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24、

王立学園では、学問だけでなく運動も重視されている。

中でも“剣術”は貴族教育の要とされる授業のひとつだった。


──『貴族たるもの、いついかなるときも、王と民を護るべし』。


その理念に則り、実技の授業は上級生と下級生がペアを組んで行われる。

指導を受けながら、同時に“教える”側の技術も学ぶ。

この日から、いよいよ実戦形式に近い訓練が始まった。


「俺が君の指導係だ。よろしく頼む」


俺の前に立って、そう頭を下げたのは──

アレックス・コンブリオだった。


「よ、よろしくお願いします……」


何故この人なんだ……。

いや、これはもう、確信に変えていい。

──俺は、完全に“主人公ルート”を歩いている。


本来、アレックスとペアを組むのはノエルのはずだ。

だが今、ノエルは何故か別の上級生──え、女の子じゃん⁉──とキャッキャしている。

ずるくない? それ、本来なら俺の癒やしだったはずじゃないか……?


「さしあたって、君の力量を見たい。構えを取ってもらえるか?」

「は、はいっ……ええと……何すればいいですか……?」


思考を巡らせていた俺は慌ててアレックスの問いに返す。


「素振りはできるか?」

「……まあ、一応」


自信のない声で木剣を構え、二、三度振る。

が、すぐにアレックスが手を上げて制止した。


「なるほど。剣術に関してはからっきしだな。どう教えたものか……」

「えっ!? 振れてませんでした!? 僕、今、すごく振れてたと思ってたんですけど!」

「棒を振り回してはいた」

「ふ、振り回して……」


内心で泣いた。

いや、そんなことは分かってたさ。才能があるなんて思ってなかった。

けど、“からっきし”って言われるほどとは思わなかったんだ……。

むしろ、今のは“なかなかいい感じだったんじゃ?”くらいには思ってたよ俺……。


「とりあえず、基本の型からだな」


アレックスが俺の隣に立つと、木剣を持つ俺の手にそっと手を添え、背中にも軽く触れる。

──なんか距離が近い気がするが、きっとこれも指導というやつだ。


……帰りたい。



結果として、アレックスの指導は驚くほど丁寧だった。

しかも時間いっぱい、無駄なく。情け容赦なく。


最終的には「立ち姿は……まぁ、そこそこだな」と肩を叩かれた。

……あれだけみっちりやって、評価が“立ち姿”とは……解せぬ。

でもまあ、最初が“棒を振り回してる”判定だったことを思えば、少しは進歩してるのかもしれない。


「ありがとうございました」


俺が礼を述べると、アレックスは小さく笑った。

それがまた、周囲に軽い衝撃を与えたようだ。

というのも、アレックスは滅多に笑わないことで有名らしい。


「リアム!」


その場を離れた直後、ノエルが耳元に顔を寄せてきた。


「やばいよお兄ぃ……先輩、めっちゃいい匂いだった……!」


……コイツゥ……!


「俺はみっちり・きっちり・みちみちだったよ?!」


言いながら、近くにあったノエルの耳を軽く引っ張る。

前世から、こいつは綺麗なお姉さん属性に弱かった。

中身が変わっても嗜好はそのままか。


「アレックスどうだった?」


ノエルは俺の手から逃げながら、アレックスが去った方へと顎で指す。


「うーん……普通、かな。どこが分岐点だったっけ?」

「実戦のとき。ノエルを庇って怪我するんだよ。足に古傷があってさ──」

「ああ、小さいころのやつか。トラウマ解消がキーなんだっけ?」

「そう。蟠りを解くと、そこからルートに入るって感じ」


実戦というのは、有事を想定した模擬戦のことだ。

魔法で生成された幻影魔物との戦いは、幻想とはいえダメージもリアルで、油断すれば普通に怪我をする。

ノエルのルートでは、その時にアレックスが庇って負傷し──という流れだったはずだ。


でも、俺がそこに関わっていいのかは、悩ましい。


「うーん……これって、どこまで踏み込むべきなんだ?」


あまり手を出しすぎると、フラグ管理が崩壊する。

リンドンがいい例だ。なんかもう、あいつのフラグだけデカすぎて怖い。

つーかリンドンに関しては何もしてないのに好感度MAXじゃなかった?

俺、いつ攻略始めたんだよ。


「リアム・デリカート!」


後ろから響いた剣のように鋭い声に、俺はげんなりした。

この声は──


「うわ……」


……ディマス。

そうだ。こいつ、クラス合同の授業には確実にいるんだった。


振り返った瞬間、何かが俺の頬に当たり、パサリと足元に落ちる。

……白い手袋。


それを見下ろした瞬間、


「貴様に決闘を申し込む!」


まるで演劇のように、ディマスが俺を指差し宣言した。


──正気か⁉︎


読んでいただいてありがとうございます!

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