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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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287/312

貿易都市ハイゼン②・貿易都市ハイゼン最大の秘密。

僕にとってかつての日常であり、今はとても懐かしい光景が戻ってきた。

ダンジョンのゴミ場だ。


「…………」


つい二度見する。瞬きする。深呼吸を繰り返す。

間違いない。この空気。この光景。ダンジョンのゴミ場だ。


「…………」


僕はしばし言葉を失っていた。とんでもない。とんでもないぞこれは。

なんて、なんてモノを隠していたんだ。叔父さんっ!

あのひと、なんてことしてくれたんだ。


「はあ? ゴミ場っ!?」

「おやおや、おやおや、おや、これはこれは、またまた……とんでもないねえ……」

「なんっスか!? なんなんっスか!?」

「……ウソだべ。こんなところが……ハイゼンの秘密……とんでもねえだ」


皆も驚いている。あの魔女もぽかーんとしている。当然だ。

これを初めて見て顔色を変えないのはアルヴェルドぐらいじゃないか。


「いやはや、いやはや、ハイゼン平原やハイゼン大森林で死亡すると死体も装備も消えてしまう。それはまるでダンジョンのようだ。いいやダンジョンだ。それならゴミ場はどこかにあるはずだと、人生を賭けて探した者も珍しくないほど居たんだねえ。まさか生きてその場にコンがいるとはねえ」

「オラも探したことあるだ。まさかハイゼンの街中にあるなんて」

「うんうん。盲点だねえ。ベテランほど考えから外れていく答えだねえ」

「す、すみません。叔父さんが黙っていて」


僕は叔父に代わって謝った。


「いやいや、隠したのは正しいねえ」

「えっ、そうですか」

「んだば、オラもそう思うだ」

「アタシも隠して正解だと思うわ」


叔父さんに賛成する皆。


「……これはあまりに秘密が大き過ぎるっス。間違いなく貿易都市ハイゼンの最大の秘密っスよこれは。こんなもの公表したらハイゼンは崩壊するっス!」

「そんなに……」

「そうなんデス?」

「ウォフ。シャルディナ。考えてみなさい。三大家が何もしないと思う?」

「それは……」


そうだ。絶対に動く。


「三大家という絶妙なバランスが一気に崩れるだ。そればかりか外からも介入があるもかもだ。どっちにしろ。沢山の死人が出るべ」

「そうね」

「そうっスね」

「……」

「叔父さん…………」


そういうことも考えて黙っていたのか。


「ナ!」


ダガアがゴミ場の近くにある石の台座に登って叩く。あいつホント自由だな。

石の台座には書物があった。ボロボロでページが開いている。

これは日記か。開いているページはゴミ場を見つけたことが書いてあった。


『あーマジか。なんかあるのは分かっていたが、予想以上だ。さすが俺っていうかなんてものを見つけちまったんだ。やべーな。あーめんどくせえ。超めんどくせえよう。よし。こうしよう。見なかったことにしよう。こんなもん。セィラン嬢ちゃんにも誰にも言えやしねえ。というわけで封印。封鎖。後は知らん。知るか。見つけたもんに任せる。じゃあな』


「叔父さん……」


ひどい。あまりにもひどい投げっぱなしだ。でもそういうひとだった。

どこか肝心のところでいい加減だったこのひと。


皆も日記のページを読んで呆れたり笑ったりする。

結論としてこのゴミ場。


「黙っていたほうがいいわね」

「そうっスね」

「んだ。このままでいいべ」

「うんうん。黙ったまま、コンたちが活用しようねえ」

「お宝の山デス!」

「……」


魔女の言う通りだ。

このまま何も手を付けないっていうのは無い。

シャルディナの言う通りだ。お宝の山だ。


「そうだそうだ。ちょうどいいねえ。ウォフ少年。これを飲んで試してみよう」


魔女は薬の小瓶を取り出した。

そこからピンク色の錠剤をひとつ、僕に差し出す。

ミネハさんは察した。


「それって例の?」

「なんっスか」

「これはレリックの調整薬です。僕の【フォーチューンの輪】を調整して、全体的なレア度の表示をひとつに絞るんです」

「つまり、例えば剣だけのレア度を表示できるってことだべか?」

「はい。そうなります」

「薬でそういうこと出来るんっスか」

「まあまあ、色々方法はあるんだけど、コンはこの方法しか使えないからねえ。とりあえずウォフ少年。飲んで、そうだねえ。ホッスの言った。剣だけのレア度でやってみようかねえ」

