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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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モーリュ草⑧


魔女は水筒を置く。


「まずまず、この水筒は『三日月の器』という名前があるんだよねえ」

「三日月の器……ですか」


丸い水筒の中心には三日月がある。

最初はマークだと思ったけど、金属製だ。


ん? 三日月の器? 

どこかで聞いたことがあるような。


「さてさて、最初は浄水機能だねえ。入れた液体はどんな状態でも清らかになるねえ」


まずそれだけでも途轍もない気がする。


「他にもあるんですか。機能」

「うんうん。次は冷温機能だねえ」

「冷温!? 冷たくも温かくもできるんですかっ!」


す、凄まじ過ぎる。


「うんうん。しかし前から思っていたんだがねえ」

「なんですか」

「前々からウォフ少年。君は物分かり良すぎだねえ。君ぐらいの子供は冷温なんて意味が分からないし、ましてや機能といわれてもチンプンカンプンのプンだとコンは思うんだけどねえ」

「ま、まあ、勉強してますから」


まずい。あやしまれている。

前世の記憶が瞬時に理解してしまうからなあ。


「うむうむ。勤勉なのは悪くないねえ」

「探索者になりますから」

「そうかそうか。そうだったねえ。まあ君なら今でも探索者になれるだろうねえ」

「えっ、でも僕はまだ13歳ですよ」


14歳にならないと探索者になれない。

だが魔女は衝撃的な発言をした。


「ふむふむ。ウォフ少年は知らないのかねえ。此処じゃないが9歳で探索者になった子がいるんだよねえ」

「へっ9歳!?」


唖然とする。


「まあまあ、コンも詳しく知らないけど、特例で認められたらしいねえ」

「特例ってあるんですね。知らなかった」

「確か今は10歳になって第Ⅲ級探索者と聞いたねえ」

「……第Ⅲ級……!?」

「うんうん。天才ってやつだねえ」

「ビックリしました」

「にやにや、ウォフ少年もなれるんじゃないかねえ」

「僕はそういうのはいいです」

「おやおや、ウォフ少年はチャレンジしないのかねえ」

「そうやって目立つのは僕の生き方じゃないです」


街に戻って軽く聞けばもっと色々詳しく知ることが出来るだろう。

これほど目立つことはない。


僕は目立ちたくない。だからチャレンジなんてしない。

探索者になりたいのは生活の為だ。大抵の人間がそうだろう。


もちろん。早くなれるならなりたい。

ただし。多くの人間の奇異の目に晒されるほどなりたいわけじゃない。


それはあまりにハイリスクだ。


それにしても9歳で探索者か。

天才や神童だな。

まぁ出会うことなんてないだろうけど。


「そうかいそうかい。それじゃあ、冷温機能の説明に戻るねえ」

「はい。おねがいします」

「まずまず、この水筒に……ちょうどいいねえ」

「?」


魔女は青い液体を三日月の器に入れた。


「なにを?」

「まあまあ、入れたままだと、そうだねえ。これはぬるくなっているから、ぬるいままだねえ。でもねえ。ここを動かすとだねえ」


魔女は水筒の真ん中の金属製の三日月の飾りを摘まむ。

カチっと傾いた。


「動いた?」

「よしよし。ウォフ少年。飲んでみなねえ」

「え?」


いやいきなり飲めって、僕は不安そうにする。


「だいじょうぶだいじょうぶ」

「これは……なんです?」

「それはそれは飲めばわかるねえ」

「………………」

「おやおや、知りたくないのかねえ。三日月の器の秘密」


そう言われると気にはなる。

僕は迷ったが、えいっと勢いよく飲んだ。


「んぐっ、冷たい!? あっうま」


驚いたことに美味しい。爽やかな甘さだ。


「ふふ、ふふ、ポーションだよ」

「ポーション?」


まるでジュースみたいだ。

