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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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306/312

フルムーンバザー③


当日。夕方近く。

ざわざわっと騒がしくなってきた。


上層。

VIPエリア・移動宮殿の2階。

『216』の番号が隠れるように木の看板が設置される。


『216』号室改めて魔女工房フルムーンバザー店。

たった一夜の魔女の店だ。


「さあ、気合を入れるデス。アンナクロイツェン!」

「……!」


コクコクっとアンナクロイツェンさんは勢いよく頷く。

かわいい。


「張り切っているわね」


ミネハさんが素っ気なく言う。

相変わらず冷めた感じだけど、僕にはわかる。


ちょっと彼女は浮かれていた。

それとフェアリアルの状態になっている。


「あれ魔女は?」

「店長ならちょっと出ているデス」


店長。確かにそうだけど。

もう店員気取りか。実に楽しそうな顔をしている。


「ウォフ。行くわよ」

「は、はい。じゃあ行ってきます」

「副店長。行ってらっしゃいデス!」

「……」


副店長? 弟子だからか。

ふたりに見送られ、ミネハさんは僕の肩に座る。

なんだか久しぶりだな。


部屋を出て1階に降りる。人が随分と集まっているなぁ。

男女で人種もバラバラで来ている服も様々だ。


VIPエリアに居る資格者たち。だけど僕はひとりとして彼等に興味はない。

いや訂正する。すんごく興味あるのが一瞬で出てきた。


「なあにあれ」


ミルハさんも唖然とつぶやく。

頭が蟹……なんで蟹? しかもあれ沢蟹だ。

沢蟹が一匹丸ごと頭部になっている……人間? 人の姿をしたのが居た。

スーツを着こなしているのがまたなんというか……怪人だ。


えっと、ギムネマさんと同じ……だよな。

なんかそういうのがこの世界で実は種族しているの?


というか魔女と会話している。

あの蟹と知り合いなんだ。まぁ魔女だから不思議じゃない。


バレたら紹介されるのでそそくさと転移室へ。

『ポンポコ亭』の裏口から出る。


「魚がいるからって蟹とか冗談にもほどがあるわ」

「た、確かに」


何故か苛立っているミネハさんの言葉に僕は同意する。


「さあ、ウォフ。やって」

「はいはい」


レリック【フォーチューンの円環】を使って『スピアー』を指定。

グレードは前もって言われた青のみ。


「あったの?」

「ありましたけど、青だとこの辺ではそんな多くないですね」

「それならとっとと行くわよ」


お気に召してくれればいいんだけど。
















あれからどのくらい経ったのか。

輝く星の空に見事な夜の女王(フルムーン)が王女《衛星》たちと一緒に浮かんでいる。


「……もうこれで最後ですね」

「はぁ、やっぱりVIPエリアしかないのかしら」


中層と下層の青い光のスピアーを全て見た。

青い光は点在していたので回って疲れた。


スピアーはどれもミネハさんの琴線に響かなかった。

青い光なので全て名品でオーパーツだったと思う。


だからこそなのか。ミネハさんが手に持っても何も起きなかった。

ミネハさんのレリック【スパイラル】はそれ自体がレアなレリックだ。

それに合うスピアーなんて……中々無いと思う。


「……その妖星現槍みたいに造るしかないかも知れません」

「そうね……」


ミネハさんの返事に元気がない。気落ちしている。

とりあえず僕は【フォーチューンの円環】を使い続けてみた。


フルムーンバザーの会場は広い。だから見落としか何かあるかも知れない。


それにしても【フォーチューンの円環】か。

元々【フォーチューンの輪】は便利だけど、更に使い勝手が良くなった。

選別が出来てレアも選べて……ん? んん?


