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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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213/284

前夜祭①


ハイドランジアグランドホール。レストラン街。


「ヘイ、ユー、キッド! 遠慮せずに食べてヨー」

「は、はい……」

「子供は肉が好きだからね。沢山食べるといい」

「は、はい」

「ピー……ピピー……ピーピーピー………———」

「…………」

「がっははははははは、相変わらず丸くて硬いな。飲め飲め」

「未成年です」


僕はいま派手な変なアフロの変な男性。着流し姿の色っぽい美青年。

浮いているピンク色の球体と豪快に笑う捻りハチマキのおっさんに囲まれていた。


「オイラはこの肉巻き団子気に入ったネー。ヘイユーナイスだヨー」


だからって立ち上がってアピールしないでください。

というか金色の袖が短いジャケットに白いTシャツとか凄いセンスだ。

しかもシャツには黒い文字で荒々しく『土ッハ』とある。

『土ッハ』―――どこかで見たような?


それと黄色い星型フレームの眼鏡。

パーリーピーポー御用達アイテムがこの世界にもあったのか。


「ピー……ピー……サイダイ……トクイテン……ケンシュツ……ピーピーピー……」


えっなにこのピンクの球体。本気でなんなのこれ?


「がっはははははは、このピンク色の球体。なんか言っているぞ」


うわっ、バシバシ叩いている。酔っぱらっているな。オッサン。


「ほお。『アフターライフビジョンシステムverβ』がピー音以外を発するのは珍しいですね」


着流しの美青年がスラスラと早口で言う。

なにその明らかにシステマチックな名称。いやどこかで聞いたような?


そもそも、なんでこうなったんだ。


あれは確か―――ここ、ハイドランジアグランドホールまで着いたとき。

すっかりお腹が空いてしまった。そういえばレストラン街があるのを思い出す。

だからちょっと寄ってみようとレストラン街に入ったら、この店が目に入った。


『シードル亭second』だ。その名の通り2号店だ。

そういえば暖簾分けしたって言っていたなと入ったら、ほぼ満席。


無理そうだなと諦めかけたとき、店員が相席で良いならと声を掛けてくれた。

そう勧められたのがこの地獄のテーブル席である。


「へいへい、ヘイヨー。肉だぜ。ヨーヨー。ミーはミート。ユーはユー! キッド。もっと食べなヨー!」

「た、食べてます」


正直、肉ばかりできつい。


「がははははっっ、若い頃は食べて飲んで食べて飲め飲め飲めっ」

「未成年です」

「ほお。このサラダ。美味ですね」


着流しの美青年。ひとりだけサラダ食べている。


「ピー……ピーピー………ピーピピー……———」


なんかピンクの球体がテーブルをグルグルと廻り始めた。

あっ、おっさんが酒をかけた。でも周囲の小さい球がバリアを形成して弾く。


地味にすげえ。というかこのひとたち。第Ⅰ級探索者だよな。

というか希望表になんとかシステムってあった。

そういえば土ッハもあったな。


そうすると着流しの青年と捻りハチマキのオッサンもそうなのかな。


だけどこのなんとかシステムが人外だとは思わなかった。

いやどう考えても人外な名称だけど。

だけど人外はもう探索者になれないんじゃ?


「そーいえばヨー。聞いたかヨー」

「なにがですか」

「例のビッグウェーブ! ウォフのことだヨー」


僕?


「ほお。なにかあったんですか」

「ウォフを指名した『難攻不落』の4人がひとつの部屋になったってヨー。マジデワオー。オーオー、ヤバヤバ、ヨーヨー」

「ほお。それはつまりひとりで4人を相手するということですか」


相手するってなに。


「がっはははははははっっっ、やるもんだな。さすが『難攻不落』の挑戦者。若いっていいもんだ。ほら飲め飲め」

「未成年です」


挑戦していないのに……あっこのレモネード美味しい。

そしてどうやら僕がウォフだと知らないみたいだ。


まあ顔写真が出回ったりとかしてないからな。

未だにそういうのは似顔絵レベルだからな、この世界。


「ピーピー……ピー……シンコクナ……エラー……ピーピー」


深刻なエラー!?


