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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season4

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僕らの旅路:準備編⑤・セブン+α


次の日の夜。

『シードル亭』の2階VIPルーム。

そこに7人の男女が集まっていた。


いいや。正しくは2人の男と5人の女と1匹だ。


出発前日に行われる『出発会』だ。

全員の顔合わせと親睦が目的でキャラバンや護衛などで広く行われている。


料理と飲み物を注文して、それからミネハさんが口を開いた。


「見事に知り合いしかいないわね」

「そうっスね」

「ナ!」

「んだば、知り合いしかいないのは安心するだ」

「それはそうっスね」

「魔女。全員が知り合いデスか?」

「んーんー、そうみたいだねえ」


僕は疑問に思って口にする。


「知り合いなんですか?」


集まったメンバーは、7人。

まず僕ウォフ。魔女。ミネハさん。ビッドさん。ホッスさん。


それとシャルディナとアンナクロイツェンさんだ。

シャルディナたちは隠れ家の掃除担当らしい。


魔女たち5人が知り合いなのは分かる。

魔女の風呂場を使う縁で知り合ったと理解できる。


ただホッスさん。魔女。ミネハさん。ビッドさんは知り合いなのは知っている。

だけどシャルディナとアンナクロイツェンさんとは面識が無いはずだ。


「おやおや、ホッスとシャルディナたちは知り合いなのかねえ」


魔女が僕の疑問の代弁をしてくれた。

ミネハさん達もそういえばそうねと疑問に思った。


「知り合いデス。元々ウォフ様の交友関係で知っていましたデス」

「交友関係?」

「ムニエカ曰く、ご主人様の交友関係を知るのはメイドとして当然デス」

「当然なの?」


僕はこの世界のメイドというのはよく知らないから正かどうか分からない。

前世の記憶だと、ああ、でも『見て知って活用する』のはドラマであったなあ。


ビッドさんが首を横に振る。


「わからないっス」


ビッドさんはホーランドロップイヤーを振って答える。

彼女は獣人の兎人種だ。尻尾は丸く白い。

黒髪で青い瞳。鼻の上のソバカスを気にしている。

革製の籠手を右腕に装着してリヴから貰った青いジャンバーに黄色いシャツ。

黒いスパッツみたいなのを穿いていた。


魔女が口を開く。


「ふむふむ。ムニエカが言うことだからねえ」

「当然……なんですか」

「ナ?」

「…………」


目が合ったシャルディナの隣のアンナクロイツェンさんがニッコリと会釈する。

そうなのかな。そうなのかも。


あとなんでシャルディナがダガアを抱いているんだろう。

最近、ミノスドールとダガアの仲が良い。まあ別にいいけど。


「それとレルんところのタサンで仕えている関係で、ほらレルの妹。ジューシイの付き添いで、オラたち一緒に依頼を受けたこともあるんだ」


ホッスさんが補足する。


「ジューシイさん。時々『雷撃の牙』の雇い仔していると前に言ってましたね」

「うんだ。そんとき、メイドが必ずひとりかふたりは付いてくんべ」

「それで知り合いになりましたデス」

「なーるほどっスね。ジューシイちゃん可愛いっスよね。ウチもたまにジューシイちゃんと組むことあるっス」

「ナ!」


女性陣は幅広い交友関係築いているんだなぁ。


「そういえばジューシイさん。探索者になったんでしょうか?」

「その辺は聞いてないわね。ビッドは?」

「ウチも誕生日のプレゼントは渡したっスけど」

「レルからも聞いてないべ」

「ふむふむ。まだなっていないかも知れないねえ」

「ナ?」


なんでだろう。戻ったら本人に聞いてみるか。


「それにしても移動手段は巨馬車っスか」

「うんうん。そうだねえ。コンの『スキアー・コフィン・エレ』だねえ。完成したばかりだから試運転もかねての旅行だねえ」

