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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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292/315

貿易都市ハイゼン⑦・いま明かされる隠れ家の全て。

ハイゼンの隠れ家は、ハイドランジアの棲み家より大きかった。

大体の造りは似ていた。外見はダミーで真ん中が入り口。


違うのは中庭と見張り塔が無いことか。

左右の四角い建物は2階からしか入ることが出来ない。


まずは右側の四角い黒の建物からだ。

等間隔で左側にドアが4つある。3階も合わせると8つも部屋があった。


部屋は全部同じ間取りで、ベッド。小さなテーブル。

クローゼット。小物棚とシンプルだ。小さな窓もある。


部屋数って叔父さんはこの隠れ家をどうしたかったんだ?


「部屋の掃除は終わっているデス。ベッドシーツは全て廃棄して交換しているデス。え? どこからベッドシーツを持ってきたかって? 『スキアー・コフィン・エレ』の予備を持ってきたデス。魔女の許可は取れているデス。それと、そのときに洗濯物をまとめて持って、この家の洗濯部屋の洗濯機に入れて洗っているデス」


実は『スキアー・コフィン・エレ』には欠点がひとつあった。

洗濯場が無い。これは僕も魔女も皆も気付くのが遅かった。


結局、洗濯は風呂場を使い、シャルディナとアンナクロイツェンが担当する。

洗い物はメイドの仕事と張り切っていた。


それにしてもこの家、自動洗濯機なんてあったんだ。

自動洗濯機はレジェンダリーだ。その値段も数千万とか億単位。

叔父さん。どこで手に入れたんだろう。


1階はリビングだ。大きな暖炉もあった。

奥は厨房になっている。家庭的ではなく本格的な店舗仕様だとか。

アンナクロイツェンさんが掃除して、綺麗になっている。


「元々あまり使っていなかったデス。だから汚れもあんまりなかったデス」


叔父さん。料理とかしなかったのか。

1階の裏にはドアがあって廊下になっている。


それは左の四角い青の建物に繋がっていた。

これでわざわざ2階へ上がる必要もない。


廊下の突き当りの壁にはトイレがあった。

トイレは洗い流しをするタイプで誰も使って無かった。


青の建物は2階が3つの空き部屋。3階が物置。

特に3階は広いスペースで倉庫になっていた。


空き部屋は隣と違ってベッドなどが何もない。

若干、こっちのほうが間取りは広い気がする。


1階は風呂場だ。洗濯場と脱衣所と風呂。

風呂は岩風呂で、なんと温泉だった。


実はハイゼン一帯は掘れば温泉が出る。

だからあちらこちらに格安の風呂屋があった。


「シャルディナもそうデスけど、風呂好き多いデス」


女性は皆そうなんじゃないか? 

