フルムーンバザー④
『ケルベロスターン』が食べ歩きしていたクレープ。
ツナや肉や野菜などが主で甘いモノは無かった。がっくり。
「わぁーっ、ミネハだ」
「久しぶり。プランシー」
ハイタッチしてからキャッキャッするふたり。知り合いだったのか。
「もぐもぐっ、ミネハとは何回か組んだことがあるんだよ。もぐもぐっ」
「かなり助かりました」
コランさんとナベルさんが言う。
コランさん。食べ終わってから話そう。
「そうだったんですか」
「ところで、ウォフさん。なんか良いモノ見つかったか」
「いやーそれがあまり」
「ボクたちはまるでさっぱりで……難しいですね」
「【鑑定】持ち必須だよなぁ。沢山ありすぎて何が良いか分からねえや」
「ですよね」
なるほど。
「ナベルのレリックもこういうのには役に立たないからなぁ」
「コランさんっ」
「悪い悪い」
「……コランさんが欲しいのは、槍でしたっけ?」
「あ、ああ、俺のレリック【風】に対応して、レリックが所持できるのがいいな」
「ナベルさんは剣でしたよね」
「このウルフェンの剣と比肩するような剣があれば……です」
ふむふむ。
「プランシーさんは?」
「ローブかな。出来れば【火】と【水】に関連するみたいな?」
なんだかんだ手伝ってくれたり協力してくれたり、それと教えてくれたり。
彼等は悪いひとたちじゃないし、お世話になったところもある。
よし。
「良かったら僕に手伝わせてくれませんか」
「探すのですか?」
「まあ別に構わねえけど」
「助かるところだけど」
「いいですか。ミネハさん」
「ふーん。まっ、いいんじゃない?」
さて、まずは、そうだな。
ちょっと試したいことがある。
「コランさん。今扱っている槍について教えてくれますか」
「これか? オーパーツでそんな大したもんじゃない。俺のレリック【風】の威力を少しだけ上げることができる。『疾風丸』ってんだ」
見てみたら緑の光だ。
「ご注文は、【風】に関連するレリックが所持できる槍ですね」
「ああ、そう都合よくあればいいけどな」
「これだけ広いからありそうだけど」
「だからって片っ端から槍を持つわけにもいかねえだろ」
「そうね。数千を超えているわよ」
「あはは、確かに……」
レリック【フォーチューンの円環】を使用。
実はミネハさんのスピアー探しのとき思ったことがある。
ネット検索みたいに詳細にしてみたら見つかるかどうか。
選別やグレードの選択も出来る。それならもっと細かく出来るかも知れない。
そこまで出来ないならそれはそれでいい。
出来たら儲けものみたいな感覚でやってみる。
『槍』・『風に関連するレリック』・『黄色か青い光』。
どうだ。
あ、あった。しかも……黄色の光が三つ。青の光がひとつだ。
「行きましょう」
「え?」
「こっちです」
「ちょっと、ウォフさん」
「あったみたいね。行くわよ」
「どういうことです?」
僕はとりあえず近場の黄色い光へと向かった。
下層の武器がずらりと並ぶテントの露店。
その奥に雑多に筒へ入れられている槍のひとつが黄色い光を放つ。
「これとかどうですか」
僕はその槍をコランさんに渡す。
無造作に彼は受け取って驚く。
「レリックが入った……?」
「本当ですかっ?」
「あ、ああ、【スラッシュブロー】……すげえ」
「それにします? 他にも」
「これにする」
まだ他にもあるけど、まあいいならいいか。
籠には『大特価600オーロ』とあった。安い。
店主曰くワケありで安いとのこと。まあ、そういうところだよなあ。
コランさんは大満足な顔だ。
槍の銘は『ブローファング』という。緑色の柄で穂先が牙みたいなカタチだ。
「ねえ、ねえ、ウォフさん」
「分かっていますよ。プランシーさん。詳しく言ってくれたらそれに合わせたモノが探せると思います」
「ローブが欲しいの。【火】と【水】のレリックに関連したのがいいわ」
「わかりました」
検索。
『ローブ』・『火と水に関連するレリックがある』・『黄色か青い光』。
出た。黄色はゼロ。青い光がふたつだ。
近くの青い光は中層か。でも遠いところは……外縁部の……あそこか。
あのインチキ中国人っぽいところの怪しいゴミ山の店か。
でもまあ1000オーロで手に入ると考えると、かなりお得だよな。
案内するとミネハさんは嫌そうな顔をする。
3人はエセ中国人みたいな怪しい店主に引きつつもゴミ山でローブをゲットする。
それは堅い箱の中に入っていた。
「【フレイムランス】と【水分身】っっっっ!!」
ローブを着てプランシーさんは興奮する。
それは表が赤で裏が青の不思議なローブだった。
フード付きパーカーみたいな感じで、真ん中に小さなクリスタルが表と裏にあった。
名称は『火と水の絡まったパーカー』という。パーカーじゃん。
「すげえな。それが1000オーロかよ」
「えへへっ、ありがとう。ウォフさん!」
「ひょっとしてレリックですか」
「まあ、そうですね。次はナベルさんの番です」
最後は『剣』だ。
えーと、まずナベルさんが持っている剣は、うわあっ、青い光だ。
