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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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230/284

グレイトオブラウンズ⑬


4日目。最終日。

とうとう祭が終わるときがきた。

早いようで長いようなそんな日々だった。


「…………?」


朝、起きると身体が重い。

妙に柔らかくひんやりとしながら暖かいモノが僕の上に乗っていた。

なんだろうと布団をあげると、シロさんの顔があった。


「?」


真っ白い肌。

透き通るような冷たい肌に心血注いで精巧に造られたような人形の顔立ちがあった。どこからどう見てもいつ見ても何度見ても綺麗という言葉しか出ない。


可愛いではなくひたすらに綺麗な白い美少女。

その顔が何故か僕の胸の上にある。目を閉じてスヤスヤと寝ている。


「……レウコン……ベヤズ……カーオ……ベヤズ……ウォフ……アブヤドウ……サフェード……プテー……サヘイドゥ……プテ……ケオ……プゥティヒ……」


相変わらず呪文のような寝言だ。寝言……だよな。

制約レリックで何か起きるとかじゃないよな。


あとふたつのマシュマロスライムみたいな膨らみが腹部に当たっている。

意外とあるんだな……じゃなくてこれ直に生で触れてないか?


「ええーと……」

「ビーラー……ツァガーン……ヴァルコイネン……ウィットぉ……」


なんでシロさんが僕の上にいるんだ?

しかもこれ肌触りと見る感じ……裸のような気がする。

というかシロさん裸だこれっ!?


「……」


よし。気付かなかったことにしよう。見なかったことにしよう。

さて僕は一昨日辺りから考えていた。4人が僕に好意があるのは分かる。


だから添い寝というのも、まあ……分かる。分かる? わかる……?

ま、まあ、それはいいとして、だけどそれだけじゃない気がした。


こうやって添い寝をするのは何か別の目的がある様な気がする。

たぶん魔女の企みだろう。目的は……僕を強くすることだと思う。


今の僕は突貫工事で急造している建造物だ。

コスパと少ない予算と工期で造られている。


全ては僕のワガママ。アルヴェルドに勝つという目的の為に時短で強くなっている。

しかしこの方法はどちらかといえば悪手だ。


突貫工事の急造はどこかで無理がくる。

楽な道はない。代償は必ずある。それは仕方がない。

覚悟はしていないけど、もう後戻りは出来ない。


「ひょっとして」


ハッとする。ひょっとして魔女はその代償を軽減させようとしているのではないか。

強くなるだけではなくその後も考えているのではないか。


魔女ならあり得る。魔女なら。


「ひょっとして?」


シロさんが起きて鸚鵡返しする。僕の上にいるシロさんと目が合う。

僕の銀の瞳。シロさんの白の瞳。似ているようで違う。


ふたり合わせたら白銀の瞳だ。

しばし見つめているとシロさんは舌で白い唇を舐めて滑らかにした。

薄く、どこか熱っぽく笑った気がした。ちょうどいい。聞いてみよう。

だがそれよりもまずは。


「おはようございます」

「おはよう。ひょっとしてどうしたの」

「ひょっとしてこの添い寝って何か意味があるのかなと」

「そうね。あるわね」


きっぱりと彼女は言った。


「やっぱり」

「もう最終日だからバラすわ。提案したのは魔女よ」

「やっぱり」


やっぱり。


「元々五つあったベッドを排除して四つにしたの。それで魔女は順番に添い寝することを提案したわ。最初は恥ずかしいのもあったからシロもチャイブも戸惑っていた。ムニエカは平然と了承したわ。それがなんか負けた気がしたから、シロも了承してチャイブも頷いたの。添い寝する目的も魔女は話したわ」

「その目的は?」

「ウォフくんをリラックスさせる」

「え?」

「リラックスさせることで魂の器と中身のチカラが上がると魔女は言っていたわ。それとチカラが強い者と接触すること」

「リラックス……」


むしろ逆では? 終始、僕は緊張しっぱなしでした。

だってこんな極上の美女と美少女と毎晩、添い寝。

それも相手は裸とか薄着とか裸とか、もう裸が多い。


しかもこの真っ白い美少女は僕の上に裸で乗っている。

ん? なにかこう表現的にまずいような?


