貿易都市ハイゼン⑬・青い光。
帰るとホッスさんが居たから、ルマさんの言葉を伝えた。
ホッスさんは小さく「わかっただ」と言って夕飯の準備をする。
夕飯の後、ホッスさんはちょっと用があると言って家を出た。
そしてそのまま深夜になっても帰って来なかった。
次の日。
ホッスさんは帰ってきていなかった。
アンナクロイツェンさんとミネハさんが朝食をつくる。
ホッスさん。心配だけど、ホッスさんだから大丈夫だろう。
出て行ったままなのは、たぶんルマさんの事があると思う。
事情は分からない。
どう踏み込んでいいのかも分からない。
だから、もしホッスさんがどうしても困って助けを求めたら。
僕は全力で助けることは決めている。
「ごちそうさまでした」
「ナ!」
「それではまたダガア嬢をお借りしますぞ」
「ナ!」
何故か居るギムネマさんの肩にダガアが乗る。
なにをしているのやら、ただ安全面では心配してない。
ただ別の意味で心配にはなる。
だって組み合わせからいい感じまったくしないし。
「ウチもついていっていいっスか?」
ビッドさんがギムネマさんたちに言う。
ギムネマさんたちは断らず了承した。
ビッドさんも何をしているのか気になったみたいだ。
何か分かったら教えてもらおう。
アンナクロイツェンさんとミネハさんは片付け。
シャルディナは掃除。まだまだ掃除しないといけないところは沢山あるデス。
そう彼女は張り切っていた。
僕と魔女、片付けが終わったミネハさんは地下のゴミ場へ。
「はいはい。新しく調整した薬だねえ」
魔女から薬瓶を貰って、1錠だけ飲む。
錠剤なので水筒・三日月の器のお茶で流し込む。
「ミネハさん。何かお題をください」
「アタシ? そうね…………指輪ってどう?」
「ほうほう」
「指輪ですね」
【フォーチューンの輪】を使用して指輪を思い浮かべる。
ゴミ場の所々に緑色の光が現れる。黄色の光もまばらにある。
「さてさて、どうかねえ」
「けっこうありますね」
僕はすぐ傍の緑の光を出す指輪を拾った。
小さな青い宝石が付いた赤色の指輪だ。
「ねえ、思ったんだけど。これってさ。アリファみたいな【鑑定】持ちがいないと価値がよく分からない気がするんだけど」
ミネハさんがそれに気付いてしまった。
魔女と僕は視線を交わす。
「まぁまぁ、それがなんなのか分からないのは確かに不便だけどねえ。今はウォフ少年が価値を分かればそれでいいんだねえ。それでどうかねえ」
「区別はついていると思います。ミネハさん。指示しますから、いくつか拾ってくれますか?」
「いいけど」
緑色の光を4つと黄色の光ひとつの指輪を拾ってきてもらった。
「ふむふむ。これは骨の指輪だねえ」
不気味な指輪を楽しそうに持っている魔女。
ミネハさんは黄色い光の指輪を興味深そうに眺めている。
「これ絶対、結婚指輪。だって裏に名前とメッセージが彫ってある。エリックからエリーンに愛を込めて。だって」
ああ、フラグ立ててしまったか。
合掌。
「うんうん。全部、指輪だったねえ」
「そうね。言われたのは全て指輪だったわ」
「成功……でいいんでしょうか?」
「うむうむ。コンにはそう思えるねえ」
「何か不満なの?」
ミネハさんに言われて僕はうーんと悩む。
いや不満……なのか。
だけど、何に不満なんだ?
なんだ。なにか、そうだ。僕はゴミ場を眺めた。凝視する。
最初からこのゴミ場は……変だ。
そう変なんだ。最初から何がかオカシイ。
だけどでも何がおかしいのか分からない。
ゴールドイーターが潜んでいたからか。
確かに今までのゴミ場にはいなかった。でもそうじゃない。
ひょっとしたら何もないかも知れない。
いいや。何も無いわけじゃない。なにかある。
分からないのは、《《今の僕では解らないからだ》》。
僕は魔女から渡された小瓶を見る。
薬が7錠、入っている。
「魔女。この薬はレリックの感度をあげるんですよね。レリックの効果を増幅させるんですよね」
「おやおや、どうしたんだい。確かにレリックに作用する。特に効果を発揮するように調整しているねえ」
「……ウォフ?」
僕は薬瓶をジッとみつめる。
後で絶対に叱られるだろうな。
自嘲して7つの錠剤を一気に飲み、水筒・三日月の器を口にする。
「えっえっ、ウォフ少年!?」
「ウォフ!?」
「……——————っ!?」
なんだ。なにか割れる。透明の触れない壁が盛大に砕け散る。
頭の中が軽くなった気がした。
いいや心だ。分厚い何かで覆われていたのが全て無くなった。
覆われていたことに無くなってから気付いた。
覚醒しても知らなかった。
自分は今までずっと狭い世界で生きてきたんだ。
だけどそれでも生きていけることも知る。
でも知らなくていいなんて言わない。
知ったほうがいい。そうか。これが成長なんだ。
覚醒とは違う。成長なんだ。
【フォーチューンの輪】が【フォーチューンの円環】に進化する。
【フォーチューンの円環】:真に価値があり隠されている全てを表わす。
緑の光はレア。黄色はスーパーレア。
青は滅多に無いスーパーウルトラレア。
紫はありえないアルティメットレア。
更に所有者にとって価値があるモノへと導く。
また自由に選択して表すことができる。
「………………………」
呆然とする。
いや、その、なんだ。なにが、どうなって、どうなんだ。
いったい。なんなんだ。なにが起きているんだ。
僕はレリックと―――目の前の光景がとても信じられなかった。
だが事実としてそうなっている。
信じたくないが幻想じゃない。
僕の眼前に———青い光が無数に瞬いていた。
ひとつじゃない。
無数にだ。
これが、このハイゼンのゴミ場の真の姿か。
「なんだ?」
あの青い光……似ている。
似ている……似ているんだ。僕は無意識に走り出した。
「ウォフっ!?」
「こらこら、いったいどうしたんだねえ?」
似ているんだ。あの青い光。とてもよく似ている。似ていて似ている。
ゴミ山の中腹。この奥か。【バニッシュ】で削っていく。
分かる。分かるぞ。青い光の位置。それがどのくらいか。
【フォーチューンの円環】が感覚的に教えてくれる。
「これだっ! 見つけたっっ!」
埋まっていた青い光を放つ箱を掘り出す。赤い木箱だ。
木箱……表面に雄々しく翼を広げる鳥の絵が描かれている。
なんとなく燃えあがる炎みたいな描かれ方だ。
燃えあがる炎の鳥?
「立派な箱ね」
「ふむふむ。木箱に見えてそうじゃないねえ。これは金属だねえ。それでこの箱がどうしたのかねえ」
「光が似ていたんです」
「似ていたってなにが?」
僕は答えと箱を開ける。
全員の視線が釘付けになり、息を呑む。
箱の中には大事に卵が入っていた。
いいやこれは完璧な卵型のケースだ。
「エリクサーの神聖卵にです」
表面に金色で古代文字が彫られている。
それにはこう刻まれていた。
フェニックスの蘇生卵。
ハイヤーンの三つのたまごのひとつだ。