「あの、ナベルさん。その剣ってどういうオーパーツなんですか」
「うちの家に代々伝わる『ウルフェンの剣』です。専用レリックを授けます」
「どういうレリックかは聞いてもいいですか。ダメならそれで大丈夫です」
「———【ウルフェンラッシュ】といって剣のラッシュを4回、行えるんですよ」
「ああ、あのときの凄まじい剣技!」
噂を食べる魔物との戦いで見たことがある。
あれはレリックだったのか。
「なるほど……ありがとうございます」
「それとこの剣は魔鋼製。魔銀や魔銅も混じっていると聞いてますよ」
「それはいい情報ですね」
検索。
『剣』・『魔鋼や魔銀や魔銅の合金製』・『ウルフェンの剣に比肩』・『青い光』。
さあ、どうだ。ん? んん? えっ……なんか頭の中に映像が……剣が見える。
ナベルさんが持っている剣に似ている。検索できた……すげえ。
それとこの場所、僕は知っているような……おい。オイオイ。まさか嘘だろ。
「魔女の店だあっ!!」
「おわあっ!? ビックリした」
「ま、魔女の店?」
「なに、どうしたの」
「ありましたっ行きましょうっ!」
「ちょっとウォフ!?」
「え、あったって」
僕は駆ける。正直、疲れているけど走る。走る。
中層の『ポンポコ亭』の裏口から転移室へ。なんか後ろで声がするが気にしない。
上層・VIPエリアの移動宮殿に着く。
そのまま中庭を横目に廊下を渡って2階へ。
魔女の店のドアをノックする。
「どうぞーデス」
「あー僕です」
ガチャっとドアが開いた。店内にお客は居ない。
「おかえりなさい。副店長」
「「「副店長!?」」」
ナベルさんたちが驚く。
それはいいとして、えーと、あった。あの剣だ。
店の片隅、壁際に置かれている。
売り物かそうじゃないかよく分からない立ち位置の剣。
「ナベルさん。あの剣です!」
「え? あの剣って、あ、ああっ! まさかそんな!?」
ナベルさんは驚いて慌てたように剣へ近付く。
その剣は長く、意匠はナベルさんが持っている剣にとても良く似ていた。
ただしナベルさんの持つ『ウルフェンの剣』が両刃なのに対してこの剣は片刃だ。
刃部分がややギザキザしていて鍔はなく一体形成されていた。
「なんか、おまえの剣に似ているな」
「『ウルフェグの刀』です。『ウルフェンの剣』と比肩する……ずっと失われていた一族の秘宝……数十年前にウルフェグの当時の当主が持っていました」
「そうでしたか」
その当主。ハイゼン大森林で亡くなったんだな。
ナベルさんは僕を真剣な顔で見る。分かるこの後のセリフ。
「あのこれ、ウォフさん。譲ってもらえますか」
「もちろん」
「どんなに高くても借金してでも払います!」
「俺も手伝う」
「わ、わっちも!」
「え、ええーと……」
どうしよう。
ゴミ場から持ってきたからタダでいいなんて言えない空気だ。
「それなら10万オーロでどう?」
「ミネハさんっ?」
「10万……それなら払えます」
「良かったな。ナベル。俺も出すぜ」
「わっちも出すから」
ワイワイと『ケルベロスターン』がお金を出し合う。
「魔女に内緒で勝手に決めていいのかな」
「いいのよ別に」
「そうですか」
「だって出所言えるわけないから」
「それはそうか」
10万オーロでナベルさんに剣を売った。
これでナベルさんが大幅に強くなったらしい。良かった。
「ウォフさん。ありがとうございます」
「ありがとうございます。ウォフさん」
「ウォフさん。ありがとうございます」
異口同音にお礼を言う『ケルベロスターン』。
僕は少し照れた。
大満足で3人は店を後にする。
「魔女はどうしたの?」
「店長。まだ戻らないデス」
「なにしてんだか」
ミネハさんは大きくなって空いている椅子に座る。
僕も疲れたので椅子に腰を下ろす。
アンナクロイツェンさんがお茶を持ってきてくれた。
僕達はお茶飲んでくつろぐ。
「お客さん。どうです?」
「全然デス」
「売ろうって感じしないからじゃないの。店長居ないし」
「……ですよね」
そんなことを言っていたらドアが開いた。
「いやはや、いやはや、すまないすまないねえ」
魔女だ。
「お帰りなさいデス。店長」
「どこ行ってたのよ。店長」
「それ……なんです?」
魔女は紐を持っていた。その先に黒い棺がある。
まさかそれ引きながらここまで来たのか。
「これはこれは、棺だねえ」
「見れば分かるわよ。もしかしてそれも商品?」
「まあまあ、そうだねえ」
どんな商品なんだと思ったら、またドアが開いた。
「いらっしゃいませデス」
「……っ!」
「おやおや、いらっしゃいだねえ」
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませー」
「……はじめまして」
入ってきたのは、フードを目深に被った女性だ。それも紫の瞳をしている。
エッダだ。魔女がにこやかに言う。
「どうぞどうぞ。ゆっくり見ていってねえ」
「はい。珍しいモノが沢山ありますねえ」
女性は微笑んだ。




