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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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320/329

フォレストウェーブ・ファースト④・宇宙猫。

よっぽど驚いたんだろう。

パキラさんは耳から尻尾まで総毛立って目を見開く。


「な、なな、にゃんでおぬしがここに……!?」


あまりに吃驚し過ぎて一部がニャになっている。可愛い。

薄緑色に白いメッシュが入った髪で、隙間から白い猫耳が生えている。


髪で片目を隠しているが大きな猫の瞳だ。

その顔立ちも可愛らしく整っていて、どこか色っぽい。


黒柄のローブ姿で長短のふたつの白い尻尾がゆらゆら揺れていた。

獣人で珍しい猫人種の美少女だ。


「お久しぶりです。パキラさん」

「そ、そうじゃのう」


照れたようなパキラさん。

僕はくすっと笑った。


「やっほうパキラっス!」

「ビッドっおぬしもかっ!」

「オラもいるだ」

「ホッス? どうしておぬしまで……」

「まぁ色々とあったんだ」

「そうっスね」

「ありましたね」


僕たちの複雑な表情にパキラさんは微苦笑する。


「相変わらずみたいじゃな」

「魔女とミネハさんもハイゼンの方に居ますよ」

「あのふたりもか」


彼女の白い猫耳がぴくぴくっと動き、長短のふたつの白い尻尾が舞う。


「シャルディナとアンナクロイツェンもいるっスよ」

「ほう。珍しい面子じゃな」

「パキラさん。ひとりなんですか?」


近くにリヴさんとルピナスさんの姿が無い。


「そうじゃのう。今はオフじゃ。別々に行動しておる」


パキラさんは言いながらハイゼン大森林を見つめる。

僕も自然と彼女の目線に合わせる。


「いい眺めですね」

「うむ。あの魔の森が大人しくみえる」


パキラさんの視線の先にあるのは緑の海。

ビッドさんが鉄柵に寄り掛かって聞く。


「どうっスか。ハイゼン大森林」

「そうじゃのう。魔物が桁違いに多いのう。種類も豊富で退屈はせぬな」

「儲かるだか?」

「うむ。暮らしていくには困らぬぞ。探索者より儲かるのう」

「そうなんですか」

「じゃが、危険度が高いのも事実じゃな。わらわたちが此処に来てからもう何人も死んでおる。ハイドランジアよりも死者数は多い」

「厳しいっスね」


ビッドさんが嘆息する。

儲かる分だけリスクも大きい。


「これは私見なのじゃが、ハイドランジアの周辺やダンジョンの魔物よりも大森林の魔物の方が、強い感じがするのう」

「そうなんですか」

「あくまでも、わらわがそう感じるだけじゃ」

「たぶんだども、それ合っているべ。オラもハイドランジアに来たとき同じように思っただ」

「ホッスはハイゼンを知っておるのか」

「昔、住んでたべ」

「ほう。ところでおぬしらもフォレストウェーブ参加かのう」


そう言われて僕達は顔を見合わせ、僕が口を開く。


「いいえ。ダンジョンの異変を討伐しに来ました」


まっすぐとパキラさんを見つめて言う。


「……は?」


パキラさんはきょとんとした。



























ゼンゼラ家最新鋭の巨馬車『ブルーストーム』。

蒼白い綺麗な巨馬車だ。なんていうか。


見た目は真四角のホワイトチーズケーキみたいだなって思った。

ブルーベリーがかけられたよくあるやつ。


「ん……おひさ……」

「こんなところで会えるだなんて驚きましたわ」


リヴさんは相変わらず。ルピナスさんはどこかホッとしていた。

『ブルーストーム』の一室。ガラドさんが説明していた部屋だ。


ふたりとはすんなり合流できた。

リヴさんはぶらぶらと歩いていて、ルピナスさんは雑貨屋に居た。

再会して早々積る話があると、この『ブルーストーム』に案内する。


案内したとき3人とも最初は目を丸くしていた。

でも僕だからって納得するのなんなんだろう。


「じゃあまず僕たちがここにいる理由から話しますね。きっかけは手紙でした。僕の叔父さんから貿易都市ハイゼンに隠れ家があるという内容でした。それで魔女たちを誘って魔女の巨馬車で向かいました。道中で盗賊と戦ったり港町で剣の女神の娘と戦ったり、河で河賊と戦ったりして、それでハイゼンに到着しました」

「……剣の女神の娘とはなんじゃ?」

「剣の女神の欠片から生まれた娘たちです。剣の姿をしていますが人化したり人を乗っ取ったりします」

「魔物ですの?」

「いいえ。一応、神です。そんなに強くないですね」

「ん……リヴも……ぶち壊したこと……ある」

「なんじゃと」

「あるんですの?」

「あるっスか」

「あったんだべ」

「ん……ありありの……アリアリ」


へえー、あるんだ。


「話を続けます。叔父さんの隠れ家に着いた僕たちはそこで途轍もないものを発見しました。それはこのハイゼンの重大な秘密そのものでした。ゴミ場です。叔父さんの隠れ家の地下にゴミ場がありました」

