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夕焼け
一人暮らし。東京の朝夕食つきの2階建ての学生寮。月8万円の家賃をバイト代と仕送りでまかなう。
帰ってきてもあまり落ち着かない。薄い壁、少しも言葉を交わさない隣人。2階から聞こえるドアの開く音と足音。一時間後の食事。それまでの時間僕は何をするべきなのか。勉学、筋トレ、趣味。といってもあまり音は出せない。
悩んでいたらいつの間にか窓に夕焼け。引っ越してきて半年。やっと気づくこの町の景色。朱い。育ち故郷の山形のような寒さもここにはない。暖かいわけではない。ただ僕一人でも生きていけると思わせるような太陽に手の平を透かしたような感じだ。心が安らぎ、息が詰まる。時計の針が大きな音を鳴らす。時間だろうか。別に急ぐ必要はない。
下に降りれば言葉を交わす必要もない彼らがいる。
少しだけこの町を見ていたい。