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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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329/329

フォレストウェーブ・合間⑥・非現実の王国。

探索すると宝じゃないけど興味深い資料を発見した。

見覚えのない古代文字だがガラドさんが意外にも読めた。


それはダンジョンの異変となった巨大な蜘蛛のチカラで繁栄した都市の話だ。

その都市は地上型のダンジョンだった。


最初は蜘蛛の恩恵に素直に人々は感謝していた。

だが年月が経つと人々は三つの派閥に別れた。


蜘蛛を神と崇めて崇拝する信仰派。

蜘蛛を危険視して忌避する討伐派。

蜘蛛を道具として利用する操作派。


次第に操作派が大きく台頭し始め、信仰と討伐派は追いやられていた。

だが信仰派と討伐派は同盟を組み、蜘蛛を封じて操作派を解散させた。


そのとき討伐ではなく封印にしたのは信仰派の同盟条件だったからだ。

あの『蜘蛛切』は封印した後、討伐派がもしものときに隠しておいた切り札だ。


形状から山徒の民が関わっており、確実に蜘蛛殺す為に造られたのがわかる。

蜘蛛を封じた都市は徐々に衰退していき、やがて都市は廃棄された。

去った人々も残された人々もその行方は誰も知らない。


「……繁栄のチカラは本当にあったんだな」

「だども危険性が高いべ」

「封印して良かったっスよ」

「ボクとしては討伐して欲しかったです」


手にある『蜘蛛切』を見て苦笑するナベルさん。

僕もそう思う。


それから更に探索する。

チームに別れて、僕はビッドさんと行動していた。


「……ウォフくん。なんっスかそれ」

「えーと……石像ですね」


物置みたいな部屋で、何気なく置いてあった石像を手にする。

前世の記憶にある遮光器土偶に似ていた。

前世ではなく、この世界のどっかで見た気がして、つい気になってしまった。


ちなみに緑の光だ。

ビッドさんは少し上目遣いになる。


「それ、持っていくっスか」

「あー……いや特に珍しいなと思っただけで」


その場に置く。

ちょっと気になっただけだ。持って帰るほどじゃない。


「ビッドさんは何か見つかりましたか」

「……んー特にないっスね」

「そうですね」


【フォーチューンの円環】にも反応はない。


いくつか部屋を見て回ったが、これといったモノは無かった。


「何にも無いっスね」

「そうですね」

「ちょっとはあってもいいと思うっス」

「ですよね」


次の部屋に行こうとしたとき、ビッドさんが声を上げた。


「ちょっ、あっ!」

「どうしました?」

「何かズボンに引っ掛かって、と、取れないっス!」

「えっ、大丈夫ですか」


見るとズボン……スパッツに何かが引っ掛かっていた。

釘だ。木箱の打ち損ねて飛び出た釘頭がスパッツの生地に絡んでいる。


「あーもうっ! 取れないっスよおっ!」

「ビッドさん。そんなに動くと破け……あ」


ビリビリっとスパッツが破けた。

取れたけど結構、大きく裂いていた。


しかも位置的にお尻の一部が見えてしまっている。

んん? なんか変だな。


「うわあっ、やっちゃったっス……」


項垂れるビッドさん。


「と、とりあえず隠したほうが」

「いや替えがあるから大丈夫っスよ」

「へ?」


そう言うとポーチから同じ黒いスパッツを取り出す。


「よく破くんで何枚か替えを持っているっス」


照れながら言うなり破けたスパッツをその場で脱ごうとした。

僕は慌てて後ろを向く。


「む、向こうに行ってますっ」

「ちゃんと下着は穿いているっスよ」

「そういう問題じゃないです!」

「あっ、下着穿いて無かったっス。そーいえば下着の線が出るから普段から穿いてなかったっスね。忘れてたっス」


笑うビッドさん。そういう問題でもない。というか大問題だ。

道理で下着に隠れているところがお尻の丸見えになっていたわけだ。


ビッドさんは穿き直してもういいっスよと僕を呼ぶ。


「……よくそれ穿いてますよね」

「気に入っているのもあるっスけど、これ動きやすいっスよ」


そうビッドさんはスパッツを引っ張ってパンっと自分のオシリを叩く。


「あははっ、でも破けやすいんですよね」

「その分だけ安いからまとめ買いしてるっスね」

「でも下着を穿いてないっていうのは」

「すぐ着替えればいいだけっスよ」


そうなのか。そうなのかも?


「見られて平気なんですね」

「ちょっとウォフくん。それはないっス」

「えっでも」

「ウチは女の子っスよ。さすがに見られるのは恥ずかしいっス」


ちょっとムッとするビッドさん。

ジト目で睨まれる。


「す、すみません」


さすがに無遠慮過ぎた。デリカシー無いって思われるよなあ。

ビッドさんはきょとんとした


「ひょっとして、ウォフくん。見たいんっスか?」

「え?」

「ウチの裸」

「えっ、そ、それはっ!」


突然の発言に僕は動揺した。

見たいかどうかと言われたら、それはもちろん見たい。見たいぞ。

見たいに決まっている。見たいに決まっているがっでもそれはさすがに……っ!


「おーい。ふたりとも。なんか見つけたか」


ガラドさんの呼ぶ声がした。やった。助け舟だ!