「ちょっと待ちなさい!?」

「ちょっと待て!?」

「……わーお……」


僕は待つ。パキラさんは頭を抱えて、ルピナスさんは難しい顔をする。

リヴさんはいつも通りだった。さすがリヴさん。


「ゴミ場じゃと……」

「ウォフさん。冗談にもほどがありますわ。ゴミ場だなんて」


ルピナスさんに睨まれた。

エルフの睨み。美人だと怖いよなあ。


「本当っスよ。ゴミ場があったっス」

「あれはたまげただ」

「なんですって」

「…………確かにハイゼン大森林ではダンジョンのように死体が消える。じゃがハイゼン大森林はダンジョンではない。なのにゴミ場じゃと?」

「いいえ。パキラさん。ダンジョンです。貿易都市ハイゼン。ハイゼン平原。ハイゼン大森林。そして禁断の地。このハイゼンそのものがダンジョンなんです」

「馬鹿なっ」

「まさに……奇妙奇天烈……摩訶不思議……」

「ひょっとして―――地上型ですの?」


ルピナスさんが思い出すように言う。


「はい。その地上型です」

「聞いたことがありますわ。地上そのものがダンジョンになっている。そういうのがある。まさか、このハイゼンがそれだとは思いませんでしたわ」

「じゃから、ダンジョンの異変というわけかのう」

「ん……異変……起きている……ってコト……?」

「はい。EVENTが多発して大変なことになっています」

「EVENT……ハイゼンがダンジョンならば当然かのう」

「思えばフルムーンバザーもフォレストウェーブもEVENTっぽいですわ」

「それと、あと三大家のジンリュウ家が無くなりました」

「は?」

「え?」

「んお……」


三者三様に反応する。

僕は淡々と続けて言う。


「次期頭首のバァロウも死にました。それと黒幕のラァダは倒しました」

「バァロウ。あやつが死んだか。当然といえばそうじゃのう」

「不謹慎ですけどとても嬉しいですわ」

「ん……死んでくれて……ありがとう……」


この反応的に何かあったみたいだな。3人とも稀なほど美少女でかつ有名だ。

バァロウが手を出さないわけが無いか。


「なんかあったっスか?」

「そうじゃのう。わらわたちをどうにか手に入れようと躍起になっておってな」

「刺客を送ったり攫おうとしたり、蛇蝎の如く執拗でしたわ」

「ん……片っ端から迫りくるの……片付け……ここに避難してきた」

「それならなしてジンリュウ家の討伐村に居るべ?」

「それはのう。襲うのもジンリュウならば助けるもジンリュウからじゃった」

「ジンリュウ家のジンギやガラドの支持者はバァロウに賛同していませんの。むしろ彼の敵といってもいいくらいですわね。特にジンギやガラドの支持者は討伐者が多くて、この討伐村はまさにアジトだったんですの」

「実態は被害者の避難地じゃったがのう」

「反逆しなかったっスか」

「その……担ぎ上げる……神輿が無い」


そうなりたくないからガラドさんはミラーフェイスになったんだろうな。


「それでバァロウの死体を魔女が入手して、それをフルムーンバザーのVIPオークションに出品したんです」

「……はあ?」

「なにやってますの……あの魔女」

「ん……さす魔女……しびれる……あこがれる……」

「そもそも入手って、ところがっスね」

「回収される前に回収したんべ」


加担者のひとりだがら当然、暗殺計画を魔女は知っている。

その上でガラドさんがバァロウ(実弟)を殺すこともたぶん分かっていた。


裏をかいたガラドさんの更に裏をかいて死体を手に入れたんだ。

実に魔女らしい。


「それから、まあ色々とあってジンリュウ家の全財産は魔女のものになりまして、魔女はそれらをオークションで全出品。ゼンゼラ家とゴウロ家が競売。それでこの討伐村はゼンゼラ家のモノになりました」

「…………」

「…………」


パキラさんとルピナスさんが宇宙猫になる。

特にパキラさん、もう猫そのものだ。


「ん……ヤバっ……すぎる」


無表情でぽつりと呟くリヴさん。

ですよね。誰だってそう思う。


僕は何故かここで畳み掛けたほうがダメージは少ないのではと思った。


「それとこれブルーグリーンクリスタルです」


無造作にテーブルの上に置く。

青く緑色に輝く水晶の塊。


「……………」

「……………」

「—————」


宇宙猫がひとり増えた。




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