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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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288/312

貿易都市ハイゼン③・そこに潜みしモノ。

急いで駆けつける。

ふたりは無事で、その手にはそれぞれ異なる剣を握っていた。


「大丈夫ですかっ?」

「シャルディナは平気デス」

「オラも無事だ」


ふう。良かった。しかし崩れるなんて、そんな死ぬような危険性じゃなかった。

ただし【危機判別】は危険予知じゃない。あくまでも危機があるかないかの判別だ。


「……」


アンナクロイツェンさんもホッとする。

ミネハさん達も駆けつけて合流する瞬間、崩れたゴミ山の中から何かが飛び出した。


「危ねっス!」

「きゃっっ」


咄嗟にビッドさんがミネハさんを抱えて後ろに飛び避けた。

なんだ。何が起きた。


「うわっ……え?」


飛び出したのは灰色の大きなウネウネと蠢く……触手だった。

ゴミ山を更に崩し、僕たちは避難する。


「なによあれ」

「魔物っスか!?」

「魔物?」


ゴミ場に魔物なんて……いや、あったな。

ミミックのパペットBOXの凄惨さは無かったことになっても今も忘れられない。


「ほおほお、あれは見覚えがあるねえ。ゴールドイーターだねえ」


さすが魔女。ゴールドイーター?

それよりゴミ山の奥の反応はこいつだったのか。


「聞いたことがあるべ。財宝に潜むダンジョンの魔物だ」

「あれがそうっスか」


財宝の中に?

なんだそれミミックの親類か。


「そうそう。宝の山に不用意に近付くと触手で女だけを捕らえる魔物だねえ」

「そ、そんなのが居るんですか」


ん? 女だけ?


「うむうむ。いるんだねえ。財宝の間には魔物がいない……そんな常識を嘲笑うトラップの魔物だねえ」


戦慄した。財宝の間は安全だと言われている。

つまりセーフティエリアだ。しかしそこに潜む触手の魔物。


自然に住み着いたのか。それとも財宝を守る為に故意に放ったのか。

それにしても女性だけ触手で捕らえるって? 

