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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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322/329

フォレストウェーブ・ファースト⑥・緑の波。

2日後。

フォレストウェーブがついに始まった。


雲が流れる青い空。快晴の昼。

ハイゼン大森林の端から端まで地響きをたてて緑の波が起きた。

ゴブリンとオークの群れである。


しかもゴブリンソルジャー。ホブゴブリン。ゴブリンコマンダー。ゴブリンナイト。

ゴブリンロード。ハイオーク。ダークオーク。ヘッドオーク等、多様だ。

おおよそ1万の大群がハイゼン平原を進む。


これがファーストウェーブ。


迎え撃つはハイゼン平原に並ぶ6000人近くの討伐者。

人数は下回っている。だが戦力は上だった。


1人でゴブリンやオークの10匹や20匹は楽に屠ることができた。

もちろん人材はピンからキリだ。誰でも参加できるので戦力にならないのもいる。


その6000人の中にボクたち『ケルベロスターン』がいた。


「凄いな。あんな数のゴブリンやオークを見るのは初めてだ」

「しかもこれでファースト」

「なんか震えてきたな」


コランさんがボクの隣でぶるっと体を揺らす。

プランシーさんもどこか緊張した顔だ。

ボクもそうだ。吐く息が荒い。手に汗が出てきた。


ふとウォフさんならどうなんだろう。

ボクみたいに緊張するのかな。それともまったく平気なのか。


「どうしたの。ナベル?」

「だいじょうぶか」


ふたりが心配して声をかける。

ボクは微苦笑した。


「緊張しちゃって」

「わかる」

「わかる」


ふたりは頷く。

ずっと地響きが続いている。

迫る音が段々と近づいてくる。


まるで波のようだ。爆発音も轟く。

遠距離組が属性レリックを放っていた。


それでも地響きは止まらない。

激しく強く止まらない。


「うおおおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」

「おおおおおおおおおぉぉっっっっっ!!!!」

「うおおおおぉぉっっっっっ!!!!」

「おおおおぉぉぉぉっっ!!!!!」


いきなり雄たけびが木霊して、前方が大きく動く。

瞬間、ボクは理解した。突撃だ。


いよいよ。先陣がファーストウェーブとぶつかった。

派手な切り合いの音がこっちにまで聞こえる。


「第3陣! 動くぞっ! 準備はいいか!」


第3陣に入っているボクたちは武器を抜く。

ウルフフェグの刀。今回はこれしか使わない。

使用感覚を掴んで経験を積む為だ。


コランさんたちと話し合った。

揉めたりはしなかった。すんなりと話が通る。

ダンジョンの異変に挑むのはボクだけになった。


理由は力不足だ。

ダンジョンの異変と戦うには『ケルベロスターン』は悔しいけど実力が足りない。


でもダンジョンとの異変は滅多にない経験を積める。

だからリーダーとして指名された者として、ボクだけ参加することになった。


しかし、まだボクは手に入れたばかりでウルフェグの刀に慣れていない。

ウルフェグの刀―――ウォフさんのおかげで手に入った。


長年行方不明だった一族の武器だ。

持ち主は知っている。オーカミ。僕の叔父だ。

とても強く優しかったのを覚えている。


今も世界を放浪していると思っていた。

だからこそショックだし悲しいし、憤りもある。


仇討ちもしたい。

ダンジョンの異変だという蜘蛛。


叔父を殺したんだ。今のボクでは敵わないだろう。

だけどウォフさんの力を借りてでも、ボクは仇を取りたい。


ウルフェグの刀を使いこなしたい。だけどそんな簡単な代物じゃない。

このファーストウェーブで少しでも慣れることが出来れば。


「来たぞっ! ナベル!」


コランさんの叫びがして、粗末な甲冑を着たゴブリンが見えた。

コランさんがゴブリンを新しい槍で突いて風の刃を飛ばす。

後ろ2匹が切断された。


「【フレイムランス】っ!」


プランシーさんが炎の槍を1本生み出し、3匹ぐらい貫通させて燃やす。

コランさんは新しい武器。プランシーさんは防具だ。


風の刃を生み出すオーパーツの槍。

水と火のクリスタルが表と裏に付いた不思議な衣服。ローブの下に着ている。


武骨な曲がり剣を手にした緑色の巨鬼があらわれる。

オークだ。体中が矢だらけだが致命傷はひとつもない。


「コランさん。プランシーさん。ここはボクがやります」


ボクはウルフェグの刀の柄を握りしめる。

息を深く吸って、吐く。


オークは真正面。あの巨大で禍々しい剣の間合いまで、あと一歩。

ボクは『ワン・ステップ』でその間合いの中に入るとウルフェグの刀を振るう。


「【居合い】!」


瞬く間に鞘から抜いて刃を光らせ、オークの胴体を斬った。


『グオオォっ』


浅い。だが納刀すればまた瞬く間に振り下ろせる。

活動時間1分。


その間、オークを斬る。

納めて抜いて斬る。納めて抜いて斬る。納めて抜いて斬る。


オークが硬い。ハイドランジアのオークより硬い気がする。

コランさんもプランシーさんもゴブリンの相手で忙しい。


