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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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296/312

貿易都市ハイゼン⑪・ゴウロ討伐隊のアラヤ。

エルフの青年だった。

金髪で深い緑の瞳。右目に片眼鏡を着けている。

エルフだからとうぜん美形だ。それも線の細い印象を受ける美青年だ。


服装は白い上着に黒いズボン。格式高い感じはあるけど、普通の格好。

武装もしていない。細い紐みたいなベルトにはポーチがあった。


「アラヤさんっ、助けてください! こいつらが急に襲ってきて!」

「襲ってきたのはそっちっス!」


往生際の悪い大柄の男にムッとするビッドさん。

助けを求められると、アラヤと呼ばれたエルフの青年は溜息混じりに言った。


「どういうことかな」

「どうもこうもないっスね。なんっスかこいつら」


ビッドさんがイライラとアラヤを軽く睨む。


「ゴウロ討伐隊だ」

「それは聞いたっス」

「彼等がメンバーなのは間違いないですか」

「間違いではない」


嘘じゃなかったんだな。

僕は呆れたように尋ねる。


「ゴウロ討伐隊って盗賊団ですか」

「違う。討伐者のクランだ」

「妙ですね。彼は僕に金も装備も女も」

「嘘だぁっっ!! そんなこと俺は言っ」


大柄の男は黙った。ビッドさんが彼の首に刃を立てたからだ。

首筋から血が垂れる。


「黙るっスよ……」

「ぐっ」

「続けてもいいですか」

「ああ、どうぞ」


仲間が命の危機に瀕しているのに彼は咎めようともしなかった。


「彼は僕に金も装備も女も家も差し出せと言いました。拒否した結果がこれです」

「……家とは?」

「叔父の家です」

「ふむ」


アラヤは片眼鏡をクイっとあげた。

ビッドさんが冷たく言う。


「それでゴウロ討伐隊は魔女とやりあうつもりっスか」

「魔女? あの魔女か。来ているのは知っている」


その可能性は実は考えていた。

やっぱり把握されていたんだな。


「ええ、僕は魔女の弟子です」

「ふむ。ならばウォフ?」

「そうです」

「……証拠は?」


アラヤの瞳に疑惑の光が宿る。2メートルとか思っているんだろうなあ。

僕は堂々と言った。


「本拠地を教えてもらえますか。明日でも魔女と一緒にそちらへ挨拶に伺います」

「…………ああ、いや結構だ。ゼンゼラ家と事を構えるつもりはない。もちろん。魔女とも敵対するつもりは全くない」


ゼンゼラ? 三大家の?

どういうことだろう。


「それではどうしますか」

「そうだな。【カット】」


突然、大柄の男の身体に深い切り傷が入る。

レリックか。ビッドさんは飛び下がる。男は即死だった。


「……証拠隠滅ですか」


警戒する。アルヴェルドと同じ視線で使うタイプか。厄介だな。

『青聖の籠手』で反射できるか。するとアラヤは小さく首を振った。


「いいや。今回の件は全てザゴオの隊の独断だ。言っただろう。こちらはゼンゼラにも魔女にも敵対するつもりはない。妙な動きをしているとは思った。こいつらは本来、ハイゼン大森林の討伐補佐任務に付いているはずだ。こんなところに居るのはおかしい」