ミネハさんがうんざりした感じで言う。


「捕らえてどうするのよ」

「さあさあ、そこまでしか知らないねえ」

「見たことがあるっスよね?」

「うんうん。見たことがあるだけだねえ」

「男性は……どうなるんだべ?」

「ふむふむ。聞いたところによると殺すらしいねえ」

「……」

「……」


思わず黙る僕とホッスさん。差が激しすぎる。


「色々と嫌な予感がするんだけど、魔女。あれの強さはどのくらいなの?」

「ふうむふうむ。そうだねえ。あれくらい育っていると黄金級中位ぐらいかねえ」

「そんなに?」

「もともと、財宝の間はダンジョンでもかなりの下層にあるからねえ。伝説では最下層の宝物庫で至宝級のゴールドイーターの目撃例もあるねえ」


至宝級とかそれもう―――とゴミ山が破裂した。

ゴミが崩れて中から無数の触手と不気味な赤い一つ目が露出する。

それは僕だけじゃないだろう。魔女を除く全員が武器を手にして構える。


僕も【バニッシュ】と『異なる海のナイフ』を装備する。

相手が触手なら、こっちも触手だ。あっいや待てよ。


僕は『異なる海のナイフ』をベルトに仕舞った。

代わりに『木閃』を手にする。木製の柄の槍だ。


普段は真ん中から分離し、後ろ腰のホルダーに仕舞っている。

この空間なら『木閃』が扱える。それに触手なら長い武器がいい。


ゴールドイーターは触手を伸ばしてきた。

僕は『木閃』で弾く。硬い。まるで石みたいだ。


「んがっ、硬過ぎるだ!」


ハルバードで切断しようとしたホッスさんも弾かれた。


「この硬さ。レリック【堅固】に似ているっス!」

「それってルピナスさんが持っているレリックか」


すると触手の1本がバチバチと放電し始めた。レリック【雷】だと。

更に警戒すると、シャルディナが触手に捕らえられた。


「きぁぁぅゃあっ!? な、なにするデス!?」

「シャルディナ!?」

「やあぁっ、なに、するっスかっっっ!」

「ビッドさん!?」


ビッドさんも触手に絡め取られた。


「アンナ。危ないっ! きゃうっっ」


アンナクロイツェンさんを助けようとして、ミネハさんの攻撃が弾かれる。


「おやおや、あれはレリック【反射】かねえ」

「【反射】っ?」


厄介な相手だ。特に【反射】は、【バニッシュ】も反射されるかもしれない。


「それよりふたりを助けないとっ!」

「そ、そうだべ」


ふたりは……シャルディナは別の触手に口を塞がれていた。


「んんんんううぅぅぅっっっ!?」


そして捕らえている触手がメイド服を脱がそうとしていた。

マジか。


一方、ビッドさんは1本の触手が彼女の身体を蛇みたいに絡まっていた。

手足も完全に縛られている。


「た、すけ、っス……!」


涙目で縋る視線を僕たちに向ける。


「こ、このぉっ、すけべ触手!!」


怒りのミネハさんの攻撃が【雷】の触手に炸裂する。

他の触手がミネハさんを拿捕しようと蠢いていたが、『星』を展開して防ぐ。


ホッスさんはアンナクロイツェンさんを守っていた。

そして何故か触手は魔女を襲おうとしなかった。あからさまに避けている。


とりあえず魔女は平気だ。ミネハさんもうまく攻防している。

シャルディナとビッドさんを助けよう。


それにしても捕らえているだけで服を脱がそうとしているのはアウトだけど。

それ以外に特に何かしようとしてないんだよな。


捕食するとかそういうのもない。

何がしたいんだこのゴールドイーター。


とにかく厄介な【反射】の触手を潰そう。

僕は【反射】の触手に向かっていく。


【反射】の触手は大理石のような色合いで一番太い。

ちょうどいい。新しいレリックのお披露目といこうか。


僕は【青ノ聖者】を発動させた。心が急激に静まっていく。

冷静に【反射】の触手の間合いに入る。


びくっと反応するように触手が蠢いて僕へスイングする。

男だと容赦ない攻撃を仕掛けてきた。殺る気満々だ。


今だ。スローモーを使用。頭の中で何かスイッチが入った感覚がして。


世界が……時空が―――遅く……な……る。

触手が……ゆっくり……ゆっくり……ゆっくりと……ノロく―――薙いでくる。

ひどく滑稽な動作に見えるが威力は本物だ。


このままだと僕に当たり致命傷になるだろう。

避けることも可能だが……あえて避けず―――両腕を揃えて待ち構える。


急にフッとスローが切れた。

触手が信じられない速度で勢いよく籠手に当たる。


だが本来襲ってくる強烈な衝撃も何もなく、ピタッと触手は止まった。

まるで時が停まったかのように籠手に当たったまま動かない。


「……?」


怪訝にすると触手からビシィィッッという怪音が聞こえた。

その瞬間、【反射】の触手に深く鋭い亀裂が入って、あっという間に砕けていく。

それは生物の触手が砕けるというより鉱物が割れて砕けるという感覚だった。


「んだ? 様子が変だべ」

「?」


てっきり悲鳴でもあがると思ったんだが、ゴールドイーターは何の反応もしない。

そればかりか。全ての触手もだらっと落ちて動かなくなった。


シャルディナとビッドさんは解放される。

うわあ。


「っ!……っ!」


アンナクロイツェンさんが慌ててシャルディナに駆け寄った。

気絶しているシャルディナは半裸だった。ウサギプリントのパンツが丸見えだ。


なんでウサギ? ビッドさんは無事だ。

ミネハさんに介抱されているがぐったりしていた。なんかピクピクしている。


とにかくふたりとも無事……で良かった。それにしても何が起きたんだ。

魔女がなんとゴールドイーターの顔に急接近した。


「危ないっ! 魔女!」

「ふむふむ。やっぱりねえ。これはもう死んでいるねえ」

「へ? 死んだ?」

「ほらほら、ここの瞳に亀裂があるねえ。【反射】の触手からのダメージが本体まで伝わり、それで倒したんだねえ。それにしても瞳は柔らかいんだねえ」


よく見ると砕けた【反射】の触手から亀裂が延々と伸びている。

それがゴールドイーターの顔面まで届いてしっかりと瞳を刻んでいた。


「……はぁ、酷い目にあったっス」

「だいじょうぶですか」

「ウチはなんとか。それよりウォフくん。いったい何をしたっスか」

「この籠手の新しい機能に【反射】があるんです」

「それは、とんでもないっスね。でもどうして向こうが砕けたっスか?」

「ふむふむ。ウォフ少年。何をしたのか説明してくれるかねえ」


皆の視線が僕に集まる。

小さく咳払いして。


「相手の【反射】に【反射】をぶつけたんです。その前にゴールドイーターは攻撃を仕掛けました。それを僕は籠手で【反射】したんです。たぶんゴールドイーターもその【反射】された攻撃を【反射】したと思います。それをまた籠手が【反射】して、次の【反射】をゴールドイーターは耐え切れなかった」

「それでああなったわけね」

「はい」


たぶん【反射】されていくうちに攻撃も倍化されていったと思う。

その倍化された【反射】にゴールドイーターは耐え切れなかった。


「威力が強過ぎたんだべ」

「……ですね」

「なんかよく分かんないっスけど、ウォフくんの籠手が凄いのは分かったっス」

「ふふん。ふふん。コンが改装したんだねえ」


ドヤ顔で小さく三つの尻尾を振る魔女。続けて。


「でもでも、そんなに籠手の特に魔宝晶は硬いはず無いんだけどねえ」


すると『青聖の籠手』の青く光る魔宝晶はキラリと誇らしげに光った。

まるで魔女の発言にドヤァァっっするように……僕は突っ込まないぞ。


「うぅっ……ウォフ様のすげえ硬いデス……」

「…………!」


いきなりシャルディナがそんなことを呻いた。

アンナクロイツェンさんが頬に両手をあててポッと顔を赤くする。


「……」

「…………」

「……」

「…………」


なんか皆、黙る。なにこの居たたまれない空気。

そこに更にシャルディナが畳み掛けた。


「うううぅっ、ウォフ様……そんな硬いの……ダメデスっ!」

「……っ!!」

「シャルディナぁぁっっ起きろぉっっ!!」


僕は絶叫した。


ああ、それと、ビッドさんとホッスさんが持っていた剣。

あれは目当ての剣じゃなかった。

ゴミ山が鳴動したので慌てて、とっさに近くにあった剣を手に取ったらしい。


それでもふたりの剣は緑の光だった。

武器としてしっかり扱えて、つまり売れる。


結局、黄色い光の剣は【フォーチューンの輪】を使ったが反応自体が無かった。

ゴミ山が崩れたとき、巻き込まれて折れたか破損したか。


ざんねん。





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