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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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荷物持ち⑦


アクスさんが目を丸くして言う。


「ウォフ。さすがにそれは」

「いやいやまさか」

「それは、まさかないべ」


レルさんとホッスさんは苦笑した。

対してフェアリアルの少女は目を見開く。


「なんであたしの名前知ってんのよ!?」

「なっ」

「なんと……」

「ウソだべっ!?」


あーやっぱり。


「なんで知っているのよ!? 身バレしないようにしているのに!」

「その身バレ防止は師匠さんからですか」

「そ、そうよ。なんでそこまで知っているの」


驚きつつ僕を警戒するフェアリアルの少女改めミネハさん。

アクスさんが言う。


「その師匠は俺の母親だ」

「あんた。アクス?」


ミネハさんが興味深そうにする。


「そうだ」

「師匠の? ふーん面影あるわね。雷撃の牙って聞いたわ」

「そうだ。メンバーは、レル。それとホッス」

「ああ、よろしく」

「ど、どうもだ」

「あれ、彼は?」

「僕は今回だけで、ミネハさんの雑用や荷物持ちをやらせてもらいます」


ミネハさんは僕をジッと見る。

なんだろう。彼女の蜂蜜色の瞳が怪しく光る。


「ふーん。雇い仔ってことね」

「……まぁそうですね」


厳密には違うけど僕は頷く。


「いいわ。自己紹介してあげる。あたしはミネハ。10歳。種族はフェアリアル。第Ⅲ級探索者よ。師匠の命でダンジョン探索に参加するわ」

「俺はアクス。雷撃の牙のリーダーをやっている。改めてよろしく」

異変討伐じゃなかったのね。てっきりそれだと思ったのに」

「いやいや、俺等は第Ⅳ級だぞ。危険すぎる」


アクスさんは苦笑した。


「残念ね。参加したかったわ」

「攻撃性が強いな。4番目の姉みたいだ」

「強そうな姉さんだべな」

「ああ、戦闘狂だ」


どんな姉なんだそれ。


「あたしは違うわよっ! あたしは実績が欲しいの。上を目指したいの」

「おふくろと同じ第Ⅱ級か?」

「違うわ。目指すならてっぺんよ」


ミネハさんは腕を組んで自信満々にする。


「第Ⅰ級か」

「あたし。天才だから。それに相応しいレリックもあるわ」


そのとき、ピクッとほんの僅か。

アクスさんたちが身じろいだ……気がした。


「……」


気のせいかも知れない。気のせいだったかも知れない。

だが空気は確実に変わっている。それも微妙なほど嫌な方向へ。


ミネハさんも気付いた。


「なに、その反応」

「ミネハは……おふくろから何も聞いて無いのか」

「師匠? 聞いてないけど、師匠と同じレリック?」

「…………そうか」


これはまずい。

僕だけじゃなくレルさんもホッスさんもそんな表情をしている。

さすがにミネハさんも空気が妙だと感じ取ったのか。


「なによ。感じ悪いわね」

「ミネハさん」


僕は堪らず声を出した。

ミネハさんが機嫌悪そうに振り向く。


「なによ」

「フェアリアルって確か最初からひとつレリックを持っているんですよね」

「ええ、そうよ。フェアリアルは必ずひとつレリックがあるわ」

「それってどんなレリックなんですか」

「はぁ? なんで初対面のあんたに教えないといけないわけ」

「す、すみません」


それは確かにそう。

でもさすがにこの空気は居た堪れない。

アクスさんが重い口を開く。


「ミネハ。おふくろは何か言っていたか」

「特に聞いてないわね。あんたらと一緒に行動しなさいって言われただけよ」

「……そうか。ミネハ。俺はレリックがない」


いきなりの告白。僕は唖然とする。

ミネハさんは鼻で笑った。


「は? なにその冗談」

「冗談ではない。かくいう俺もない」

「お、オラもないべ」


レルさんとホッスさんも告白する。

僕は、とりあえず黙る。ミネハさんは動揺する。


「なによそれ。レリックがないのに探索者なんて!!」


あっそれはさすがに……アクスさんが机を叩いた。


「それが嫌なら同行しなくていい」

「そうだな」

「んだべ。オラたちはそうして来ただ」

「な、なによっ! なんなんのよ! レリックないくせに!」

「なんだと」

「おい。その言い方。まるで6番目の姉みたいだぞ」

「オラ、だから反対したべ」


そして不毛な言い合いに発展していく。

これは、ダメだな。

出会ってもうこんなんじゃ……ダンジョン探索を一緒なんて無理だ。


「…………」


どう止めるか考えながら、とりあえず檸檬ジュースを飲む。

というか、出会ってこれってそもそも…………待て。

僕は何か引っ掛かった。


そして限りなく答えに近いのは彼女しかいないことに気付く。

はぁー行くしかないか。






そして魔女の家。

こう最近、頻繁に来ている気がする。


「はいはい。おやおや、おや。ウォフ君じゃないかねえ」

「聞きたいことがあって来ました」


魔女はニッと笑った。

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