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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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トルクエタム③


さっそく宿に戻って、わらわは急いでふたりを呼んだ。


「もうなんなのよ」

「……パキラ。お酒の匂い……する……」

「あなた。まさか飲んでますの?」

「飲んでおらん。そんなことよりじゃ。おぬしたちに重要な話がある」


テーブルでふたりは見合わせて訝し気な顔をする。


「なんですの」

「……ん……」

「わらわはついさっき、黒吞みのメガディアと会っておった」

「なんですって!? それってあの第Ⅱ級の?」

「……『滅剣』と同じ……第Ⅱ級探索者……ソロ……」

「どういうことですの?」

「それは、その、なりゆきというか、まあ色々とあってのう。それで彼女と話すことができた。そして彼女から提案を受けた」

「提案?」

「うむ。ようく聞け。わらわたちトルクエタムにのう。ダンジョンの異変討伐に同行せぬかという提案じゃ」

「なんですって!?」

「……同行……」

「決めるのはルピナス。リーダーのおぬしじゃ」

「そんなの決まってますわ。断るわけないでしょう」


そうじゃろうな。

うん。そうじゃろう。


「リヴもよいか」

「……もちろん。リヴも……了承する……」


じゃろうな。

だがリヴは頷いて続けた。


「……いいけど、パキラから……男の匂い……がする」

「なんですって?」

「なっ!?」

「パキラ。どういうことですの?」

「それはその」


うぬぅ、しまった。

リヴの異様な嗅覚を失念しておった。


「……それも……知っている男の子の匂い……」

「なんじゃっと?」


は? なんじゃと。


「ど、どういうことですの。ふたりとも!」

「どういうことじゃ? リヴはウォフと知り合いなのか」

「……ウォフ……」

「なんですの。ウォフ? パキラ。あなたいったい何をしていたんですの? そもそも異変討伐の同行とはどういうことですの?」


ルピナス。目が怖い。


「……なりゆきでじゃ。本当になりゆきじゃ。よいか。まずわらわが届かなかった本を取ってもらって……それで探し物があるという。じゃから貸しもあるから手伝ったのじゃ。そのお礼にシードル亭で飯を奢ってもらったときに黒吞みのメガディアが『滅剣』と酒の飲み比べをしておってのう。それでそのどうにかメガディアとウォフのおかげで話をすることが出来たのじゃ」

「……早口……すぎる……」

「……なんだか、あなたが好きなラブロマンスみたいな出来事ですわね」


ぎろっとルピナス。じゃから目がこわっ、って!?


「なっ! ルピナス。なななにを言うておるっ! それよりリヴ!」

「……ん」

「おぬし。ウォフと知り合いなのか」

「…………知り合いだけど名前聞いてなかった……」


おぬしなあ。


「リヴ。その少年とは、いったいどこで知り合ったんですの?」

「……ゴブリンの巣……」

「なんじゃと?」


ゴブリンの巣?


「そういえばソロで依頼を受けたと言ってましたわね」


言っておったのう。

いつものことじゃから軽く流しておったわい。


リヴは剣の腕前だけは第Ⅱ級に迫るといっても良い。

未だによく分からぬ剣術じゃがな。

本人はレリックじゃと言っておるがのう。


「それでウォフがゴブリンの巣におったのか?」

「……うん。用があると……いっていた……」

「馬鹿な。探索者でもない子供じゃぞ」

「……ウォフはレリックを……持っている……」

「なんですって……?」

「なんじゃと」


あやつ。レリック持ちじゃと?


「どんなレリックですの?」

「……危険を判断……判別……分かるレリック……エコーやサーチに近い……隠れた敵の位置とかも分かる」


それは感知や察知系のレリックじゃな。

エコーやサーチってなんじゃ? それはともかく。


「あら、とても便利ですわね」


確かに便利じゃが……便利なんじゃが。

わらわは冷や汗が出た。


落ち着け。ゆっくり冷静に確かめるのじゃ。


「リヴ。隠れた敵の位置も分かるのかのう」

「……うん。それでゴブリン一網打尽……できた」

「隠れた敵の位置も……ふむ。リヴ。分かる範囲で良い。詳しく教えてくれるか?」

「……いいよ……覚えているところだけ……」

「それでよい」

「パキラ。気になることでもありまして? よくあるレリックですわ」


一見するとそう聞こえるが、気になるなんてもんじゃなかろう。


「ルピナス。少なくともわらわが知る範囲じゃが、隠れた敵の位置も分かるほどの感知や察知系レリックなぞ知らぬし聞いたこともない。おぬしもそうであろう」

「隠れた……あっ、確かに……無いですわね」

「……うん……」

「ふたりともよく考えてみよ。ダンジョンで隠れた敵の位置が分かるのじゃぞ。それも、リヴ。壁とかの障害物も関係なくじゃな?」

「……そう……まるでエコーやサーチ……みたいだった」

「それって奇襲とかもされないってことですの」

「それだけではなく、こちらから奇襲することが可能じゃ」


おそらく罠とかも分かるはずじゃ。

エコーやサーチってなんじゃ?


「おそろしいレリックね……」


ルピナスは気付いたようじゃな。

リヴは考えるように目を閉じる。


「……言われると……ゴブリン討伐……凄く楽だった。少年が……教えてくれて切るだけ……凄い」

「探索者に絶対欲しいレリックですわね」


そのとき、わらわの頭の中に過ぎった。

ひょっとしてあのとき黒呑みのメガディア。


彼女は冗談じゃなく本気でウォフを雇い仔にしたかったのではないか。

それはつまりメガディアはウォフのレリックを……知っていたか。知った。


相手のレリックを見通す。

じゃがそれは伝説級のレリックで今は失われておるはず。


「…………」

「そういえばパキラ。少年で思い出しましたわ」

「なんじゃ?」

「例のエリクサーの少年ですわ」

「それもあったのう」


未だに手掛かり無しじゃ。しかしこちらも少年か。

まあ在り得ぬと思うが同一人物じゃったら笑えないのう。


まっ在り得ぬじゃろう。

もしそうだとしたら。


「……あっ、それ……なんだけど……」

「なんじゃ」


笑えん。


「なんですの」

「……忘れてた。ウォフ……少年。彼が、エリクサーの匂いがする少年……だよ」

「な、なんですって」

「みゃん」


にゃーん。


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