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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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207/270

従依士《ツカエシ》⑩・メガロポリス。


今日は従依士ツカエシの説明会がある。


「ほう。ほほう。複合施設か」


ハイドランジアグランドホール。

闘技場に会議室に演劇ホールにレストランに雑貨屋にホテルなどなど。


それらがこの円形の神殿みたいな建物に全て入っている。

デパートというよりショッピングモールに近い。


「それにしても本当なんですか」


僕は肩に乗って頭に手を置くウサギに尋ねた。

仲間だけど、色々お世話になっているけど、いまいち信用できない。


「ああ、吾輩はメガロポリスだ」

「メガディアさんと同じ」


確かに従依士ツカエシの希望表にメガディア=メガロポリスとあった。

でもそのメガディアさんとハイヤーンが同じ家だったなんて。


「元々メガロポリスは錬金術の家系であってな、エッダ六家の風を司る」


エッダの最も古い家柄で現在のエッダにおいて最高権力を持つのが六家だ。


火を司るフロンティア家。

水を司るアトランティス家。

風を司るメガロポリス家。

土を司るエルドラド家。

光を司るアルカディ家。

闇を司るユートピア家。


正しくは4家と2家であり、光と闇を司る2家は4家の上に位置している。


「それって4000年前からずっと?」

「そうみたいであるな。正直エッダなぞとっくに滅んでいると思っていたぞ」


とんでもないことを言う。

それでハイヤーンは子孫に会ってみたいと言い出したわけだ。

メガディアさんはこの先の宿泊施設に居る。


会うのも久しぶりだ。

そう思っていたら向こうから誰かやってくる。


女性だ。それも背が高い。かなり高い。

長い黒髪で前髪を揃えていた。いわゆる姫カットだ。


妖しく光る紫の瞳。そして黒紫のケープを纏ってヒラヒラした黒い衣装を着ていた。

ゴスロリ衣装だ。ということは。


「メガディ」

「マイボディっ!」


ハイヤーンがメガディアさんに飛びついた。さすがの跳躍力。


「きゃあっ、なにウサギ!?」

「マイボディ! マイボディっ! マイボディっっ!」


あのウサギめっ! 僕はハイヤーンを引っぺ剥がした。


「ウォフくんっ?」

「ごめんなさい。ハイヤーンが」

「マイボディ!」

「……それが例の」


メガディアさんは引いていた。

僕も困惑する。


「そうなんですが、ハイヤーン」

「マイボディ……」


なに言ってんだ。こいつ。

マイボディ。古代語で私の身体。肉体?