「あー、なんもないっス」

「なにもなかったです」

「そうか。じゃあ、そろそろ戻るぞ」

「はーいっス」

「わかりました」


ホッとする。良かったような残念なような。

ビッドさんは何事も無かったみたいな態度で行こうっスと誘う。

まあ、これでいいか。


僕たちは禁断の地を去った。

ここには魔物はおろかダンジョンの異変もない。


ただし収穫はあった。

『蜘蛛切』―――蜘蛛特攻の刀でナベルさんが所持している。

これがあればダンジョンの異変は楽勝だ。


そのダンジョンの異変は、やはり森の中に潜んでいるんだろうと結論付けられた。

とても厄介だが探し出すしかない。


「探す方法を考えるしかないか」

「派手に暴れてくれれば見つけやすいっスけどね」

「……そうだな」


禁断の地から転移陣で戻る。

森の空気はまだ嫌な感じが続いていた。


「なんなんだべ」

「敵は居ないっスよね」

「……はい。いないです」


【危機判別】に反応なし。


「ガラド。どうすんだこれから」

「……別の討伐村まで歩いてみる。ここからそう遠くないところにある」

「ああ、確かにあんべ」

「トルクエタムもそこにいるかも知れないっス」

「あり得ますね」

「わかりました」


そうして歩き出す。

景色は変わらず、静けさに包まれている。

それにしてもこの重苦しい雰囲気はなんなんだろう。


【危機判別】は常時使用中だ。

たまに木の幹や地面に赤や黒い点が見えるけど毒草やキノコだった。

時々ホッスさんが採取する。


「しかし魔物の姿が全く無いのは……異様すぎる」

「この空気も異様っスね」

「…………あの、これはボクの見解なんですけど」


ナベルさんが躊躇いがちに発言する。

全員が彼を見る。


「なんだべ」

「気付いたことがあったら遠慮なく言って欲しい」

「縄張りを感じるんです」

「それはこの森がですか?」


ナベルさんは頷いて続ける。


「空気が重く感じるのも縄張りに入っているからだと思います」

「……縄張りか。ホッス。この辺に『キズモノ』の縄張りがあったな」

「んだ。だども『キズモノ』の縄張りならすぐに襲い掛ってくるだ。それに『キズモノ』の縄張りはこんなに空気は悪くないだ」

「そう考えると、この縄張りはダンジョンの異変っスね」

「そうだろうな。もしかしたら……『キズモノ』とダンジョンの異変が戦ったかも知れない」


ガラドさんの発言に驚きの声は無かった。

縄張り争いという理由は単純で一番説得力があったからだ。


「ガラドさん。討伐隊は大丈夫でしょうか」

「ゴウロ討伐隊はベテランだ。引き際も弁えている。アラヤは慎重派だ」


確かにアラヤさんはシッカリしている。無茶はしないタイプだ。


「共倒れしてくれれば一番いいっスけど」

「……この空気の悪さだどそれも期待できないべ」

「最悪『キズモノ』が負けた可能性も考慮しないといけないな」

「それは本当に最悪だべ」

「最悪じゃないですか」

「嫌ですねそれ」

「だけど最悪を想定してその斜め上をいく可能性もあるっスよ」


ビッドさんがやや冗談っぽく言う。

僕たちは苦笑した。


それから本当に何事もなく別の討伐村に到着する。

この討伐村は指岩の下にあった。


施設は変わらない。

違いは酒場がふたつあったぐらいか。

村に入った途端……赤い点が討伐村の中にいくつも現れた。


「……ガラドさん。村の中に敵がいます」

「なんだと」

「妙な気配の匂いがする」

「なんかいるっス!」

「なんだべ?」


村の周辺からワラワラと現れたのは―――魔物……?

真っ白い女性だ。裸だが不思議とエロさを感じない。


まるで彫刻や陶器のような肌で、両腕が黒いまだら模様をしている。

人の顔だけど四つの赤い目をして髪は、あれは……蜘蛛の脚?


「……蜘蛛女っスか」

「……蜘蛛……だべか」

「ダンジョンの異変?」

「いいやあれは巨大な蜘蛛だった。だかこいつは、なんだ?」

「―――分かっていることは敵です」


僕はナイフを抜いた。皆も武器を手にする。

範囲に入ったら【青ノ聖者】になって【バニッシュ】をお見舞いしてやる。


それにしてもいくらなんでも多過ぎないか。

蜘蛛女は数十を超えていた。


だけど僕たちの敵じゃない。構えて迎撃態勢をとる。

蜘蛛女たちは僕たちを取り囲むように動く。


そしてあっさりと僕の間合いに入る。

僕はよしと【青ノ聖者】を使い、【バニッシュ】で狙ったそのときだ。


(……わたしの王国……私の王国……ここは【非現実ワタシの王国】……)


「っ!?」


なんだ。


(篭手を構えろっ、構えなさいっ)


男女の声がして僕は咄嗟に『青聖の篭手』を胸の前で構えた。

瞬間、何か重い波のようなモノが篭手へぶち当たった。

なんとか反射したが、その余波だけで危うく倒れるところだった。


「危なかった。いったい……なんだったんだ」


そうだ。皆は無事か……良かった。無事みたいだけど、なにか様子が変だ。


「な……なんっスか……」

「おい。これは、どうなってやがる……!?」

「なんだべ?」

「どうして…………レリックが……使えなくなっている?」

「え?」


ナベルさんの言葉には驚愕と絶望感があった。

そして僕たちは蜘蛛女の群れに囲まれた。





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