表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/284

探しモノ②


彼女は僕の持つ本を見る。


「なんじゃその本?」

「料理本です」

「ふむ。古いものじゃな。おぬし。料理するのか」

「自炊しないと生活できませんよ」

「ふむ? そういうものか。料理はルピナスがやっておるからのう」


ルピナス……たぶんあのエルフの美女だ。

へえー、料理するのか。

どことなく高貴な見た目だから想像つかない。


「目当てはこれじゃないんです」

「ふむ? なにが目当てじゃ?」

「薬草とか回復薬が詳しく載った図鑑や辞典です」

「ううむ。それはまたなんとも珍しいのを探しておるのう」

「やっぱり珍しいですか」

「本はその殆どが物語か詩じゃ」

「ああ確かに……でも実用的なんですよ」


薬草も回復薬も知っていて損はない。

むしろ探索者なら知って当然じゃないのか。


「便利そうじゃが、しかし用途が限られておるからのう」

「やっぱりあまり無いですか」

「それと得手不得手と需要と手間暇と予算じゃな」


要するに売れないというわけだ。

製本にも金が掛かる。その費用を賄えるほど売れるかどうか。


今の識字率の低さだと難しい。

現に料理本も色褪せていて、売れていない説得力がある。


「街に売っていると思いますか」

「難しい質問じゃのう」


彼女は微苦笑する。

その反応で僕は諦めたほうがいいのかと顔を暗くする。

でもやるだけやってみよう。諦めるのは早い。


「……他に本が売っているところを知っていますか?」

「ふむ。いくつかあるぞ。本の売り場は網羅しておるからのう」

「お願いします。情報料を払いますので教えてください」

「よいぞ。情報料はいらぬ」

「いいんですか」

「これくらいで金を手にするほど、わらわは困っておらん」


第Ⅲ級だから儲けてはいるんだろう。


「ではゆくぞ」

「えっと?」


一緒にという感じに僕は戸惑う。

彼女は笑った。


「口頭で教えて分かる場所とわからぬ場所があるのじゃ」

「なるほど。あっ、僕はウォフといいます」

「パキラじゃ」


こうして僕はパキラさんと行動することになった。

料理本は買った。



次の場所も雑貨屋だった。店の奥の隅にひっそりと本棚がある。

近付く者は僕達しかいなかった。


「ここも物語と詩ばかりですね」

「そうじゃのう」

「うーん」


旅行記も料理本もない。


「おぬし。物語や詩に興味ないのかのう」

「少しはありますよ」

「ほお、まったくではないのじゃな」

「そうですね」

「やっぱり冒険物や英雄譚かのう」

「そうですね……」


確かに英雄譚や騎士物や冒険譚や民話集は好きだ。

家にもいくつかある。


ただ前世の記憶にあるラノベとかと比べると……なんというか。

文法がないので好き勝手に書いている。


推敲されていないので圧倒的に読み辛い。

昔、読んだロシアのドフトエフスキーの『罪と罰』とかがそうだった。


それと言い回しが古臭い。物語の起伏が少ない。

変な終わり方をする。特に打ち切りみたいな感じが多い。


あと宗教色が強いのもきつい。プロパガンダ的なのもあるんだろう。

宗教は識字率が高いのか。だからまあいくつか読んでやめた。


特に詩はぜんぜん興味ない。あの感覚は分からない。

それと漫画が当然だが全く無い。


絵本もないから原型っぽいのもない。

イラストをどうにかするという概念もないのか。


でも壁画はあるんだよな。発想がそこまでいかないのか。

どちらかというと漫画ばっかり読んでいたから……なあ。


「…………」


それにしても、なんだろう。

最近の傾向は物語も詩も恋愛が多く感じる。

ここの本棚も20冊ぐらいの物語と詩が恋愛物だ。


それだけ売れるからあるんだろう。

恋愛物は手に取ったことはない。


そういうのは今の僕にはよくわからない。

今の僕じゃなくてもわからない。


「やはり無いのう」

「そうですね」

「では次じゃな」

「はい」


次は骨董屋だ。アリファさんの店じゃない。

あの店には本は置いていない。やはりここでも本棚は奥だ。


「料理本と旅行記があるのう」

「図鑑……」


武器図鑑。こんなものがあるのか。

分厚い。手にしてめくる。


「ほお。武器が色々と載っておるのう」


パキラが顔を近付ける。

猫耳がひょこひょこと動く。


「これはオーパーツみたいです」

「ふむふむ。面白いものじゃな」


確かに珍しい。でも探している本じゃないな。

僕は閉じて元の場所に収めた。


「買わんのか?」

「そんなにお金ありませんよ。パキラさんは?」

「面白いが、趣味じゃないのう。じゃが……」

「どうしたんです?」

「いやなんでも、無いのう。それらしいのも……む」

「どうしました」

「イポメア・ニルの朝景じゃ」

「?」

「詩集じゃよ。詩人イポメア・ニル。知らんかのう」

「あまりそういう方面は疎くて」

「200年前の詩人じゃ。エルフじゃから今も存命じゃな。もっとも彼女は夜景が有名じゃ」

「へえー……パキラさん。それ買うんですか」

「買わぬよ。詩は嗜む程度じゃ」

「よく買う本は物語ですか」

「そうじゃのう。それしか買っておらぬ」

「英雄譚とか冒険譚とか?」

「そうじゃのう」


素っ気ない返事ばかりだ。

あっ、そういえば僕が取ってあげた本は……恋愛物。

なるほど。女の子。


「……次に行きましょうか」

「うむ。じゃがその前に」


パキラさんは武器図鑑を手にした。


「買うんですか?」

「うむ」

「でも趣味じゃないって」

「ひょっとしたら役に立つかも知れんからのう」

「役に?」


パキラさんは武器図鑑を買った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