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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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275/312

僕らの旅路:旅情編④・探索者騎士団と意外な繋がり。


当然だがあの時と違って彼女はしっかり服を着ている。

白のスカーフを巻いて緑色のチュニックを着て黒いスカートを穿いていた。


白く細いベルトには女の子らしい赤く可愛いポーチが付いている。

ベルトを通して後ろ腰で斜めに白い十字剣を佩いていた。


「なんかあの黒猫に似ているっス」

「そうですね」


似ているんじゃなく本人なんだよなあ。


「おやおや、さっきぶりだねえ。黒猫」

「魔女……状況を知りたくないので?」

「ハルス。話してくれるか」


ハルス。それが名前か。

ピアニーさんの言葉にハルスさんはコクリっと頷く。


「此方が偵察したところ敵のアジトらしき洞窟を発見したゆえ? それから更に色々と見て回ると魔女たちを発見したので? そのまま同行した模様」


魔女もそうだけど、これはまた輪をかけた変な喋り方だな。

しかも縛りが難しくない?


「おお、やっと根城を見つけたか」

「ただし此処からやや遠いので?」

「構わん。さっそく編成しよう」

「ふむふむ。ピアニー。敵について聞きたいねえ」

「いつものように探索者崩れの盗賊団だ。たた規模が違う。それと連中は『ドラゴン牙ロウ』と名乗っている」

「それって!?」

「とっくに壊滅したはずっス!」


まさかの『ドラゴン牙ロウ』に僕とビッドさんは驚いた。

ピアニーさんはビッドさんを見る。


「君は?」

「ビッドっス。『ドラゴン牙ロウ』の本部でウォフくんとムニエカと……あとひとり忘れたけど、それで壊滅させたっス」

「はい。無くなったはずです」


ピアニーさんは思案顔で頷く。

あとひとりはハイヤーンじゃなかったか。兎だから1匹だけど。


「なるほど。君たちだったか。確かに大本は無くなったのは知っている。だが、奴らは残党が多い。この国のあらゆるところに居るだろう」

「そんなに大きい組織だったんですか。『ドラゴン牙ロウ』」


単なる半グレみたいなのと思っていた。


「幅広く悪事を働いてましたゆえ?」

「後ろに貴族が控えていたのもある。今やっているのは残党狩りだ」


そういえば居たな、貴族。

全部暴露したから取り潰しになったっけ。

えーと確かなんとかスティールだったな。もう、うろ覚えだ。


「僕も手伝います」

「うんうん。コンも少なからず関係がある。微力ながら手伝おうかねえ」

「ウチも参加するっス。因縁あるっスから」


決まりだ。まさかの残党だけど無関係じゃない。


「ありがたい。助かる。特に気を付けないといけない厄介なのがふたり居てな」

「ふむふむ。それはなにかねえ」

「厄介ですか」

「ああ、まずネクロマンサーだ」


厳かにピアニーさんは言った。

ネクロマンサー?


