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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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ウォフ13歳④


探索者。

それはダンジョンを探索する者という意味だ。

成人になると誰でも探索者に登録できる。


ただしその登録料は12000オーロもする。

僕の一日の平均的な稼ぎが大体600~800オーロぐらい。


例えば800オーロの稼ぎだったとする。

入場料で300オーロ。食費で100オーロ。


雑費で200オーロ。

残り200オーロを貯金に回す。


これでまあなんとか貯められるかなという感じだ。

ただ、それ以下のときもあるから順調にいくとは限らない。


しかも毎日ゴミ場に行くことは出来ない。

何故なら僕の稼ぎは他の子たちの2倍以上。


当然だ。僕はレリック【フォーチューンの輪】を使っている。

それは前世感覚だとズルじゃないかと考えることはある。


だが決してズルじゃないけれど……僕にとってレリックは道具だ。

便利な技術に過ぎない。


世の中にはレリックを崇めて持っていない人達を差別するのがある。

レリック主義者だ。僕は彼等が嫌いだ。軽蔑する。


しかし入場料を稼げないで何日も入れない子は珍しくない。

毎日は、つまりそれだけのお金が稼げていると怪しまれる。


だから2日か3日ぐらい置いてゴミ場に行くと決めていた。

ゴミ場以外にも……あまり行きたくないけど仕事はある。


ゴミ場以上に稼げないが、それで入場料を溜めるしかない。

この辺は要領よく用心深く行動している。


「第Ⅲ級……か」


探索者には階級がある。

階級は第Ⅰ~Ⅵ級だ。


階級はたったひとつでも天地の差がある。

凡人がどんなに頑張っても第Ⅳ級止まり。


そこから先に上がれるのは真に才能のある強き者だけといわれている。

現にベテランといわれる第Ⅴ級の探索者が全体の7割も占めている。


だから第Ⅲ級の彼女たちはその真に才能がある強き者だ。

その真の才能が何す。

運もそうだし体力もそうだしレリックもそうだし努力もそうだ。


そういう意味では本当に狭き厳しい門だ。

良い物を見た気分で裏通りへ。


大通りのちょうど裏にあって小さな通りに色々な店が商売をしている。

武器屋。防具屋。鍛冶屋。道具屋。薬屋。骨董屋……ここだ。


「すみませーん。アリファさん」


店内に入って呼ぶ。

骨董と聞こえはいいが実際はリサイクルショップだ。


「はーい。いらっしゃい。なんだ。ウォフか」

「急にガッカリしないでくださいよ」


いきなりご挨拶な三つ編みの赤髪女性アリファさんは、この骨董屋の店主だ。

背が高くオレンジ色の瞳の活発な美女。


いつも肩が出て胸元が開いた服にボロボロで破けたズボンを履いている。

少し目のやり場に困る格好だ。


髪の隙間から髪飾りみたいに黒い角が見え隠れする。

彼女はフォーンという種族でその名称どおり角が生えていた。


骨董屋が本業だが儲かっていない。

代わりに副業が目立っていて骨董屋が副業だと思われている。


その副業は探索者。

それも第Ⅲ級。この辺では女傑として有名だ。

軽くあくびしてカウンターに立つ。


「どうせ買い取りだろ。ひとつでも買ってくれたら愛想よくするけどね」

「買えるほどのお金が無いですよ」


彼女がダンジョンで見つけた宝とかもあって手が出せない。

それと使い道が無い絵画や彫像などの美術品が多い。


665000オーロのサーベルライオンの剥製なんて誰が買うんだ?


「それで今日は何を?」

「これです」


僕は折れていない鋼の剣。年代物の探索ベルト。細工が見事な方位磁石。

赤銅の短剣。古い豊穣の角コヌルコピアのお守りをカウンターに並べた。


「へえ、いつもより運が良い」


アリファさんはニヤっと笑って、鋼の剣から査定し始めた。

ひとつずつ慎重に触って眺める。


鋼の剣と短剣は切れ味を確かめる。

見た目とは裏腹に丁寧な鑑定だ。


「いい仕事してるね」

「そうですか」

「特にこの剣とコヌルコピアのお守りがいいね」


コヌルコピア。豊穣を祝う角。豊穣を願う角。


あっ、気に入ったのは(フォーン)だからか。


「全部でいくらになります?」

「そうだね。1800オーロかな」

「そんなに?」

「一番高いのは方位磁石。こいつは貴族用品。蓋に家紋がある。これで800。探索ベルトは50で、鋼の剣は400で赤銅の短剣は200で残りはコヌルコピアかな」

「褒めていた割に低いんですね。お守り」

「いいモノだけど値段はね。お守り系は、ウサギの尻尾。幸運の車輪。杖と本。ドラゴンが絡んだ剣や盾とか、まあまあ人気があるし探索者に売れるけど、豊穣の角はそうでもない。こういうのは若い娘が若い男に渡すもんだからね。金の針とか」

「お守りって効くんですか?」

「気休めだね。レガシーなら別だけど」


言いながらアリファさんは後ろを向く。しゃがんでゴソゴソとし始めた。

お金を出していると分かる。


「…………」


カウンター越しに見える、なにかとは言わないがやっぱりすごい。

アリファさんの尻。桃尻よりでかい。


しかも鍛えているからむっちりとしている。

おっと、あまり見るのは失礼だ。目を逸らす。


しかし1800オーロか。

かなり稼いだ。ここ数か月で1番の稼ぎだ。

これで3日ぐらいゴミ場に行かなくてもやっていける。


そうだ。今日は少し奮発して久しぶりに外食もいいな。

シードル亭でバターライスを堪能しようか。

それか肉を買うか。塊なら200オーロで買える。

干し肉をつくるのもいい。


予定を立てているとアリファさんはカウンターに1800オーロを置いた。


「はいよ」


雑銅貨60枚。銅貨7枚。雑銀貨1枚。


雑銅貨は1枚10円だから600円。

銅貨は1枚100円だから700円。

雑銀貨は1枚500円だから―――全部で1800円。合ってる。

僕は1800オーロをポーチの財布に入れる。


ちなみに貨幣は。


雑銅貨:10円

銅貨:100円

雑銀貨:500円

銀貨:1000円

雑金貨:5000円

金貨:10000円

諸王貨:50000円

王貨:100000円


という風になっている。


「どうもです。あっ、忘れてました」

「なに?」


僕は布の袋をポーチから取り出し、その中身をカウンターに置いた。

青銅と赤銅の指輪五個。

青銅製が三つで赤銅が二つだ。


「指輪……」


手前の指輪をアリファさんは手にする。

凝視して裏側の刻印も確認した。


「どうですか」

「……ウォフ。これは買い取れない」

「え」


アリファさんは神妙な顔立ちで言う。


「こいつは『オーパーツ』だ」

「は?」


僕は愕然とした。


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