「はい」


僕は薬を飲んで、【フォーチューンの輪】を使用した。

瞬間、うわってほど眩しい沢山の緑の光が僕を襲った。

思わず目をきつく閉じる。


「ウォフ。大丈夫っ?」

「ウォフくんっ?」

「デスっ?」

「……!」

「むむ。むむ。ウォフ少年どうしたのかねえ」

「なにがあっただ?」

「だ、大丈夫です。ただ緑があまりに多くて」


まるで光の海だ。

ゆっくりと目を開けていって、それから少しずつ慣れてきた。


ふう。それにしても……凄いな。これが手つかずのゴミ場か。

黄色の光も沢山だ。初めての景色に僕は動揺する。


「ウォフ。平気? できる?」

「は、はい。もう大丈夫です」

「まあまあ、無理はしないようにねえ。ではでは、ウォフ少年。剣だけを思い浮かべて意識を集中するんだねえ」

「はい! 剣……剣……剣」


剣をイメージして意識をそれに集中させる。

剣だ。剣だ。剣———ナイフより長くて切れるモノ。


僕が装備できない武器……すると緑の光の海が揺らいで消えた。

黄色の光も……ふたつだけ残って表示される。


「どうなの?」

「黄色のスーパーレアな点がふたつだけ……残っています」

「成功しているっスかね?」

「それ取りに行くデス!」

「その剣、オラが取ってくるだ。場所はどこだべ」

「シャルディナも行くデス! 場所を教えるデス」

「ちょっと待ったふたりとも!」


僕は【危機判別】を使う。ゴミ場は危険が多い。

それぞれ黄色の点の近くに赤い点はひとつ。黒は奥の方か。

全員の視線が僕に集中する。


「……えっと、周囲に危険があるので気を付けてください」

「危険が分かるレリックだべな。分かっただ」

「気を付けるデス」


僕はふたりに場所を教えると、意気揚々と向かうふたり。

アンナクロイツェンは心配だからかふたりに付いて行った。


魔女は薬の小瓶を思案顔で見つめて軽く振るうと仕舞う。

そしてすぐ近くのゴミ山から鞘に入ったままの剣を引っこ抜いて持ってきた。


柄に精巧な竜の彫り物がある剣だ。革の鞘も細かい傷はあるけど頑丈だ。

魔女が一気に引き抜くと、折れていない銀色の刀身が姿を現す。


「見事なものっスね」

「この輝きは銅じゃないわ。ひょっとして銀かしら、銀の剣?」

「ねえねえ、ウォフ少年。この剣のレア度は?」

「…………何も光っていないです」

「ふむふむ。一端、レリックを解除して再度、使用してみてごらんねえ」

「は、はい」


僕は解除して【フォーチューンの輪】を使う。すると剣は緑色に光った。


「さてさて、どうかねえ」

「緑です。あれでもさっき剣だけに集中したときは何も反応が無かった……」

「ふむふむ。つまり。まだまだ、調整が必要みたいだねえ」

「そうみたいですね」


僕と魔女は苦笑し合う。

ミネハさんは剣を眺めて小首を傾げる。


「緑って、こんな良い剣でもレア度は一番低いの?」

「銀の剣っスよ」

「ですね。低いです」


低いのは僕も疑問に思う。刀身が銀だけじゃない。鞘や柄の細工も見事だ。

青はまだしも黄色はいってもおかしくないと個人的には感じる。


「ふむふむ。なんでだろうねえ」


魔女はくるっと剣を回して見つめる。


「おやおや、おや、これはこれは、なるほどねえ」

「何か分かったの?」

「これはこれは、この剣。純銀の剣でも魔銀でもない。銀でコーティングされたおそらく鉄の剣だねえ。切っ先をよく見ると錆びている。コーティングが剥がれているんだねえ」

「つまり中身はボロボロってこと?」

「ああー、コーティングっスか。それって意味あるんっスかねえ?」

「うーむうーむ。戦いには殆ど向いて無いねえ。たぶんこの見栄を張っている剣は貴族あるいは……家紋がどこかに彫られていると思ったけれど……ふーむふーむ。おかしいねえ。どこにもないねえ。うーんうーん。そうだねえ。剣としては飾っておくぐらいの代物だねえ」


そう言って魔女は興味なさそうにゴミ山に捨てた。

ビッドさんが捨てられた剣を見て言う。


「一応、これ売れないっスか?」

「魔女。どうなの?」


売る気なのか。魔女は微苦笑を浮かべた。


「ううーんううーん。どうだろうねえ。なにせ銀コーティングの中身は錆び付いているからねえ。切ろうとしたらまず折れるねえ。それとコーティングした職人の腕は見事だけれど切っ先が剥がれているからバレるねえ」

「剥がした銀だけ売れませんか?」

「うーん。うーん。剥がした銀の量って実は大したことないからねえ」

「そうですか」

「それにそれに、剥がすのも難しいからねえ。それと確実にコーティング前より量は減るからねえ。労力に全く見合わないよ。まさにゴミだねえ」


魔女は柔和な苦笑いをする。

貼った銀箔を剥がすようなもんだから。そりゃ手間だけ掛かる。

そこでミネハさんが提案した。


「切っ先だけ塗りなおせば?」

「いやいや、コーティングの塗り直しはそう簡単じゃないねえ。塗り直すなら一度全部剥がして全体的に塗らないとムラや差異が出てしまう。かといって、そこまでしてもそれほどの価値はこれには無い。むしろコーティング代の方が高くつくねえ」

「じゃあ売れないっスね」

「そうなるわね……」


ミネハさんとビッドさんはガッカリする。売る気だったんだな。

しかもミネハさん切っ先だけ塗って売るって詐欺では?

そのときだ。派手な瓦解音が響き渡り、ゴミ山が崩れた。


「ホッスさんっ! シャルディナっ!?」


僕は弾かれるように向かった。




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