「その口ぶりだと偶然、通り掛かったわけじゃないっスね」


マークしていたってことか。


「すまなかった」


アラヤは頭を下げる。

その意外な姿勢に僕とビッドさんは面食らった。


「どういうことっスか」

「末端の末端とはいえ、我がクランが迷惑をかけた。お詫びというわけではないが、こいつらの装備と金は差し上げよう」


それで手打ちってことか。まあ別にいいけど。

装備か。僕は【フォーチューンの輪】を使った。何も反応が無い。


あっまだ使えないか。不便だな。

ビッドさんが僕に聞いてきた。


「どうするっス」

「お金だけでいいと思います」


ナイフは、もう一杯だから今回はいいや。


「そうっスね。じゃあ、うちらは金だけ貰うっス」

「それでは少し待て―――」


アラヤはパチっと指を鳴らす。

周辺から黒装束が数人ほどゾロゾロといきなり現れた。


「……!?」

「なんっスか!?」


数人の黒装束は無言でテキパキっと死体を片付けていく。

袋の中に入れていく。


彼等は前世の記憶でいう忍者みたいな恰好だ。

たぶん用途もそうなんだろう。

黒装束のひとりが彼等のお金を集めて僕に渡した。


「ど、どうも」

「……」


黒装束は用が済むと解散した。


「大事な時期だ。こちらとしてもあまり騒動を起こしたくはない」

「同感です」

「下っ端の下っ端でもちゃんと手綱を締めて欲しいっス」

「すまない。今後はこのような事が無いように引き締めよう」


それでは、これにて。そうアラヤは立ち去った。

僕たちは彼の背中が消えるまで睨み続けて警戒心を持ち続けた。


彼がいなくなってホッとする。もう東の市場に行く気分じゃ無くなった。

妙に疲れて腹が減ったので、ベルク食堂には行くことにした。


食堂に行く間、ビッドさんはずっと怒って愚痴ってばっかだった。

僕は黙って聞いて考える。


魔女の古い知り合いというのは、ゼンゼラ家のことなのか。

もしそうなら、この叔父さんからの手紙を届けられるかも知れない。


ベルク食堂に着く。

ドアを開けるとベルが鳴る。


「いらっしゃいませー」


レルさんの妹。サマーニヤさんが元気良く声を掛けた。

客はまばら。前よりは多いかな。座るのはテーブル席にしよう。


テーブル席に対面で座り、僕たちは注文する。

ビッドさんは香草焼き肉盛り定食。僕は5種のサンドイッチセット。


「ウォフくん。あんま食わないっスね」

「ビッドさんは食べるんですね」

「怒りのやけ喰いっス」


よっぽど頭にきているなあ。

少しでも怒りを鎮める為、ここは僕が奢りますという。


「あれ、ウォフさん?」


急に名前を呼ばれ、振り返る。

すぐ傍のテーブル席に居たのは、狼耳と尻尾をした黒髪の少年だ。


「ナベルさん?」


少年といっても僕より年上の16歳。


「ホントだ。ウォフさんだ」

「こんちはー」


緑髪の青年のコランさんが反応して、エルフの女性のプランシーさんが挨拶する。

間違いない。『ケルベロスターン』だ。


「お久しぶりです」

「ご無沙汰してます」


僕とナベルさんは、ほぼ同時に頭を下げた。


『ケルベロスターン』は第Ⅳ級探索者で3人組のパーティーだ。

ナベルさんがリーダーを務める。


彼等との縁は奇縁だ。

ハイドランジアのダンジョンで助けて、僕の噂をどうにかするように頼んだ。

しかしうまくいかず、失敗して僕の噂は膨れ上がった。


そしてついに噂を食べる魔物ヘルフトゥを呼び寄せてしまう。

あれを倒すのは苦労した。


「『ケルベロスターン』っスか?」

「ど、どうも。ビッドさん」

「あれ、ビッドさんだ」

「ウォフさんと一緒……?」


おやビッドさんとも知り合いだったのか。

同じ第Ⅳ級だからかな。


「3人とも、どうしたっスか」

「金を稼ぎにきましたっ!」


コランさんが勢いよく言う。

それにナベルさんが微苦笑した。


「ちょっと力試しに来ました」

「ああ、フォレストウェーブっスね」

「それとフルムーンバザーも体験してみたくて、ふたりもそうですか?」


プランシーさんが興味津々みたいな感じで尋ねる。


「まぁ、そんなところっス」

「ふたり、知り合いだったんだ」

「まぁ、色々とあったっス」

「僕達だけじゃなく、魔女やミネハさんやホッスさんも居ますよ」

「ホッスって、雷撃の牙の?」

「ミネハさんって確か母親が第Ⅰ級のフェアリアルで、色々と凄いっていう」

「魔女!? あの魔女がハイゼンに!?」


なんか驚かれているなぁ。

そういえば雷撃の牙も第Ⅳ級だったっけ。


ミネハさんは第Ⅲ級でしかも目立つからなあ。

魔女は……まあ、うん。はい。



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