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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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即席狼団Ⅱ⑥

43階の城の正反対にある祠が次の階下の入り口だ。

しかしそこを使って行けるのは45階。


44階は限られた者しか入ることが出来ない。

そしてその入り口は城の地下にあった。


「この扉だ」


地下2階の通路の奥まったところに鉄の扉があった。

アガロさんが鍵穴にあの鍵を差し込むと、重い音をたてて扉が開く。


暗い通路に光球を飛ばして明かりにする。

僕は【危機判別】を使う。敵は居ない。


「そんなに長い通路じゃないらしいぞ」

「そうなんですか」

「ああ、そして44階に降りたら、制御ルームっていう遺跡の中心部に着くらしい」

「そんなに近いんですか」

「おまえ。昇降機って知っているか」

「エレベーターですか」

「エレ? 昇降機だぞ」

「あ、ああ、はい。知っていますよ。なるほど。それで降りるんですね」

「そうだ。ただボタンがあるとかで」

「ありますね」

「こういうの苦手なんだよなあ」

「良かったら僕が操作しましょうか」

「マジか。悪いな」

「そういうの得意なんですよ」


ちらっと後ろを見る。


「ねえ。それずっと見ているわね」

「ナ?」

「青いリボン? そういえば昨日はしていなかったわ」

「あの、あのあの、あの、わん」

「なんで今吠えたの?」

「わふ?」


ダガアとナーシセスさんはさっきからジューシイさんに構っている。

ジューシイさんは何故かツヤツヤしていつも以上に元気な気がする。


よほどブレスレットが珍しいのか。まぁ色々と怪しいモノなのは確かだ。

地上に戻ったらあの露天商がまだ居るか一応探すことにしている。


ブレスレットを渡したら必ずキスされている。

いくら彼女達がお礼といってもそこまでするはずがない。


ブレスレットがレガシーかレジェンダリーか。何かあるに違いない。

違いないけれど害があるわけじゃない。


もし害があるなら【危機判別】がすぐさま反応している。

しかしブレスレットは赤くも黒くもならない。


だから感謝の証として渡すのは問題なさそうだ。

お礼にキスされるだけで。


なお最初はエンスさんとかに渡そうか思ったけど、もう女性にしかあげられない。

余るくらい買ったので、もう知り合いの女性全員に渡そうかなと思っている。

お礼にキスされるのも悪くない。そう悪くない。


そしてエレベーターの前に着いた。

ああ、間違いなくエレベーターだ。開閉ボタンを押す。


「うぉっ、開いた」

「中は狭いわ」

「全員、乗りましたか」

「あの、わん」

「なんで今吠えたの?」

「わふ?」

「ナ?」

「せめぇな」


全員乗ったな。よし。ドアを閉めて44階を押す。

他にも階はあるが、たぶん44階にしか反応しないだろう。

扉が閉まってエレベーターが動く。


すぐにきた。下降することによる独特な酔い。

妙な懐かしさを感じた。


「なに、ぐにぃーって気持ち悪いぃ……」

「あの、クラってします」


女性陣は弱いみたいだ。


「ナ?」

「おいおい。大丈夫か。ふたりとも」

「アガロさんは平気なんですね」

「まあな。おまえも平気そうだな」

「まあ」


チンっと古風的な鈴の音がして44階に着いた。














44階。

水の音が聞こえる。すぐ横に白い壁に黒いガラスドア。

ここが制御ルームだろう。ドアを開けると、広い部屋に台座があった。

僕は台座に立ってコンソールを操作する。


「どうだ?」

「エラー……異常は無いみたいですね」


これでハイドランジアの水は守られた。


「後はあいつらか」

「ねえ、宝の場所。行ってみましょっ!」

「そうだなぁ……」

「ウォフ。書き写していたわよね」

「ありますよ」


ポーチからメモを取り出す。

あっそうだ。メモリースティックを台座にセットする。


別のウィンドウが現れて地図が映し出された。

地図なのは分かるけど、判るけど、わかりづらい。


というかどこなのかよく分からない。

僕はコンソールを操作する。文字は読める。


『項目』から『設定』で、いや『検索』があるな。