叔父さんはどうだろう。ハイドランジアの棲み家には風呂は無かった。


だけど天然で湧く温泉があれば風呂場をつくるのは当然か。

そして真ん中の三階建ての細長い白い建物。入り口はここしかない。


この建物は吹き抜けになっていて2階は渡り廊下になっていた。

左右にドアがある。3階は屋上に続く通路で、ここから屋上に行ける。


屋上には何もない。ただフェンスでグルリと三つの建物の上を囲んでいた。

ただ眺めはとてもいい。まるで海のようなリーヴ湖の水平線を一望できる。


この建物には地下がある。

地下にはハイゼンのゴミ場だ。おそらくハイゼン大森林のゴミ場だろう。


とりあえず先に僕たちは部屋を決め、荷物を運び入れる。

僕の荷物の大半はナイフだ。河賊の戦利品はまだ精査していない。


「ウォフ。ちょっといい」

「なんですか」


ドアを開ける。

ミネハさんとビッドさんとシャルディナとアンナクロイツェンさん。勢ぞろいだ。

どうしたんだろう。


「うちら、今からお風呂に入るっス」

「温泉楽しみデス!」

「というわけだから覗いたら殺す」

「……!」

「覗きませんよ。僕は部屋で戦利品の餞別していますから」

「ああ、河賊のっスか」

「はい。色々と手に入ったんですよ」


僕が笑顔でワクワクして言うと、ミネハさんはジト目をする。


「……まるで子供ね」

「子供ですよ」


ちょっとムッとした。未成年ですよ。

ミネハさんも見た目はともかく子供なはずなんだが。


そんなやりとりをした後、女性陣は温泉へ行った。


「……そういえば」


椅子に座って思う。

ミネハさんと始めて出会ったとき、不可抗力で彼女の裸を見たことがある。

あのときも10歳とはとても考えられない魅惑な肉体だった。


だけど今のミネハさんはその何十倍も魅力的だ。

短期間でいったいなにがあったんだろう。


「考えてもしょうがないか。さて、戦利品を漁ろう」


どんなナイフがあるかワクワクする。

ナイフはいくつあってもいい。何本あってもいい。


10分後。


「酷いなあ」


ナイフの殆どがやや錆びていた。塩水の影響だ。

リーヴ湖はクラウディア海と繋がっていて海水が流れ込んでいる。

なのでリーヴ河も潮の香りがして釣れる魚も海の魚だ。


下流になれば淡水になるけど、リーヴ湖と河はほぼ海といってもいい。

それなら河賊じゃなくもう海賊では?


「手入れしてないからだなあ。ん?」


なんだこの箱。こんなの押収したっけ?

色褪せた小さな宝箱みたいだ。鍵が掛かっている。


「鍵なんて持ってないぞ」


ふう、しょうがない。指先を鍵穴に当てて【バニッシュ】で壊す。

箱が空いた。中に入っていたのは―――青い玉だ。


するとガタっとナイフベルトが動いた。


「なんだ?」


ナイフベルトを手にすると、カタカタカタっと異なる海のナイフが揺れていた。


「…………」


手にして鞘を抜く。

あっという間に3本の蛸の触手が青い玉を掴んで咀嚼するように絡み砕いた。


「おわっ! なになにっ?」


絡み砕くと青い玉が無くなった。そして触手は鞘を手にして自ら収まっていく。


「……えーと」


なんだったんだ? 好物だったのか。えっいや食べた? 吸収した?


「うーむ。わからん」


分からないからまあいいや。

それに今更だよなと、僕は大人しくなった異なる海のナイフをベルトに仕舞う。


「さて続けるか」


再び戦利品のナイフを選別する。

ダメなのは片っ端から【バニッシュ】だ。6本ぐらいかな。

おお、これ凄い。髑髏型のシールドガードが付いている。


小さく精巧な頭蓋骨……本物じゃないよな。

触る質感とか木でもなく石でもなく骨独特の……本物じゃないよな?


