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9、

「最近、仲良くね?」


昼休みの食堂。パンを齧りながら、セオドアが俺とノエルを交互に見て、ぽつりと呟いた。


──確かに。


先日、王城で開かれたお茶会で互いの素性を明かして以降、ノエルとの距離は目に見えて縮まった。セオドアがそう感じるのも無理はない。


あのあと、俺がなんとか落ち着きを取り戻し、攻略対象者たちが並ぶ地獄のテーブルに戻った際も、ノエルはさりげなく俺を庇ってくれていた。特に大きな問題も起きず、お茶会は平穏のうちに終了。

帰り際──レジナルドが申し訳なさそうに近づいてきた時も、ノエルが間に立ち、


「先輩がリアムを泣かせるから悪いんですよ‼︎」


と諫めてくれた。レジナルドはそれを受けて、言葉に詰まりながらも小さく「すまない」と謝ってきた。

王太子相手に何やらせてんだ、とは思ったが……俺は「大丈夫です」とだけ返し、軽く頭を下げてその場を離れた。


──ちなみにノエルはナイジェルに会いたいという理由で俺と仲良くなりたがっていたが、その日はさすがに屋敷へ招待することもせず、試験を控えていることもあり「また改めて」ということにした。


おかげで試験も乗り切り、今はこうして、また日常に戻っている。

天然でオタクで、妙な言動が多いノエルに対する警戒心は、もう以前ほどじゃない。……というか、演技だったとしても、ここまで徹底されてるならもう騙されても仕方ない気がしてきた。もちろん、雌堕ちエンドだけは絶対に回避するけどな。


「なんとなく、お茶会で話してみたら、仲良くなっちゃって」


内容を明かすわけにもいかず、曖昧に返すと、セオドアはつまらなそうに「ふうん」とだけ言った。


と──


「そっか! 僕とリアムが仲良くなったから、セオドアは嫉妬してるんだね‼︎」


と、ノエルがぱんと手を打ち、あっけらかんと笑った。

……は?

俺が眉をひそめてセオドアを見ると、奴の顔は一瞬にして真っ赤に染まった。


「お、ま、なっ……!」

「ねー、わかりやすいよねー。セオドアって結構感情出るタイプっていうか……」


茶化すように言うノエルを、セオドアがじろりと睨む。

……あれ? ノエルと仲良くなりたいのはセオドアの方ってことか?


「そうか、セオはノエルと仲良くしたいのか!可愛いしね!」


思ったままに口に出してしまった俺に、二人が同時に深いため息をついた。


「これじゃあねぇ……」

「いやぁ、さすがの俺でも……」


ノエルがそうぼやき、セオドアは項垂れる。


なんだよその反応。俺が首を傾げて反論しようとしたその時──


「先日の試験結果が張り出されたぞ‼︎」


という声とともに、生徒のひとりが教室に駆け込んできた。



というわけで、俺・セオドア・ノエルの三人は廊下に張り出された試験結果を見に来た。

王立学園では定期試験後に上位十名が掲示される。成績優秀者は、生徒会への推薦などにつながる──この学園において、生徒会入りは一種の名誉でもある。


ゲームの流れで言えば、ノエルはこの試験で上位に入り、生徒会へ勧誘される。俺たちもそれを知っていて、事前にノエルは「1位じゃないけど、そこそこの順位だと思う」と話していた。


今は2位までの順位が貼り出されていて、1位だけがまだ覆われたままだ。


「あ、俺……9位だ」


先にセオドアが呟いた。

本来、この順位に彼の名があることはなかったはずだが……おめでとう、と声をかけると、セオドアはちょっと照れくさそうに笑った。


「僕は……4位だね」


ノエルの声に、セオドアが「すげーじゃん‼︎」と背中をばしばし叩いた。

たしかにすごい。今回の試験、割と難しかったからな。……さて、俺はというと。


「あれ、僕の名前は……あれれ? 見当たらないなぁ。今回は圏外かな。残念」


と肩を竦める。

セオドアが「次があるさ」と慰めてくれるが、俺は落ちこぼれるほど悪くなければそれでいいと思っていた。侯爵家の顔に泥を塗らなきゃ充分だ。


「じゃ、戻ろうか」と踵を返した、その時──


ワッと人だかりが沸き立った。


1位を隠していた紙が、今まさに剥がされたらしい。

俺はどうでもいいと歩き出そうとした……そのとき。


「リアム様、すごいですね‼︎」


目の前に立ったのは、同じクラスの男子生徒。興奮気味に言いながら俺を見上げてくる。

……え? なにが?


訳もわからず首を傾げていると、セオドアが叫んだ。


「リア……‼︎ 首位だぞ‼︎」


……しゅい?


意味が飲み込めない俺に痺れを切らしたセオドアが、俺の肩をぐいっと掴んで、くるりと向きを変えさせる。自然と試験結果の紙に目が向いた。


──そこに、俺の名前が、あった。


「嘘、だろ……」


口から漏れた独白。


1位 リアム・デリカート


まぎれもなく、そこに書かれていたのは俺の名だった。

セオドアの顔は満面の笑み。ノエルは、どこか複雑そうな顔をしている。知ってるもんな……俺の立ち位置を。


勉強は頑張ってきた。だから結果が出るのは嬉しい──嬉しいんだけど。

でも、目立ちたくはなかったんだよ‼︎

首位とか目立つことしかない、嬉しいけど最悪ポジ。


周囲はざわざわと湧き立ち、褒め言葉が飛び交っている。

俺はそっとノエルの隣に立ち、ノエルも自然と俺の側に立ってくれていた。

セオドアはというと、ひたすら「すげー‼︎」と連呼しながら俺の肩を叩き続けている。


……いい奴なんだよな、ほんと。


それはそれとして、このままじゃやばい。目立ちすぎる。

一番避けたいのは──


「リアム君! ノエル君も!」


その瞬間、俺の目の前にすっと人影が現れた。冷ややかな美貌に眼鏡の男──スペンサー・トランクイロ。

そして奴は、満面の営業スマイルでこう言った。


「先日は楽しい時間をありがとう。さて、君たちに──生徒会副会長として、正式に勧誘に来たよ。我が王立学園の生徒会へ、ぜひご招待したい」


………………なんて?

読んでいただいてありがとうございます!

応援いただけると嬉しいです♪

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