「ほうほう。それは確かに厄介だねえ。あれは死体を戦力にするからねえ」

「アンデッドの方は戦ったことがあるっスけど」

「残念ながら人間だ。エルフでジョブ系統のレリックだ」

「実際にあるっスね」

「それと、もうひとりの厄介者がグリーズという男だ。残党のボスでもある。ネクロマンサーはそいつの右腕だ」

「グリーズ。どんなヤツっスか」

「顔に目立つ火傷跡がある大男だ。そいつ自身も火のレリックを扱う。しかも元第Ⅱ級探索者だった。『劫火』と呼ばれていた」

「……顔に……火傷」

「だがそいつらは最近、出て来ていない。おそらくアジトに潜んでいるんだろう」


ネクロマンサーと顔に火傷の大男。最近、見ていない。

なんだかこう最近どこかで―――あっ、まさか。確かめてみるか。


「ピアニーさん…………そのグリーズについては色々と調べたんですか」

「もちろん。分かる範囲の経歴は集めた」

「グリーズはハゲています?」

「そうだな。ハゲている」

「アガロさんと何か因縁あります?」

「……ある。『滅剣』のアガロが一度取り逃がしている。顔の火傷はそのとき、アガロが付けたものだ。どうしてそんなことを?」


じゃあ決まりだな。

まさかこんなところに繋がりがあるなんてな。

皆、不思議そうに僕を見ている。


「そのふたり。もう死んでいます」

「なんだと?」


ピアニーさんは眉根を寄せた。


「おやおや、おやおや、意外な展開だねえ」


魔女は楽しそうに、ハルスさんはジト目が深くなる。


「それは一体どういうことで?」

「どうしてっスか」


ビッドさんも目をぱちくりとさせる。

僕は皆に言葉を選んで答えた。


「詳しくはギルドの依頼で話せませんが、グリーズはゾンビになっていました」

「ゾンビ……倒したのか?」

「はい。グリーズはナーシセスさんが、ネクロマンサーはアガロさんが倒しました」


そのネクロマンサーはリッチになっていた。

人は死ねばアンデットになることがある。


だがそれはゾンビやスケルトンやグールだ。

稀にドラヴグルやデュラハンになることもある。


しかしアンデッドの王リッチは滅多なことでもならない。

ネクロマンサーがリッチになったのは『デス・アブストラクト』の影響だ。

だからその辺は黙っていることにした。


「ナーシセス……『ジェネラスの再来』であのエッダ六家のユートピア家の?」

「はい。依頼に参加しました」

「ほうほう。それはとても珍しいねえ」

「つまり第Ⅰ級がふたり参加した依頼ということでは?」

「そうなります」


ハルスさんが気付いて僕は頷いた。ビッドさんは豪華っスねと感嘆する。

ピアニーさんは若干、苦い表情を浮かべていた。予想だにしなかったのだろう。


「道理で姿を現さないわけだ」


呟いて息をつくピアニーさん。


「ですがこれで懸念材料は無くなりましたゆえ?」

「そうだな。後は残党を一掃するだけだ。貴重な情報、感謝する。ウォフ」


ピアニーさんは小さく頭を下げて僕に礼を言う。


「いえいえ、まさかこんなところに繋がりがあるとは思いませんでした」

「うんうん。だから人生面白いんだねえ」

「そうっスか…………?」


どこか渋い表情をするビッドさん。イヤーロップの兎耳をパタパタさせる。

パーティー解散したことでも思い出したのかな。

未だにソロを続けているからまだ心に残っているんだろう。


それから地図でアジトの場所を確認。僕たちが襲われた森の奥にある山だった。

そこで僕は気付く。


「この山々の向こう側って山なんですか」


まるで壁のように山々がずっと続いていて、その向こう側も山だらけだ。


「知らないのか。その向こう側は未だに不明だ。地図上では空白じゃなく山だらけにしてあるのは多い」

「不明領域っスね。地域によっては珍しいって話っスけど」

「もちろんもちろん。この地帯を埋めようとはしていたねえ。かつて、こういう地図の不明領域を埋めるので有名な探索者パーティーも居たよ。懐かしいねえ」

「『空白の旗』だったな。数々の不明領域を暴いて地図に書き込んでいった。リーダーは第Ⅰ級探索者の『空白領者』……名を確か。タブラ=ゲオー=グラピア」


でも今の第Ⅰ級には居ない。


「それでもここが何も描かれていないってことは」