「チカラが強い者はシロさんたちのことですね」


第Ⅰ級探索者———文句なくチカラが強い。


「ええ、なるべく素肌で長く接触することで、あなたの魂の器と中身のチカラが上がるって言っていたわ」

「上がっているんでしょうか」

「上がっているわね。そういうの。シロは分かるの。良かったわね」

「……あ、ありがとうございます」

「どういたしまして」


シロさんはゴロゴロする。猫みたいでかわいい。

思わず僕はシロさんを撫でた。シロさんはビクっとする。


しまった猫みたいでつい……でも何も言わずシロさんは撫でられる。

シロさんの白い髪はサラサラして少しだけしっとりと冷たい。撫でやすい。

撫でていると、そのシロさんのふたつのスライムのマシュマロの膨らみの感触が。


「ねえ、ウォフくん」

「な、なんですか」

「シロのお腹に硬く熱いのが当たっているんだけど」

「よし。起きましょう!」


僕は慌ててシロさんを退かして起きた。

シロさんはベッドから降りる。僕はなるべく見ないようにする。


そのとき、風呂から上がったチャイブさんと遭遇する。朝風呂か。

そして全裸のシロさんを見てチャイブさんが大騒ぎしたのはまた別の話。

シロさん。隠そうよ。















今日は最終日だ。

会議も議題は無くアルハザード=アブラミリンの総評で終わる。


「諸君。探索者とは何か。それはそのもの探索する者だ。未知を探索する。未だ見ぬ夢を探索する。あるいは人生を探索する。それとも愛しい者の心を探索する。それら全ては探索者だ。我らは全てを探索する者である。今回の『グレイトオブラウンズ』は場所も何もかも初めてのことばかりだった。前代未聞もあった。まさに探索者の頂点たる我らに相応しい祭典といえる。今回も何事もなく開催できて無事に終わることが出来た。皆に感謝を。願わくばまた五年後に諸君たちと出会えることを心待ちにしている。以上で会議『グレイトオブラウンズ』を終了する。探索者グランドギルド・グランドギルドマスター。アルハザード=アブラミリン。」


こうして『グレイトオブラウンズ』は終わった。


午後は最後のエキシビジョンマッチだ。

それはまさに最後に相応しい。


『それでは最後のエキシビジョンマッチを開始する。最後はタッグマッチ!『一刀両断斎』カエデ=アキマ&『オートドール』ムニエカ=エルドラド! 対するは『ストレンジ料理人』ジョン&『人間要……違う。『アフターライフビジョンシステムverβ』に変更された』


マジか。ピンク色の球体がふわふわと現れ、闘技場がざわついた。

そりゃそうだ。いきなりピンク色の球体が現れたらざわつく。


そしてそれが第Ⅰ級探索者だといわれたら困惑する。


『勝敗は降参するか。気絶するか。相手を殺すようなことは禁止とする。よいか?』


なんだろう。このまともなのはカエデさんぐらいしか居ない状況。


『それでは開始する!』


いきなり『アフターライフビジョンシステムverβ』がレーザーを乱射させた。

ピンク色の大きな球体の周囲に回る小さい球体からレーザーが発射される。


「なんのっ!」


カエデさんがレーザーを切った。切れるんだレーザー。次から次へと切っていく。

その合間にムニエカさんとジョンさんが激突した。


ジョンさんが虚空から六つ角と四つ目と三つ牙を生やした怪しい巨大魚を取り出す。

更に台所まで出した。

巨大な俎板の上で三枚におろして更にサクにする。見事な腕だ。


あの赤身。まさかマグロか。サクを丁寧に薄く切って皿に並べる。

醤油を小皿に入れて、完成だ。

ジョンさんは叫ぶ。


「喰らえぇっ」


僕は驚愕する。こ、これは刺身。刺身の造りだ。

いやなんで!?  なんで刺身!? なにやってんのこのひと?


「見事でござるな」

「ピーピーピーピー……!」

「これを私めが食べると?」

「喰らえぇっ」

「わかりました。実食します」


食べるのか。なんなんだこれ。戦っていたカエデさんもピンクの球体も注目する。

ムニエカさんがひとくち食べて、一言。本当に食べたのか。


「大変クセがあって面白い味です」


美味しくなかったんだな。

試合はムニエカさんとカエデさんが勝った。


『これにて今回の『グレイトオブラウンズ』を全て終了とする!』


こうして本当に4日間の長くて短い大祭は終わりを迎えた。





























深夜。

月とその娘たちが高らかに姿を現し、星が降り注ぐほどの夜の空。


ハイドランジアグランドホール。闘技場。


昼間の灼熱の喧騒が嘘みたいに静寂と包まれたその戦舞台に僕ともうひとり。

金髪の荒々しく鋭く聡明な美貌を誇る青年。


アルヴェルド=フォン=ルートベルト。


相対する。




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