「あの、なんか深刻なエラーとか言ってますけど」

「オーヨー、ヘイ、キッド。エラーってなんだヨー」

「ふむ。『アフターライフビジョンシステムverβ』がピー音以外に何か言葉を発しているんですか。実に興味深い」

 「がっはははははっっっっ、なあ。そもそもこの丸いのは、どうやって探索者になったんだ? こういうのは、もう探索者になれないはずだろう?」

「それですか。それがいつの間にか探索者になっていて、いつの間にか第Ⅰ級になっていたらしいですよ」


なにそれ怖ぁ……だけど、それでいいんだ。

あー、でもアルハザード=アブラミリンはそういうの好きそうだ。


「がっはははっっっ、軽いホラーだな」

「ヘイ、キッド。食べているかヨー」

「食べています」

「そうそう。今日渡されたスジュール表を見て驚きましたよ。土ッハ。あなた。エキシビジョンマッチに出るんですか」

「おうヨー。久々に出るヨー」

「しかも相手がギムネマ=シルベスター……『海元卿』ですか」

「ヘイ、相手にとって不足はないヨー。オウイエー。オウイヤー」

「がっはははははっっっ、若いなあ。オレはさすがに年でなあ。あと20年若かったら、『難攻不落』にも挑戦するんだがな」

「ジョンさん。さすがにそれは無謀ですよ」

「ピーピー……ピー……ピーピー……———」

「さすがダヨー。ジョンさん。ナイスジョーク」

「がっはははははははっっっっ、女房にバレたから殺されるな」

「ははは……」


あー、レモネード美味しい。


「なにこの魑魅魍魎の地獄絵図」


そう吐き捨てるように言ったのは、青と緑のツートンカラーの少女だった。

瞳も青と緑のオッドアイだ。愛らしい顔立ちでローブを纏っている。

傍らに全身鎧でフルフェイスの騎士が従えていた。強そうだ。


「おや、ロリーフ。ギルバルド」

「ユーは舞姫。ヨー、ロリーフ。あとギルバルド。ヨーヨー。ヘイ」

「がっはははっっっっ、舞姫。そして相変わらず堅苦しいな。ギルバルド」

「…………」

「ピーピー……ピー……———ピー」


ロリーフ。それとギルバルド。

どこかで聞いたような。


「オウヨー。『水風の舞姫』もこんなところで食事かヨー」

「貴方が好きなのはアルヴェルドが行くような店だと思っていましたよ」


つまり高級店か。

アルヴェルドは会員制とか招待制とか、そういう店に居そう。


「そういう店も行くけど、美味しいモノに場所は選ばないものよ」

「ピーピー……ピー……ピーピー」

「ところでそこの子は?」


僕をロリーフさんは怪しげに見た。

まあ地獄の真ん中にポツンといるから奇異な視線になるのは分かる。


「相席です」

「コイツはヨー。キッドだヨー」

「がっはははははっっっっ、未成年のガキだ。ほら飲め飲めっ」

「未成年です」

「ピーピー……ダイキボナトクイテン……」


大規模な特異点!? それって僕のこと?

ロリーフさんは驚いている。


「これがピー以外を言うのは初めて見るわ」


あっ、やっぱりそうなんだ。


「それで私たちに何か用ですか」

「ないわよ。偏屈なケッサイ」


ロリーフさんはため息をついて、行きますわよ。とカウンター近くの階段をあがる。

この店にも2階があり、VIPルームになっていた。


「フーユー、相変わらずだヨー。おてんば舞姫ヨー」

「がっはははっっっ、元気な娘だ」

「偏屈ですか。確かにそうですね」

「ホウホウ。ヘイヨー。キッド。食べて食べてヨー」

「食べています。あのひょっとして酔っていますか?」

「ほう。気付いたか。実は私以外は酔っぱらっているね」


さらりと着流しの美青年。

やっぱりそうか。アフロのひと。チェケラッヨーヨーとか言い出した。


「がっははははっっっ、ほらほら飲め飲め」

「未成年です」


さて、そろそろこの地獄から抜けたいなあ。

どうやって抜けるか。

レモネード美味しかった。



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