「……?」


なんだ。この光。

あの位置、方向……外縁部か。


「ミネハさん。ちょっと気になるのがあるんですが」

「好きにしたら」

「わかりました。行きますよ」


下層から外縁部。

テントが密集していて満月の光でも届かない。

さすがに真っ暗だったので無数の光球が浮いていた。


さすが本番では外縁部とはいえ犯罪は見過ごせないのか。

何人もの衛兵が警邏している。


「こっちかな。あった。この店だ」

「……店?」


そこは外縁部でも異様だった。

一際大きく年期が入ったツギハギだらけのテント。

その中にあるのは、なんと高々積んであるゴミの山だった。

ゴミ……つまり武器や防具や雑貨だ。


「いらっしゃい。おや、珍しいネ。若い客アル」


店主がにこやかに話し掛けてくる。

なんか見るからに怪しい風貌だ。

前世の記憶にあるエセ中国人っぽい。語尾もアルだし。


「こ、こんばんは。ここは?」

「ゴミ山の店アルネ」

「は? ダンジョンの?」

「これは色々なところから集めたゴミの山アルネ。この店はこのゴミ山からお宝をゲットできるかも知れない。そういうお店アルネ」

「……なるほど……」

「ふぅーん」


ちょっとだけミネハさんが興味をもったみたいだ。


「1回たったの1000オーロアル。挑戦してみるアル?」

「それってゴミひとつが1000オーロってこと?」


ミネハさんがジト目で聞く。


「そうとも言うアル」

「……ギャンブルすぎるでしょ」


馬鹿馬鹿しいと付け加える。


「あっ挑戦します」

「ちょっとウォフ!?」

「毎度ありアルー」


僕は店主に1000オーロを払う。


「ちょっとなにやってんのよっ!」


僕はゴミ山を回る。えーと、あれか。


「光があったんです」

「それって青い光? こんなところに?」

「ちょっと違うんです。青黄色の光だったんです」

「は? 青で黄色?」

「はい。初めて見ました」


僕は話しながらゴミ山を登っていく。


「どういうことよ」

「分からないですけど気になったんです」


【危機判別】を使いながら慎重に選んで登る。

ミネハさんは僕のジャケットの襟首に掴まっていた。


危なげなく、ゴミ山の中腹———青黄色い光の元に辿り着く。

そこにあったのは……真っ黒で細長くて四角い……なんだろう。


四つの黒い長方形に細長い板みたいなのが何枚も複雑に重なった形状だ。

そして真ん中がぽっかりと丸く空いていた。


ここって柄の部分だよな。

それが無いってスピアーなのかこれ?


真ん中には何か模様が描かれているがよく見えない。

斜めにゴミ山に突き刺さっていた。


「……何?」

「スピアーみたいです……」

「いや絶対に違うでしょ」


ミネハさんの冷めた瞳と言葉が僕に突き刺さる。

えーと……と、とりあえず。


「買ったんで回収します」


僕は重そうに引き抜いて、あれ、見た目より軽い。

先端はさすがに尖っていると思ったが、ボールペンみたいな形状で折れていた。


先端までもこうか。本当にスピアーかこれ?

ま、まぁ折角1000オーロで買ったんだ。ポーチに仕舞う。


「馬鹿みたい。そんなガラクタ」


ミネハさんは落胆して悪態をつく。

僕は何も言えなかった。ゴミ山を下りて店主の元へ。


「良いモノは見つかったアルか?」

「ええ、まぁ」


曖昧に笑う。店主は良かった良かったアルと喜んでくれた。

ミネハさんは何も言わなかった。


「どうします?」

「……どうでもいいわよ」

「じゃあ戻りましょうか」


外縁部から下層へ。

そこから中層へ戻る途中。


「あっ、ウォフさん」

「おっ、ウォフさん」

「わっ、ウォフさん」


異口同音に僕の名前を呼んだのは『ケルベロスターン』の3人組だった。

クレープみたいなのを手に持って食べ歩きしている。

いいな。あれどこで売っているんだろう。



















VIPエリア・移動宮殿。

???ルーム。


「ふう。無事に侵入できたべ。それでここだべか」


オラは指定された場所に隠れただ。

ちょっと狭いけど仕方ないだ。


「…………」


愛用のハルバードを握り締める。

あいつが来たらバッサリ斬るべ。

そうしたら……ルマは今度こそ幸せになれるだ。


お? 誰か入ってきたべか? なんだべあの肌色オークっぽい男。

あっ!? ひょっとしてバァロウ? はえぇ……随分と変わっただな。


あんなんじゃ討伐者は無理だべ。

ジンリュウ家は討伐者の家系。討伐者で成り上がった武闘派だ。

それなのに次期頭首があんなんじゃ、どっちにしろ終わってたんだべな。


さあ……今ひとり。チャンスだ。

ん? ドアのノック? 


誰か入ってきたベ。

ナ!? 鏡の顔? えっ、そいつがバァロウを刺して、バァロウが倒れた。

鏡の顔の男は立ち去っただ。な、なんだったんだべ。


「……どうなってんべ?」


わけがわからない。オラが殺そうとしたバァロウが誰かに殺された。

これで良かったんべか?

む? また誰か来たべ。


「おやおや、おや、これはこれは、また珍しい死体と剣だねえ」


え……あんひとは……!?

あっ、死体を回収しただ。鼻歌交じりで出て行った……べ。


「………………」


いったい何が起きてんだ?

オラは少し呆然として、それから部屋を出ただ。

ルマはどこにいるんだべか。






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