ぐっ、刀を納める動作がやっぱり遅い。

抜いて斬るのはいいんだけど、納めるというのが何度やっても難しい。


『グオオオォォォォ』


やっと倒せた。急に刀が重くなる。時間か。

抜く動作。はぁ、もっと練習しないといけないな。


「このゴブリン。なかなかしぶとかった」


コランさんが鎧を着たゴブリンの腹から槍を抜く。

向こうではプランシーさんが【フレイムランス】を使っていた。

凄い。僕が苦戦したオークを一撃で倒している。つおい。


眺めているとこっちに向かってくるゴブリンの群れ。

ボクはウルフェグの刀を仕舞って、ウルフェンの剣を構えた。


しばらく戦っていて気付く。

ゴブリンとオークの死骸が延々と平原に横たわって続いていた。


まるで緑の河だ。波はかなり落ち着いてきた。

ホブゴブリンを倒し、ポーチから水筒を出してお茶を飲む。


「ふうぅ」


少しぬるめだけど、柑橘系で喉に心地いい。

ウォフさんに貰ったお茶だ。なんと自分で煎じたという。


彼は年下で未成年で階級も第V級。だけど不思議だ。

なんかこうウォフさんって年上みたいに思ってしまう。

実際、ボクたちより強い。さすがは魔女の弟子。


「きゃあっ!」

「プランシーさん?」


悲鳴が聞こえ、駆け付ける。


「うわっ、なんだこれっ」


コランさんも声をあげた。

どうしたんだ。ふたりの元に行くと、ゴブリンの死骸から一匹の蜘蛛が飛び出した。


「うわぁっ!?」


ボクは払いのける。

小さな蜘蛛だ。白くて脚が黒いまだら模様をしていた。

赤い四つの複眼が光っていたが、慌てるように逃げていく。


「なんなのよ。あの蜘蛛」

「ビックリした」


どうやらふたりも蜘蛛に驚いたみたいだ。

蜘蛛……ダンジョンの異変の蜘蛛と何か関係あるのか。


その後、ゴブリンの残党狩りをして剥ぎ取りをして、この日の波は終わった。

夕方近くまで掛って疲れ果てた。

なんとか支給のご飯を食べて宿の部屋に戻り、倒れ込むようにして寝た。


次の日。

また緑の波だった。

同じように夕方近くまで戦って剥ぎ取って、疲れ果てて寝る。


次の日。

今度は灰色の波だった。


刃のような角をした黒いエッジウルフ。

爪撃を主体とする白いクローウルフ。


槍のような角をしたランスウルフ。四つの目をした巨大な狼。四眼狼。

その数は2万。対するこちらは人材が補充されて援軍も入れて1万2000人。


「【居合い】っ!」


青白いエッジウルフと切り結ぶ。

コイツ、強い。

なんとか倒せたが、1分切ってしまう。


まだ終わりじゃない。クローウルフとランスウルフが迫る。

ボクはウルフェンの剣に替える。


耳と尻尾を立てて眼差しを鋭くする。

まずは、クロ―ウルフから一気に決める。


「【ウルフェンラッシュ】」


渾身の『ワン・ステップ』でクローウルフとの間合いをゼロにする。

右脚に一撃、頭部に二撃。倒したと確認する前にランスウルフの突きを避けた。


完全に死角からの回避だからランスウルフは驚く。

その隙を逃すものか。脇腹に一撃。よろめいて地に伏せる。

よし、致命傷だ。


「ぐああぁっっ!!」


コランさんの悲鳴がした。見ると、四眼狼と戦っている。

見上げるほど大きな狼。四つの眼光がボクたちに殺意を飛ばす。


「【ファイアランス】っ!」


プランシーさんが炎の槍を四眼狼にぶつける。

四眼狼をよろけさせた。


「この犬がっ! 【スラッシュブロー】!!」


コランさんが槍を振るうと風の刃が出る。

四眼狼は前脚を振り下ろした。その衝撃でボクたちは吹き飛ぶ。


受け身をとってゆっくりと立ち上がる。


「こ、こいつ……強すぎる」

「本当にファーストウェーブの魔物なの……?」


ボクも疑問に思った。

四眼狼は吠える。


『ヴオオオオオオオォォォォォォォッッッ』


その雄たけびで他のウルフたちが集まってくる。

それから『ケルベロスターン』の命掛けの戦いが始まった。


まずコランさんが倒れた。

次にプランシーさん。

まだ死んではいないはずだ。


ボクは息も絶え絶えで、何故かウルフェンの剣とウルフェグの刀を持っていた。

全く扱えない二刀流で最後に残った無傷の四眼狼と対峙している。

その周囲には様々なウルフの屍と討伐者の死体が転がっていた。


「ヴオヴオおおおぉぉおおおぉぉぉっっっっっ」


吠えながら四眼狼に向かっていく。

力はもう殆どない。

だが命を燃やす気持ちと覚悟で『ワン・ステップ』で眼前に飛ぶ。

そして剣と刀を四眼狼の頭部に振り下ろした。




















次の日。

宿屋のベッドで起きる。

不思議にしているとコランさんとプランシーさんが部屋に入ってきた。


四眼狼は倒した。嘘みたいだがボクが倒した。

その後、満身創痍になったボクは意識を失ったという。


なんでも死ぬ寸前だったが、駆け付けたウォフさんが何かしたらしい。

あともう少し彼の到着が遅れていたらボクは死んでいた。

ウォフさんに感謝だ。


その日は何も起きなかった。

その次の日も何も起きなかった。

それはファーストウェーブの終わりを意味した。


次はセカンドウェーブだ。

だがボクはその合間にウォフさんたちと合流する。


ダンジョンの異変討伐が始まる。








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