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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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310/312

フルムーンバザー⑦

幸いにも転移した場所はハイゼン平原で移動宮殿の裏手だった。

ただ死体といえるのかどうか、女性を背負う僕は当然、衛兵に止められた。


説明が難しいのでどうすればいいか困る。

そこで救いの手を出したのがゼンゼラ家だった。


駆けつけたギィーザのおかげで僕は解放された。

さっそく移動宮殿に入って魔女の店に向かう途中。


「あれ、ホッスさん?」


ホッスさんが中庭にいた。佇んでいる。


「ウォフ!?」


声を掛けると振り向き、僕を見て驚く。


「こんなところでどうしたんです。あっ、そうだ。ルマさんが大変なんです」

「ルマっ? そうだば、ルマだべ! 宮殿には居なかっただ」


この口ぶりだとホッスさんは事情を知っている。

ずっと姿が見えなかったのもその関連だったんだな。


「そうなるとジンリュウ家の屋敷ですね。僕も手伝います」

「助かるだ。あと、それは?」


ホッスさんが言いたいことは分かる。


「ああ、これは……ええっと、ちょっと事情がありまして」

「なるほど。夜王だべか……」

「違いますっ!」


なるほどってなんだよおい。


「おい。屋敷に入るのなら協力するぞ」

「そ、そちらは?」

「ゼンゼラ家のギィーザ……さんです。味方です」

「ど、どうもだべ」


驚愕しつつ頭を下げるホッスさん。

ギィーザは一瞥して僕たちに言う。


「フルムーンバザーが終わってから乗り込む予定だ。ホッスだったな。実はおまえについての事情など話は聞いている。参加したいなら希望に答えよう」

「あ、ありがたいべ」


よろしくお願いしますと頭を下げるホッスさん。

良かった。ルマさんたちは無事だろうか。

ああ、でもサマーニヤさんも捕らえていてタサン家だと知っているから。


「とりあえず魔女の店に行きましょう」

「魔女の!?」

「皆、居ますよ」


言ってからダガアとビッドさんはいなかったことを思い出す。

すると裕福そうな男性たちが会話をしながら階段を降りて来た。


「凄かったなあ。チャンピオンマッチ」

「ああ、手に汗握る素晴らしい戦いだった」

「逆転また逆転。そして大逆転からの超逆転!」

「どっちも強かったな!」

「ああ、どっちも凄すぎた」

「ナイスファイトだった!」

「よかったよかった。白熱した夜だった」


興奮して大絶賛しているけど何の話だろう。まあ、いいか。

魔女の店へ。チリリリンっと鈴が鳴る。


「いらっしゃい、あっ、おかえりなさいませデス。副店長」

「……!」


シャルディナとアンナクロイツェンさんが出迎えてくれた。

僕をにこやかに見て歓迎し、肩に背負ったハイヤーンボディに視線が移る。


それからホッスさんでちょっと驚ていた。

ギィーザにはきょとんとする。


「無事におかえり。それ、ラァダ?」


ミネハさんは飲んでいたお茶を離して言う。

妙に落ち着いていた。


「ああいや、これは……」

「それとホッス。久しぶり」

「ど、どうもだべ」

「ミネハさん。魔女は? それとバァロウの死体がない」


砕けた棺とかは片付けたみたいだ。


「ゼンゼラ家当主とゴウロ家当主に売り付けてくるって出て行ったわ。あの死体。バァロウって言うのね」

「な、なるほど」


商魂逞しいなあ。事情を知った後だとまさに魔女の所業ではある。

VIPエリアで死体を売るとか魔女ぐらいじゃないか。

他の場所。特に外縁部とかは普通にありそう。


「バァロウ……やっぱりだったか」

「やはり死体を持っていったのは魔女だったのか」

「あらギィーザもいる」

「娘。魔女は死体を何処へ持っていったか分かるか」

「オークション会場とか言っていたけど」

「あの女狐っ! 人の尊厳とか考えろ。これで失礼する!」


ギィーザは出て行った。

人の尊厳か。

剣の女神の娘のギィーザからそういうセリフが出るとは、な。

今度からギィーザさんって心の中でも呼ぼう。


それにしても三大家のひとつジンリュウ家の次期頭首の死体。