「行って戻ってきた者が誰も居なかった。タブラもな」

「第Ⅰ級でも無理だったってことっスか」

「そうなりますゆえ?」

「…………」


たぶん。この不明領域にあの44階層に転移した廃墟都市があったと思う。

アジトの洞窟から向こう側に抜けられたのかも知れない。


だが疑問だ。第Ⅰ級でも無理だったのに、グリーズたちはどうして無事だったのか。

まあ最後はゾンビになったから無事というのも変だけど。


確認が終わり、ピアニーさんは再編成すると天幕を出る。

魔女とビッドさんは街へ繰り出した。

僕は『スキアー・コフィン・エレ』に戻ることにした。皆に話さないといけない。


「あのハルスさん」

「此方のことは気にしなくて良いゆえ?」

「はあ、分かりました」


何故か僕についてくるハルスさん。

長い尻尾をプラプラっと揺らして斜め後ろからついてくる。

ふいに。


「そなた。聞きたいことがあるのでは?」


そう聞かれてドキっとする。


「ありますけど、尋ねていいかは分からないです」


ことレリックに関してはそうだ。

ハルスさんは言った。


「黒猫に関して言えば此方でありますれば? 変身のレリックであるゆえ?」

「やっぱり……あ、あの風呂に関しては」

「事故では?」

「えっ、それでいいんですか」

「事故では?」

「は、はい。そうです」


妙な圧力があったので頷く。


「ならばそれで不問とするのが良いのでは?」

「そうですね」

「では、そういうことで不問としますゆえ?」


どうやら許してもらえるみたいだ。

そういえば。


「ハルスさんってパキラさんとは知り合いですか」


思い出した。前に前夜祭でパキラさんと話をしていた。

同じ猫人種だし友達だと思ったが。


「…………」


えっ、無視された。しかも空気が重い。


「あの」

「此方は急に用事を思い出したゆえ?」

「え」

「では?」


去って行った。どうやら地雷を踏んだみたいだ。

『スキアー・コフィン・エレ』に戻ってさっそく皆に伝えた。

伝え終わるとミネハさんは妙に気合が入っていた。

シャルディナもカトラスを抜いて『今宵のカトラナは血を求むのデス』とか呟く。

カトラナ……名前付けているのか。


しかしまさか悪党退治。それも『ドラゴン牙ロウ』の残党。

それだけじゃなく、ダンジョンの44階層のあの廃墟都市と関連がある。


普通の残党狩りで終わるよな?





















山麓の洞窟。

その奥。沢山の神殿のような円柱が立ち並ぶ空間。

その真ん中で、赤い不気味な仮面をつけたローブの男が叫ぶ。


「ふあっはははははは、ふあっははははははっっっっ!! ついにだ。ようやくだ」


赤い仮面の男の後ろには、一つ目の赤黒い巨大な何かが鎮座していた。

その赤い瞳は禍々しく魅了に輝いて、見る者の心を鷲掴む。


一見するとそれは狼に見えた。


だが脚は6本あり、背中から伸縮自在の鎖が生えている。

尻尾は四つに枝分かれして剣。槍。斧。ハンマーになっていた。


そして剣は燃えて、槍は凍って、斧は帯電して、ハンマーは硬くなっていた。

口は限界まで切り裂かれていて全ての牙が軽く振動している。

放り込まれたら欠片すら残らない。


赤い仮面の男は大きく両手を広げた。まるで抱擁するように狂喜する。


「さあ、目覚めよ。ヘルズガンユニット。アンヌウンゥゥっっ!!!」


そう呼ばれた赤黒い魔物は立ち上がると、目の前にある赤い仮面の男を食べた。

赤い仮面の男は悲鳴を上げる間もなく咀嚼されて魂も砕かれて何も無くなる。


『ヴヴヴヴヴヴヴヴヴォオオオォォォォ』


食べ終わると世にも奇妙に不気味な咆哮を放った。

するとアンヌウンの周囲から小さな黒犬が何十匹も地面から湧いて出てきた。


洞窟内と周辺に沢山いた二本足の虫を変化させた魔物だ。

そいつらが元々持っていたマイナスのエネルギーを弄って配下の魔物とした。


尻尾の先端が武器になっていて、赤い一つ目をしている。

もし目撃した者が居たならば、こう言うだろう。


地獄の軍団。






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