あれでも伝え聞くポーションは味が美味しくないとか。


「さて、ここに三日月の上に青・白・赤の玉があるよねえ」

「は、はい。あります」


三日月の器。丸い水筒の三日月の上に青と白と赤の玉が埋め込まれていた。

気付かなかった。


「それでそれで、冷温はここで調整するんだねえ。白い玉は平常。青い玉は冷たい。赤い玉は温かい。っとなっているんだねえ」

「そうすると今は三日月が青い玉に傾いているから、中のポーションは冷たくなっているんですか」

「うんうん。そうだねえ」


そこで僕はふと気になる。


「冷から温に変えるときの温度変化の時間はどのくらいかかりますか」

「おやおや、面白い質問だねえ。かからないねえ」

「一瞬で?」

「うんうん。そうだねえ」

「それって中の液体は大丈夫なんですか」


急激な温度変化は液体の成分に影響が大きいはずだ。


「ふむふむ。ウォフ少年は本当に面白いねえ。その辺の心配は無用だねえ」

「変化はないんですね。それと温度って一定なんですか」

「ほうほう。そこにも気付くんだねえ」


魔女は愉しそうに目を細める。


「色々と気になるお年頃なんです」

「うんうん。コンは今もそうだねえ。温度に関しては一定だねえ」

「そうですか」


さすがにその辺の調整は出来ないか。

冷温機能だけでも充分だ。これで終わりかなと思ったら。


「さてさて、次だねえ。ここが一番の機能だねえ」

「まだあるんですか」

「あるある。そればズバリ調合だねえ」

「……?」

「これこれ。水筒の横に小さな丸いツマミと数字があるのが分かるかねえ」

「……これ、ですか」


水筒の右横。丸いツマミと数字が縦に並んでいた。

『0』と『2』と『4』と『6』だ。

丸いツマミは0に合わせられている。


「まずまず、まだ残っているからコンが飲んじゃうねえ」


そう言って魔女は水筒の中身を飲み干す。


「あっ」

「おやおや、なにかねえ」

「いえ、なんでも」

「ではでは、このツマミを2に合わせてごらんねえ」


言われた通り2に合わせる。


「これでいいですか」

「うむうむ。そうだねえ。ウォフ少年。今からいいモノを見せてあげようねえ」

「いいもの?」


魔女はうんうん。少し待っているんだねえと言って部屋を出た。

本当に少しだけ待っていると戻ってきた。

その手には二枚の葉があった。


「まずまず、このふたつを液体にするねえ」


空のフラスコにそれぞれ入れて、赤い液体を入れる。


「それは?」

「これこれ、触媒液だねえ。ちなみに二枚の葉は薬草で、別に触媒液を使わなくても切り刻んで水に入れるでもいいねえ」


赤い液体を入れると、空のフラスコは青と緑の液体になる。

それらを目分量で三日月の器に入れて蓋をし、三日月を白い玉に戻した。


「こうしてこうして、ツマミを『0』から『2』にするんだねえ」


そう魔女はツマミを『2』にして、蓋にあるスイッチを押した。


「!?」


カチコチと音がする。


「さあさあ、音が鳴ったら出来上がりだねえ」

「なにが出来るんです?」

「うんうん。ポーションだねえ」

「ポーションってさっき飲んだ?」

「うむうむ。そうだねえ」


チンっと鳴った。

まるでキッチンタイマーみたいだ。


「出来上がりだねえ」

「ポーション……」

「さてさて。説明しようかねえ。この丸いツマミを合わせた数字は、調合する素材の数。『0』は素材が0個。つまり調合しない。『2』は調合する素材が2個。『4』は4つという具合だねえ」

「なるほど。最大で6つの素材が調合できるんですね」

「うんうん。そうだねえ。これで機能は全部だねえ」

「……」


浄水機能。

冷温機能。

調合機能。


多機能すぎる。これがレジェンダリー……なのか。

そしてよしよし。飲んでごらんねえと言われた。


同じを二度も? そう首を傾げながら飲む。

今度は不味かった。


魔女は笑って僕は目を丸くする。


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