それをオークションにかけるとか、ホント魔女は凄い。

人の尊厳とか考えてないんだろうな。


感心半分で呆れつつ僕はハイヤーンボディを近くの椅子に座らせた。

まるで眠っているようだ。

ミネハさんとホッスさんがハイヤーンボディに近寄る。


「それにしても驚くほど似ているわね」

「んだ。メガディアにそっくりだべ。こっちのほうが妖艶だだ」


メガディアさんより年上だからか。

黙っていればとても品のある極上の美女だ。


「それは先祖みたいなものだから」

「そうなんだべ?」

「そうなの?」


そういえばふたりは知らなかったか。

僕はふたりに説明する。


終わった後、ふたりはそれぞれ複雑な表情を浮かべた。

重そうにホッスさんが口を開く。迷ったように言う。


「……なんともいえないだ」


ミネハさんが気の毒にと呟いて。


「メガディアかわいそう」


心の底から憐憫に思われていた。いやまあ、うん。

シャルディナたちも興味深そうにハイヤーンボディを見る。


「これがあのエロウサギの元の身体デスか。すっげー綺麗デス。ムニエカを遥かに超えてますデス!」

「……っ?」


アンナクロイツェンさんがハイヤーンボディを指でつつく。

首を傾げた。


「この身体でもあの性格だったらしいですよ」

「これであの……デスか」

「…………」

「なんともいえないだ」

「ウサギに魂を入れたくなるわね」


それは僕も思った。そしてラァダは実行した。

元々器としてハイヤーンボディを狙っていたのかも知れない。


それとラァダの性格から子を産んだとは思えない。

いや面白半分に産みそうではあるけど、あれは人を完全に見下していた。


そんな見下した相手とするのはちょっと考えられない。

身体は別だからとかそういうのも無いだろう。


最後のセリフから彼女はハイヤーンボディを大切にしていたような気がする。

じゃなければタリスマンを飲んで何千年も同じ身体で居続けるわけがない。


メガディアさんの先祖ではあるが直系ではないな。

それが唯一の救いといえるのかどうか。


「そういえば、なんでラァダの名前を知っているんですか」

「魔女が教えてくれたわ」

「なるほど」

「ラァダってなんだべ?」


ホッスさんに説明する。

全ての元凶だと知ってホッスさんは苦渋に満ちた顔をする。

自分が戦いたかったみたいな雰囲気を感じた。気持ちは分かる。


「でもそれがハイヤーンの身体ってことは器にしていたってことよね」

「そうですね。器にしていました」

「ラァダの本体は?」

「壊しました。正直、ラァダはとても強かったです」

「そんなに?」

「はい。僕の全てを使ってなんとか勝てました」


だから僕の真の切り札は1週間、使えない。

ホッスさんは苦笑する。


「ウォフが苦戦するほどの相手だべか。オラなら死んでたな」

「そんなに恐ろしい相手デスか」

「今までで一番の相手でした」


出来れば二度と戦いたくない。

世界は広い。改めて僕は思った。


「……そう」

「ミネハさん?」

「疲れたわね」


ぽつりと言う。急に元気が無くなったような?

そのままミネハさんは僕達から離れたところで座り、冷めて残ったお茶を飲んだ。

アンナクロイツェンさんが慌てて新しいお茶を彼女のカップに注ぐ。


「ありがとう」

「……!」


ニッコリと微笑むアンナクロイツェンさん。

ホッスさんもシャルディナから椅子を勧められて座る。


僕はちょうどいいとサマーニヤも一緒に捕まっていることを伝えた。

そして彼女がタサン家の娘だとバレてから何もされず監禁されていることを教えた。


ホッスさんは心の底から安堵したように深く深く吐息する。

彼の苦労が流れ出した瞬間だった。


「複雑だけどレルの実家に感謝だ」


権力という理不尽によってルマさんは危険に晒された。

だけど彼女を救ったのもまた権力だった。


皮肉というかどんなものにも正負があるんだな。

こんなところでもプラスとマイナスのエネルギーを知る。


あとまぁ、なんとなくだけど呼び出されそうだなとは思った。
























真っ白い謎の霧が立ち込める謎の白い空間。


「……………」


僕はその空間で立ち尽くしていた。

あー、はい。






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