「スキアー……」

「そうそう。まずは」


魔女が熱心にPRした。

その内容に僕を除く5人に衝撃を与える。


「個室だけじゃなくて風呂トイレに展望ルームに台所にダイニングがあるって、それどんな王侯貴族の巨馬車なのよ」


やや呆れるようにミネハさんがぼやく。

今のミネハさんはフェアリアル状態でビッドさんの肩に座っていた。

7人が座れるほど席が無かったからだ。


ビッドさんが感嘆の息と共に言う。


「キャラバンの巨馬車にも、さすがにお風呂は無いっスよ」


そうだなあ。でもトイレはあった。それは僕も知っている。


「展望ルームは興味あるデス!」

「…………」


シャルディナにアンナクロイツェンさんも笑顔で頷く。


「台所あるんべ?」


やっぱホッスさん。そこに食いつくんだ。


「うんうん。あるねえ。最新鋭のシステムキッチンだねえ」

「最新鋭……だべか」

「それとそれと各種調味料を揃えて食材も色々保管庫にもう既に入れてあるねえ」


キッチンの横に先頭部と最底部も一部使った細長い保管庫がある。

かなりの広さがあるから大量に入れられる。しかも保冷付き。


「はぁ~ほんに至れり尽くせりだべ……」


感心しきってちょっと夢見心地みたいになるホッスさん。


「それでそれで、調理とかはホッスに一任したいんだねえ。いいかねえ?」

「もちろんだべ。オラに任せろ!」


ホッスさんが胸をどんっと叩く。良い音だった。


「ホッス。アタシも手伝う」


ミネハさんがすかさず言う。


「ミネハが?」

「アタシも……色々あって……料理するようになったから」

「知ってるべ。んだば、お願いするべ」

「う、うん。よろしく」

「……」


アンナクロイツェンさんも手を挙げる。


「彼女も料理が好きデス」

「なら、よろしくべ」

「一緒にね」


アンナクロイツェンさんも満面の笑顔で頷く。

彼女の料理……どういうのか興味がある。


ちょうど注文した料理などがやってた。

皆で食べて飲んで喋って食べて、喋って食べて食べて。

そうした団欒の中で、本格的に何故か熱が入ったのが『部屋割り』だった。

『スキアー・コフィン・エレ』の部屋割りだ。


まず僕の部屋は魔女が最初、自分の寝室の横にしようとした。

2階奥の部屋だ。


それをミネハさんが阻止して6つの部屋の真ん中になった。

これは強制的だったが文句はない。


決まると僕の両隣の部屋が誰になるのかで揉めた。

それならとまず僕の希望でホッスさんが右隣になった。


では左隣は誰がなるか。こういうときはジャンケンだ。


女性陣のやたら熱いジャンケンが始まった。

勝者はすぐ決まった。アンナクロイツェンさんだ。独り勝ちである。

それからは熱が冷めたように淡々と決まっていく。


「……」


ペコリっとアンナクロイツェンが僕に頭を下げる。

少し恥ずかしそうな笑顔だ。


彼女との思い出はブレスレットを渡したときの頬のキス。

それに三つ編みの彼女は容姿モデルかムニエカさんだから似ているんたけど。


でもどこかずっとお姉さんっぽい。

あと本人にも誰にもいえないけど、なんでだろう。妙にエッチだ。


ミノスドールについてハイヤーンに聞いたことがある。

だけどあいつもよく分かってない感じだった。


ラボのデータベースのデータをそのまま使用。

ドールのベースモデルとしてムニエカさんを使った。


そしてムニエカさんの年齢を八等分にして8体のミノスドールが出来た。

それが彼女たちだ。


そのデータも一応読んだけど、なんか違うんだよな。

ハイヤーンも不思議がっていた。


ただ、データにはひとつだけ見過ごせない記述があった。


『魂の大海より魂を誘導させて憑依することにより魂の器と肉体が形成される』


気になっていたがよく分からなかった。

でもナイフの女神様の言葉で僕はひょっとしたらと考える。


彼女達は見た目だけがムニエカさんで魂はその海から持ってきたのかも知れない。

つまりミノスドールに魂を入れたら魂の器が出来て肉体が形成……どゆこと?