これで『マップ』と『アヴスドラクドゥの遺跡』……おっ出た。

ここから出て……なんだろうこの……メモするか。


「しっかしウォフ。よくそんなの動かせるよな」

「魔女に習いました」

「なるほど」

「あの魔女。そんなことまで出来るのね」


わからん。でも出来るかも。


「あのあの、魔女は凄いです」

「ナ!」

「悔しいけど魔女は偉いわ」

「それはそう。あっ」

「どうした」

「一か所だけ水量が減っていたので調整しました」

「調整……すまねえな」

「これでよし」


改めて確認。他は特に変なところは無かった。

全ウインドウを閉じて台座から離れる。

アガロさんが眼帯を軽く掻いて言った。


「一応、この遺跡も探索しようと思う」

「別にいいわよ」

「あのあの、はい。探します!」

「わかりました」


僕たちは制御ルームを出て突き当りの階段を降りる。

降りた先ですぐ僕は【危機判別】をした。

赤い点が3つ出る。


「この先に敵です」


僕たちは武器を構える。

降りた先は複雑に通路があり合間に小部屋があった。


どれも黒いガラスドアで、いくつか通路と部屋が崩れている。

行った先の曲がり角にある部屋に赤い点が3つ。ウロウロしている。


敵がいるドアは堅く閉じられていた。

放っておいても良さそうだが、アガロさんはこの先に居るかも知れないと言った。


その可能性もあったので入ることにした。

ドアは破壊可能だ。アガロさんが壊して、全員で一気に入る。


そこに居たのは探索者のゾンビだった。

3人ともゾンビだ。


「マジか…………」


アガロさんはショックを受けたようにつぶやいた。

その様子で僕たちは察する。


ゾンビは捜索していた探索者たちだと。

ナーシセスさんが尋ねた。


「『滅剣』……どうするの」

「やるさ。このままにはしておけねえ」

「そうね」


アガロさんはフレイムタンを抜いた。


「悪い。ひとりでやらせてくれるか」


僕たちに反論は無かった。

アガロさんはフレイムタンに黒い炎を宿した。

ひとりずつ丁寧に滅却する。


それぞれ遺品となるモノと探索者タグを手にする。

アガロさんは呟いた。


「足りねえ」

「え?」

「『タルタロスの蓋』は5人だ。それに点検員を合わせて6人」

「3人足りないわね」

「あのあの、その3人は生きているかも知れません!」

「もしくは別の場所で……なっているかもな」

「アガロさん。行きましょう」

「ああ……」


アガロさんは意気消沈していた。

無理もない。知り合いがゾンビになっていたなんて。


アガロさんは僕以上にこういうことに慣れているだろう。

それでもショックはある。割り切れないこともある。


僕の前世の記憶にもそういうのが沢山あった。

親しい人がもしゾンビになったら……アガロさんみたいに出来るだろうか。


ここには【危機判別】に反応が無かったので次のフロアへ。

次のフロアも同じような造りになっていた。

【危機判別】をしたけど反応なし。


階段を降りる。

次のフロアもきっと同じだろう。そう思っていたが。


「水浸しじゃねえか」

「あのあの、臭いです!」

「変な臭いがするわね」

「ナ!」

「これは魚か」

「……」


【危機判別】を使う。赤い点が無数ある。


『ギョプギョパッッ!』

『ギョプラパギョパー!』

『ギョプギョプラーッ!!』

『ギョプゥーギョプギョプッ!!』


サハギンどもだ。僕たちに気付いたのか次から次へと集まってくる。

だけどまあ雑魚は雑魚だ。

何十匹。いいや何百匹集まっても負ける気がしない。


それに今のアガロさんは無敵だ。

あっと言う間にサハギンを残らず殲滅してこの遺跡から出る。


外から見える光景は青黒かった。

まず滝だ。ナイアガラのような瀑布があり、絶景だ。

その滝壺近くに町らしきモノが見えた。


おそらく廃墟だ。

それ以外は何もなくグルリと岩肌の青い壁が続いていた。

44階はそれだけ。


僕は【危機判別】と、【フォーチューンの輪】を併用した。

【フォーチューンの輪】を使ったのは、あの町を見たとき何か感じたからだ。


まず周囲に敵はいない。

もうひとつは―――息を呑んだ。


「っ!?」


戦慄する。

廃墟の町から黒く紫の光が立ち上っていた。




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