二人がそれぞれレジナルドの腕を掴んだ。


「え」

「え」


俺とレジナルド、たぶん同時に似たような声を漏らしていた。

そのまま二人は、驚くレジナルドを左右から引っ張って、部屋の扉の方へとずるずると連れていく。


「え、えっと……?」


何が起きているのか分からず俺が目で訴えると、ノエルがさらりと口を開いた。


「私もね、色々思い出して。で、レジナルドって、シナリオでもわりと煽ってくる側だったな〜って思って。うん、なので──ご退場願いまーーす!」


その明るい宣言と同時に、レジナルドはアレックスとスペンサーに引きずられるようにして外へと消え、扉がばたんと閉まる。

すると間髪入れずに、ノエルがぴしっと指を鳴らした。


「リンドン、今!」


声を受けて、リンドンが水の魔法で結界を展開する。

──あれだ。以前、俺を閉じ込めたときと同じ、揺れる水の膜が俺たちを包み込んでいく。

中にいるのは俺とキース、それからノエルとリンドンだけ。


キースは相変わらず俺を片手で抱いたまま、じっと事の成り行きを見守っている。


「さあて……」


ノエルが俺を一瞥し、すぐにキースのほうへと目を向けた。

その眼差しには、いつもの彼女からは想像もつかないほどの真剣さが宿っている。

両手を広げると、空中に魔法陣が展開された。その中心へと手のひらを触れさせると、眩い光がそこから溢れ出す。


「お兄さん、落ち着いて!あなたの本当の心は、こんな闇に飲まれるようなものじゃないはずだよ!──まあ、執着魔人だけど!」


おい余計な一言! と思わず内心でツッコむ。

俺はハラハラしながらキースを見上げた。


──先ほどまであったレジナルドへの敵意は、今は見られない。

黒い霧こそまだ晴れていないものの、暴走しているようには見えなかった。

ただ静かに、ノエルの言動を観察している。


ノエルの声が結界の中に響く。魔法陣の光が一層強く輝き、それが闇の力に押し戻されるようにゆらめいていた。

焦る。なんだか嫌な予感がする。


「だ、大丈夫なのか……?」


俺が訊ねると、


「ちょっと待ってて!このくらいなら何とか……でも、お兄、手伝って!」

「お……僕に何を……?」


状況は変わらず、俺はキースの腕の中。ここから何ができるっていうんだ?

それに、その魔法──俺が浴びて大丈夫なやつなんだろうか……。


ノエルとキースを交互に見ると、キースがふと目を細めて微笑んだ。

──いやその笑みは何⁈ 何を企んで……。


その瞬間、ノエルが俺に向かって小さな光る石を投げてきた。

俺は反射的に片手でそれをキャッチする。


「それ、私の力を込めた魔法石だよ!リアムの魔力なら、たぶん使えると思う!」

「え、どうすんの⁈」

「握ってるだけでOK!──で、お兄の声で、キースさんを呼び戻して!この闇の中にいる本当の彼を、引き戻せるのはお兄しかいないから!」


ノエルの言葉に、俺はもう一度キースの顔を見る。


……闇の力こそ纏っているが、キース本人はどう見ても冷静だ。

というか、妹は熱くなってて、リンドンも懸命に結界維持してくれてるんだけど、肝心のキースが……超普通。


「え、ええと……兄様は、今は……兄様じゃないんですか、ね……?」


おそるおそる尋ねると、キースは首をかしげた。


「さあ、どうだろうね……? リアムには、どう見える? ──まあ……君のこととなると、我を忘れそうになることは多いけれど」


──さっきも夜もね、と、耳元に囁かれたその声に、俺は息を呑む。

……やっぱりいつもの兄様じゃん⁈


キースは俺の動揺に気づいてか、また少し笑う。

そしてふっと表情を落として、ぽつりと呟いた。


「まあ、これも……必要なことだからね」


その言葉と同時に、俺を抱く手が緩む。


「あの力はね、リアム。かなり強い。だから、君はあちら側に行った方がいいだろうね。──あれは、僕が受けるべき、僕に必要な……」


言い終わらぬまま、俺の身体は軽く押し出された。まるで風に乗って、ふわりと空気に浮かぶような優しさで──


「え」


俺は呆けたように声を漏らした。

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