ミノスドールという身体があるのに肉体がつくられる?


うん。わかんない。


まあ、僕は本職じゃないから勝手に色々と考えるのが楽しいだけだ。

この世界は分からないことが多すぎる。


自分自身のことも分からない。前世の記憶の前世ってなに。

便利だけどなんなんだろう。


ただ最近思うことがある。

この世界はレリックが魔法の代わりだと思っていた。

そしてそれしかないと信じていた。


だけどそれでは説明がつかないことがある。

アクスさんの父親のエンスさんが見せた魂のチカラ。


それとつい最近の遺跡であったプラスとマイナスのエネルギー。

それによる世界が複数あること。


レリック以外の力がある。

いやそもそもレリック自体もそのチカラの一部なのかもしれない。


「ナ?」


ふとダガアが僕の肩にのってきた。そういえばコイツもなんなんだろう。

まったく分かっていない謎生物だ。まあいいけど。


何人かが酒が入って、カードゲームを始めた。

ダガアが参加して無双する。

なんなんだろうコイツ。まあいいけど。


こうして楽しい楽しい『出発会』は終わった。







翌日、出発の日。

二日酔いでほぼダウン。

明日に延期する。












その次の日の早朝。

ここは魔女の家から少し離れた開けた場所。

『スキアー・コフィン・エレ』はそこに置かれていた。


あまりに大きいのでハイドランジアに置くことが出来なかった。

それに何よりも目立つ。静かに出発したかった。

必要なモノだけを詰め込んだ、僕たちは貿易都市ハイゼンに出発―――の前に。


「魔女。これ、どうやって動かすの?」


『スキアー・コフィン・エレ』を見上げてミネハさんは言った。


「巨馬車専用の魔物馬も居ないっスよね」

「いやいや、キャラバン用でもこれを引っ張るのは難しいべ」

「そうっスね。どうするっスか。魔女」

「どうするんデス。魔女」

「……」

「ナ?」


どうするんだろう。僕たちの視線が魔女に注がれる。

魔女はポーチから水筒を取り出した。


楕円形の革袋に黄色い丸が際立つように描かれている。

あれは『満月の器』だ。


確かムーンウォーターシリーズだったか。

僕が持つ『三日月の器』と誰かが持っている『半月の器』と並ぶレジェンダリー。


魔女が先頭部の大きく凹んでいる部分に近付き、『満月の器』を傾ける。

すると何か真っ黒いモノが大量に出て来て地面に浸み込んでいく。


「魔女。なにをしているんですか」

「んーんー、見ていれば分かるねえ。出て来ておいでスキアー・ホース・エレ」


呼ぶと、浸み込んだ黒い地面から真っ黒い巨馬が2頭も現れた。

青黒い鬣に青い瞳をして、そして何よりも見上げるほど巨大だ。


「魔物なの?」

「わーお、これはまたすごいっスね」

「たまげたべ」

「とても強そうデス」

「ナ!」


魔女はその2頭に何か埋め込む。


「それじゃあそれじゃあ、出発しようかねえ。ほら入った入った」


魔女に促されて僕たちは乗り込む。

その間、魔女は2階に行った。気になった僕も2階へ。


御者室に魔女がいる。

伝達親石が浮いている台座に何かしている。


「魔女?」

「おやおや、ちょうどいいところ。調節が終わって今から動かすからねえ」


魔女はそう微笑むと伝達親石に向かって、唱えた。


『さあさあ、スキアー・ホース・エレ。ルート通りに出発するんだねえ』


『ヒイイィィーーーン』

『ブルルルゥゥゥ』


2頭のスキアー・ホース・エレはそれぞれ嘶く。

そして『スキアー・コフィン・エレ』が動き出した。


出発だ。

しばしの別れ。ハイドランジア。




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