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ウォフ13歳⑨


美しい少女。だから美少女。

だけどこの美少女という言い回しは前世のものだ。


この辺だと、そういう言い回しは『ガアベラの奇跡』というらしい。

正直そっちのほうが言うのが恥ずかしい。


「……なに」

「あっいや、その」


見覚えがある。というか忘れるわけがない。

彼女は僕が助けた第Ⅲ級探索者パーティーのトルクエタムのメンバーだ。


白桃。桃白く光る髪をショートカットにしている。


不自然さがなく自然的に光っているが、どう考えても人類じゃない。

あるいはひょっとするとアンドロイドとかそういう類か。


そういえばこの世界にはダンジョンの魔物でゴーレムとドールがある。

鉱石魔物のコボルトやコベルやベルクメンラインとかとは分類が違う。


もしくはそのスペースオペラ的な恰好からして。

この世界には居ない未知な知的生命体つまりエイリアン的なのか。


でも僕からすると獣人やエルフやフォーン。

それに見た事ないけどフェアリアルやエッダも似たようなもんだ。


それはともかく大きな赤い瞳は眠そうな眼差しだ。

しかも肌が白い。


なんだかヴァンパイア的な感じもする。

この世界にも吸血鬼はいる。


アンデッドでスケルトンやゴーストがいるんだから存在してもおかしくない。

肌は真っ白くて瞳は赤い。


分類上は魔物だが、ダンジョンの魔物じゃない。

彼等の国があるとかないとか。


「…………」


赤い線の入った黒いジャケットはよく見るとこの世界のモノじゃない。

中に着ている超ハイテクな白いボディスーツと同様な代物だ。


その白いボディスーツは肌にぴったりと密着していた。

青い線と幾何学な模様やマークや数字。


凹凸があるから完全に素肌に近いというわけじゃない。

だがそれでも彼女のボディラインは丸わかりだった。


胸はそれほど大きくなく代わりに下半身が大きい。

ただジーンズっぽいズボンを履いているので完全に分かったわけじゃない。


そして腰に提げている一体形成された黒いブレード。

それが黒いと分かるのは鞘が無いからだ。いらないのだろう。


ブレードの鍔は円を描いて柄には青い線が入っている。

なんとなく、なんとなくだけど軍用なのかなと思った。


明らかにこう何かの特殊部隊とか、そういう感じがした。


「……何かが足りないという」


淡々と冷たい感じで少女は言う。


「そ、そういう気がするんだ」

「……どうしてそう感じるのか……リヴ。分かる」


リヴ。彼女の名前かな。


「それはいったい」

「……それはこのナイフたちが……オーパーツじゃないから」

「え」

「……オーパーツじゃないから……足りない」


何を言っているんだ? でもそういうことなのか。


「オーパーツじゃないから、か」


言われるとしっくりとくるような気がする。

足りないのはそれか。


「……足りないとはそういうこと……」

「でもオーパーツなんてそうあるわけが」


それにあっても僕ではとても手が出せない。


「…………不思議」

「え」

「…………あなたから匂いがする」

「に、におい?」


なんだろう。臭いとか? 

いやでも昨日は風呂入ったぞ。


「リヴ? どこじゃ。リヴっ? リヴっ?」


唐突に彼女を呼ぶ声がした。

名前を連呼して探している。


「……パキラが呼んでいる」


そう呟くと彼女はさっさと出て行った。


「なんだったんだ……」


不思議なのはどっちだか。

それとどうやら僕のことがバレたわけじゃなかったのか。

ちょっとホッとする。


「しかし……オーパーツか」


まだこのとき僕は疑問にすら思っていなかった。

オーパーツを必要としているということは、レリックを所持していることだ。


つまり僕にレリックがあることをリヴは見抜いていた。

それはある意味では致命的だ。


僕の今後に悪影響が出て命の危険すらある。

そのことに気付いて後悔するのは棲家に帰ってしばらくしてからだった。


結局これだというナイフは見つからず、僕は一番安いナイフを買った。

それでも13000オーロはした。


「肉でも買って帰るか」


肉の塊とそれとパンと。


「おい」


呼び止める声がして、僕の前に3人の少年が立ち塞がるように現れた。

3人は粗末ながら剣を抜いている。


「?」

「てめえだよ」

「お、大人しくしろ」

「なんですか」


なんだろう。自慢じゃないが僕には友達がいない。

必要ないのもあるが、基本的に子どもは僕の敵だからつくらないだけだ。


だが手前の彼には見覚えがある。

前にゴミ場で折れた銅の剣で怪我したヤツだ。


「金。出せよ」


怪我したのがそう剣を僕に向けて言った。


「持ってないですよ」

「とぼけんな。てめえっ何十万も持ってるだろ」

「怪我したくなかったら渡せ!」


何十万って、ああ……そういうことか。

こいつら。骨董屋に居たのか。はあっ溜息をつく。


「そんなに持ってませんよ」

「ふざけんなっ」

「てめえ。俺達を誰の雇い仔か知ってんのか」


ニヤリと笑う。

こいつら。雇い仔か。


「さあ、知りません」


興味もない。


「あの第Ⅳ級探索者。ボブビス様だぞっ!」

「第Ⅳ級だぞっ!」

「おらぁっ、わかったらとっとと渡せ!」


ボブビス? 知らん。そもそも僕が知っている探索者は多くない。

ただまあ。


「ボブビス? なんというか酷い名前ですね」

「てめええぇっっ、様を付けろ!」

「逆らうってのか!」

「ぶっ殺してやる」


いきなり激昂する3人。剣を振るって襲い掛かる。


ハッキリ言えば剣を持てば勝てると思うのは、まあ概ねそれは当たりだ。

武器は素人相手なら振って恐怖を与え、その隙に斬ることが出来る。


武器に恐怖するのは知っているからだ。

それが切れて怪我して運が悪ければ死ぬということを知っている。


ただしそれは素人が相手の話だ。

ひとりめの剣を踏み込んで避け、腹に重い拳を入れる。


「がはぁっ!」


ふたりめの剣を後ろに下がりながら顎狙いで蹴り上げる。


「ぶはぁっ!」


さんにんめの大振りのサーベルを回り込むように回避し、背中越しに首を捻る。


「こふあっ!」


はい。終わり。いやまだ終わっていないか。

それにしても初めて襲われたな。


「さて、どうするか」


そんなの決まっている。このまま放っておこう。

どうせ向こうから解決しに来る。



2日後。


「おい」


裏路地を通っていると僕の後ろにあの3人が現れた。

ニヤニヤしていて気色悪い。

そして正面に中年の男が立ち塞がる。


小太りで頭の毛が少し薄い。

容姿も良くはない。


こう言うのは悪いが……小物臭い。

ああ、彼か。


「おめえがウォフか」

「そうですがなにか?」

「なにがだと? 俺様は第Ⅳ級探索者ボブビス様だ」


やっぱり。来たか。


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