それと普通こういうの。カトラスに付いているんじゃないのか。

前世の記憶の海賊映画で見たことがある。


黒い鞘から抜く。両刃で分厚く鈍い色をしていた。見た感じだと普通かな。

切れ味も普通だ。変なナイフだけど面白い。保留。


コンコンとドアがノックされる。


「どうぞ」

「アタシたち上がったから、次はあんた入りなさい」


湯気を僅かに出したミネハさんが部屋に入りながら言う。


「分かりました」

「それで何か面白いのあったの?」


聞きながらミネハさんは僕のベッドに座った。

温泉の熱で火照っているのか頬が薄っすらと上気している。

頭にタオルを巻いた薄着姿だ。拭いたばかりなのか、湿っている感じがした。


「これかな」


僕は髑髏型のシールドガードのナイフを見せた。

ミネハさんは、なんだか悪趣味ねと顔を顰める。


「本物の髑髏じゃないよ」

「本物に見えるけど」

「……本物じゃないはず」


段々と自信が無くなり本物に思えてきた。とりあえず保留。

後は折り畳み式のナイフやソードブレイカーを見せる。


「ねえ、なんか変なナイフ持っていたよね」

「変な?」

「触手の出るって言っていいのか。そういうナイフ。あのとき(ヴィヌ)もそうだし、河賊のときも見たんだけど」

「あー、これですね」


僕は異なる海のナイフを掲げる。


「それ、どうしたの」

「貰ったんです。御礼として」


ふとアガロさんたちは何か貰ったのだろうか。

サハギンを倒したのは僕だけじゃない。


僕だけが貰ったというのは考え難い。

3人は何を貰ったんだろう。


ただこれだけは分かる。

僕がナイフならアガロさんは酒だ。間違いない。


他のふたりは分からない。

ジューシイさんは骨とか? いや犬じゃないんだから。

ナーシセスさんは……まったく分からない。


「御礼に貰うモノとしては、なんだか気味が悪いんだけど」

「でも便利ですよ」

「アタシは生理的に無理」


ミネハさんは拒絶する。まあ気持ちは分かる。

だけど僕は前世の記憶にあるゲームで触手武器はよく使っていた。


敵を突き飛ばしたり、敵を捕らえて絞り殺したり、障害物を破壊したり。

結構使いやすかった。

その後も戦利品をミネハさんとあれこれ言いながら選別していく。


「錆びたヤツ多いわね」

「手入れを全くしてないからですね」

「ウォフはしているの?」

「1日1回、状態を見て油を塗ったり研ぎ石で軽く研いだりはしていますよ」


ただエリクサーナイフになったククリナイフは、そういう手入れいらないんだよな。

あと異なる海のナイフも。それとダガアもか。アガロさんのナイフ改もそうだった。


「ちゃんとしているのね」

「ミネハさんも武器の手入れはしているんですか」

「……前はやっていたけど、今の『妖星現槍』は自動洗浄機能が付いていて、勝手に綺麗になっていくの」

「へえー、それは楽ですね」


さすがあのラボ製だ。

ラボといえばエロ兎。あのハイヤーン。今頃なにしてんだろう。

どうせセクハラして吊るされているんだろう。


「そうなんだけど、あっ鎧の手入れはしているわ。ただ鎧……最近キツいのよね」

「…………」

「なにその沈黙。別に太っ……ってないはずだけど、もういいわ。だから鎧も新しいのにしようと思っているの」

「それもひょっとしてフルムーンバザーで?」

「ええ。良いモノがあったら、もちろんね。ただ……あの鎧は父の形見だから、そう簡単に割り切れなくてね」


ミネハさんのお父さん。名前は知らないけど、確かに普遍人族だ。

かつてルリハさんと魔女のパーティーメンバーで、武器や防具の整備を担当。


また修復や製造もしていて……とても優秀なマイスターだった。

惜しい人物を亡くしたと魔女が前に言っていた。


「そうだったんですか」

「あっ、思い出した。アタシの鎧。伸縮自在ってお母さんが言っていたの」

「伸び縮みするんですか」

「うん。だからサイズ合わせできるって、だけどそんな感じしないんだけど?」

「うーん……そうだ。それなら魔女に相談してみてはどうですか」

「魔女に?」

「彼女はミネハさんのお父さんの元パーティーメンバーです。鎧について何か知っているかも知れません」


ミネハさんは少し考える。


「そうね。癪だけど聞いてみるわ」

「魔女のこと嫌いなんですか」


前から思っていた疑問を尋ねてみた。

ミネハさんは複雑そうな表情をする。


「嫌いじゃないけど苦手みたいなのはあるわ。ほら師匠に近いから」


師匠大好きっ子だったとは思えないほどドライな反応と態度。


「えと……エミーさんと和解したんですよね?」


ミネハさんは素っ気なく言った。


「表向きはね」

「……」

「そう簡単に割り切れないわよ。大人じゃないんだし」


ミネハさんは僕のベッドに寝転がった。

なんともいえない気分になる。




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