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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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217/284

グレイトオブラウンズ⓪


『グレイトオブラウンズ』当日の朝。

目が覚めるとベッドが妙に柔らかいことに気付く。


「んっ……あぁ……おはようございます。ご主人様」

「お、おはようございます」


ベッドではなくムニエカさんだ。黒い下着姿で何故か僕の下にいる。

ああ、そうか。

手違いでベッドが四つしかないから僕は他の4人と添い寝することになった。


そして昨日の夜がムニエカさんの番だった。

ムニエカさんは寝るとき下着派と教えてくれた。

背が高くスタイル抜群のムニエカさんに黒い下着姿は……凄い。その一言に尽きる。


しかも寝るときは髪を下ろして髪飾りは取る。

髪を下ろして紫の瞳を光らせた黒い下着姿のムニエカさんが僕をベッドに誘う。


いや添い寝するだけだから、変なことは何もない。

しかしおかしいな。僕の横で寝ていたのに、なんで僕の下にムニエカさんが?

温かくて程よい柔らかさでいい匂いがして最高の心地だ。


でもさすがにまずくないか。と、とりあえず起きるか。

ゆっくりとムニエカさんから離れる。


僕が退くと、ムニエカさんも起き上がった。

ベッドの端に座り慣れた手つきで髪をまとめて髪飾りをつける。

下着姿でベッドに座って行われる、その何気ない動作に僕はちょっとドキっとした。


なんでだろう。何もしてないのに何かの事後みたいに感じてしまう。


「どうかしましたか」

「い、いえ、あれ皆は?」

「朝食にでも行ったのでしょう。私めは入浴してくるので、ご主人様はどうぞ先に……それとも一緒に入りますか? でしたら私めがご主人様の身体を隅々まで洗いましょう。任せてください。得意です」

「だ、だいじょうぶです。朝ご飯行ってきます」

「そうですか。いってらっしゃいませ」


着替えて僕は朝食に行った。




















『グレイトオブラウンズ』とは何か。

それは5年に1回、行われる。

全世界で活動している第Ⅰ級探索者が一堂に集まる。

最大1週間、開催される―――会議である。


ハイドランジアグランドホールの大中小ある会議室の中。

ほどほどの広さにほどほどの長さのテーブルと椅子がある。


「全員、集まったか。それでは『グレイトオブラウンズ』を開催する」


アルハザード=アブラミリンが立ち上がってそう宣言する。

リアクションはない。座ると今回の開催期間とスケジュールを発表した。


今回は4日間だ。

1日のスケジュールは午前中は会議。昼食。午後に闘技場でエキシビジョンマッチ。


ただ初日は開催式と第Ⅰ級探索者昇級式が行われる。

それからエキシビジョンマッチだ。


肝心の会議も2時間程度で終わる。会議の主な内容は探索者ギルド法の改正と廃案。

第Ⅰ級探索者の各自報告。探索者からの要望の取捨選択。


まあ、会議だ。

それにしても……なんというかシュールだな。

座る場所は決められていない。ただ上座はグランドギルドマスターが座る。


もっとも際立つのはピエロとピンクの球体だろう。

後はペストマスクの『千面相』と魚頭のギムネマ=シルベスターか。

他は見覚えが無いのがちらほら。あっ、あの紫の髪と瞳……あれがナーシセス。


「…………」


『ジェネラスの再来』……まさにそうだ。

その隣の席に筋骨隆々のマッチョマンが上半身裸でいた。うわあ。

腕を組んでいるナーシセスがどこか嫌そうな表情をしていた。

いや気の所為かな。怯えているような? 気のせいだろう。


あのフェアリアル。あれがミネハさんのお母さんか。

それと僕の近くじゃないけどミネハさんもちゃんといる。

今日はフェアリアルの姿で椅子の上に座っていた。


それと『剣の剣』は席にいない。

僕たちと同じ壁際で椅子に座るのではなく寝そべっている。


『剣の剣』の席にはセレストさんが居る。まあ、発言できないからな。

アガロさんたちはいない。まだ第Ⅰ級じゃないからだろう。


「さて最初の議題は前回から引き続き魔物の脅威度について、鉄等級。あるいは鋼等級を入れるかどうかである」


前回からって5年前から引き継いでいるのか。

えーと魔物の脅威度は確か。

『銅等級』『銀等級』『金等級』『宝石級』『至宝級』だったな。


「なお、入れるとすると予定では『銅等級』と『銀等級』の間になる。議論になっているのはレリック使用だけで銀等級になるのは驚異といえるのか。レリックが使えても脅威にならない魔物も多い。その区分も必要ではないか。というところだ」


なるほど。それが『鉄等級』または『鋼等級』か。

さっそくスっと手をあげたのは魔女だ。


「毎回毎回、しつこく言っているけどねえ。コンはいらないと思うねえ。その理由も前と同じでねえ。どんな魔物でもレリックの扱いは違う。レリックは扱うモノによって脅威になりえる。よってレリックを持てば銀等級のままでいいねえ。鉄という区分がつくことによって舐めてかかる探索者もいるからねえ」


それはある。以前ホブゴブリンがオーパーツを手にして凶悪な力を振るった。

あの脅威は間違いなく銀等級だった。

魔女の意見に何人かが頷いた。いらない派だろう。


「んーボクはいるほうだねー」


チャイブさんが手をあげる。


「依頼でー銅等級の討伐出したらーそれがレリック持ちだったからー銀等級の依頼料を払わないといけないことがーたまにあるんだよねー」

「ああ、そういうの確かにあるな」

「なにが問題かってーと銀等級に上がるとー依頼料が跳ね上がるんだよねーまぁ【鑑定』があるから悪さやズルは出来ないけどさー」


なるほど。銅から銀になると依頼料があがる。

だから中間の鉄があれば依頼主側はありがたいわけか。


「おやおや、探索者なのに依頼主の肩を持つんだねえ」

「そりゃー依頼主あっての探索者だからさー」


難しい問題だ。

どっちの言い分も分かる。

それから、いる派。いらない派。次から次へと意見が飛ぶ。


結論は……無理だな。

最大の問題はどんな弱い魔物でもレリックを所持できるということだ。

これはラボのデータベースの中にあった軍事実験で証明されている。


魂の器がある限り、レリックを所持できる。

そして全ての生物は魂の器を持つ。

だから全くレリックを持たないということはない。


この議論はまた次回に持ち越しだろうな。

そしてその通りになった。


「次の議論は第Ⅱ級と第Ⅰ級に採用されている二つ名を第Ⅲ級と第Ⅳ級にも適用するかどうかについてだ。それと二つ名の権利の延長を現在の種族ごとから統一するか否かについて、話し合おう」


うわぁ、これまた前者はともかく後者は荒れそうだな。

さっそくエルフの『一刀両断斎』のカエデアキマが手を挙げた。



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