「どういうことなんですか」

「うむ。メガディア嬢が我の元の身体に瓜二つなのである」

「元の身体って…………えっ、ハイヤーンって女だったんですか」

「今はオスであるな」

「ハイヤーンってあの三つのたまごの?」

「そうですよ」

「その元の身体があーしとクリソツ?」

「髪型はもっと揺る揺るで身長はもう少し低かった気がするが、概ねそうであるな」

「えっ、ハイヤーンってハゲの」

「違うである! エッダで! メガディア嬢に瓜二つである! もっとも当時の我はあんまり元の身体は好きでは無かったな」

「瓜二つなのに好きでないって言われると少しショックだわ」

「ただしウサギのほうが良いかというと、元の身体に軍配が上がるのは事実である」

「それ、ウサギだとパネル操作がやりづらいだけですよね」

「…………それはさておき、4000年の時を超えてメガロポリスの子孫にこんなに瓜二つの存在がいるのだ。ぜひメガディア嬢に頼みがある」

「なに、この身体を渡すとかそんなこと言ったら消すけど。あんた。口ぶりだとそういうことが出来るんでしょ」


メガディアさんは警戒心を深くしてハイヤーンを睨む。


「それはさすがにしないのである。背が高すぎるであるからな」

「よし消す」

「協力します」

「待て待て待て、冗談であるっ! 頼み事はそこのウォフと交わって子供をつくって、その子供を我にくれることである」

「よし完璧に消す」

「ぜひ協力します」


メガディアさんの手に黒く歪む球体が出現する。

僕も久しぶりに【バニッシュ】を手にゴルフボールぐらいで出した。


「待て待て待て待て、冗談である! ならばメガディア嬢の卵子とウォフの精子を」

「どっちにしろ同じじゃねえかっっ!!」

「卵子? 精子?」


メガディアさんはきょとんとする。

あーこの世界ってそこまで分かっていないのか。教育が無いのか。

僕は前世の記憶で分かったんだけど。


するとハイヤーンはメガディアさんの肩に飛び乗った。

耳元で何か囁くとメガディアさんは顔を真っ赤にしてハイヤーンを投げた。


あーその反応で何を言ったのか分かった。説明したんだな。


「そんな大切なモノを渡すわけないわっ!」

「何を考えているか分かるけど、さすがにそれは生命の冒涜ですよ」

「生命の冒涜?」


ハイヤーンはなにそれっていう表情をする。

こいつマジか。


「錬金術師のくせに倫理観ないのかよっ!」

「錬金術師?」

「うむ。吾輩はジョブレリック【アルケミスト】を所持している。元々メガロポリスは錬金術師の家系であるからな」

「へえー、知らなかったわねえ」

「なんと! 代々【アルケミスト】を引き継いだ錬金術の大家であったのに」

「引き継いだって……ハイヤーンが【アルケミスト】持ったままなら引き継げないのでは?」

「あっ……」

「自分で潰してんじゃないわよ。はあ、こんな変態ウサギがご先祖……」


嫌だなあ。メガディアさんはため息をつく。


「大体【アルケミスト】ってなんなの」

「なぬ? メガロポリス家なのに知らぬのか」

「あんたが潰したんじゃない。あーしは何も知らないわ」

「ならば教えよう。我が【アルケミスト】すなわち錬金術とは何か。それはレリックの【合成】【分解】【結合】【融合】【錬成】【複製】【解析】が出来る。そしてレリックやオーパーツやレジェンダリーやレガシーなどを作成することが出来るのだ」

「レリック? オーパーツ?」

「レリックはなんでもというわけではないがプレートとして作成は可能である。オーパーツもデータベースにあれば、それと【合成】があるから異なるオーパーツをふたつ合わせて新しいオーパーツの作成も可能である」

「……オーパーツの合成。それってレジェンダリーとも合成できるの?」

「もちろんである。オーパーツとレジェンダリーの合成も可能であるぞ。その場合は確実に全く異なるオーパーツかレジェンダリーが出来るだろうな」

「…………」

「メガディアさん?」


しばらく黙っていて様子がおかしい。

メガディアさんは何か決意するように顔をあげた。


「ハイヤーン。頼みたいことがあるわ」

「子孫の頼みならば快く引き受けよう」

「詳しいことはまた後で時間をしっかりつくって話すわ。あなたもメガロポリス家の者ならば無関係じゃないわ」

「ふむ。わかった。我が子孫」

「メガディア嬢でいいわ。なんかこう子孫とかその姿で言われるの嫌なの」


確かにウサギに子孫とか言われるのは……なぁ。


「了解した。メガディア嬢」

「なんかドッと疲れるわね」

「わかります。そういえば、メガディアさんの従依士ツカエシはパキラさんですか?」

「ええ、ギルド職員でもいいんだけど折角だから。快く引き受けてくれたの」

「そうですか」

「それよりウォフくん。あなた。かなり話題になっているわね」


メガディアさんはニヤニヤとする。

僕は困った。


「あー……まぁ」

「安心して、からかうつもりはないわ。あなたなら大丈夫よ」

「大丈夫ですか……」

「ええ、だから自信を持って」


そういう風に言われたことがなかったので僕はどこか安堵した。


「ありがとうございます」

「……じいぃぃぃぃ」

「なにかな。ハイヤーン」

「面白いのだがよくわからんヤツだと改めて思ってな」

「いやそれおまえだろ」


ブーメランって知っているか。

メガディアさんは笑っていた。良いコンビねとか冗談じゃない。



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