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同郷
人混みのなかに一人男。暑い。流れる汗が僕の仮面を乱す。周囲と僕の間に感じる差異。それをごまかすたまの足掻きもこの天気ではあまり意味がない。
今日は大学に向かう。家から歩いて20分。汗が僕の仮面を完全に取り去ってしまう前に大学の門を目指す。警備員。顔を見る。いつもとは違う人。特段問題はない。
学生たちが行きかう大道を左端によって歩く。影が僕に覆いかぶさる。少し涼しい。風はもう秋のそれ。
授業が行われる7階建ての建物の5階、教室の席に着く。大教室。だれも僕のほうをちらりとも見ない。
授業開始5分前、ふと扉のほうを見る。そこにいるのは知り合い。サークルの友人とは違う。小学生からのただの知り合い。
相手も僕に気づく、手を振る。少しだけ口元が緩む。
授業。出席を取る。教授。彼の私生活は何も知らない。ただ彼はいつもサンダルを履いている。