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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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モーリュ草③


「リヴ……?」


おっと驚いて呼び捨てしてしまった。


リヴさん。

第Ⅲ級探索者で女性だけのパーティー・トルクエタムのメンバーだ。


ショートカットされた桃白い髪。

眠そうな赤いまなざし。それらを備えた綺麗な顔立ち。


まごうことなく美少女。

ただその恰好はファンタジーには程遠いスペースな白いボディスーツ。


黒いジャケットを羽織ってズボンを履いて黒い一体形成されたブレードを持つ。

やはり違和感があるなぁ。


前世の記憶がある僕だからそう感じるのかも知れない。

あまり騒がれていないから、他の人は異国の変な装備ぐらいなんだろうか。


「……」


数十匹を屍の山にしてもゴブリンは洞窟や周囲の草むらから現れる。

リヴさんを取り囲むようにして、すぐ襲い掛かって来ない。


その理由は明白だ。リヴさんが女だから。

繁殖の為に殺さない。捕らえる。

何匹殺されても捕らえられればいい。


人海戦術は恐ろしい。

1匹は雑魚。10匹で敵。100匹になると強敵だ。


「……うっとうしい……」


リヴさんは不機嫌にブレードを脇構える。

何をするつもりだろうか。


「……(ソラ)の型……(スバル)……マイアブレード!」


刀身が赤く輝き、抜き放たれる。

一瞬で取り囲んでいたゴブリンたちは赤い軌跡に切断された。


凄い。あっという間だ。

しかも切り口がとても綺麗で血があまり出ていない。


そういえば死体の山も出血が異様に少ない。

おそらく焼き切ったのだろう。


前世の記憶で傷口を焼くと血が止まるのは知っている。

サバイバルだかの番組で観た。


「あ……少年……だ」


リヴさんが僕に気付く。当然だ。僕は隠れていない。

いや隠れていても見つかるかも知れない。なんかそんな感じがした。


「ど、どうも、ご無沙汰です」


言葉に詰まりつつ返事をする。


「……どうしてここに……いるの……?」


向こうが訊いてきた。

それは僕のセリフ―――いや彼女の疑問はもっともだ。


「用事があって」

「……ゴブリンの巣に……用事……」

「ええ、まあ、そのリヴさんは?」

「……依頼……ゴブリンの巣の討伐……」

「おひとりですか?」

「うん……パキラは読書……ルピナスは……話し合い……」


パキラ。ルピナス。他のメンバーのことかな。じゃあソロか。

それにしてもゴブリンの巣の討伐。依頼なんて出ていたんだな。


ひょっとして依頼主は魔女か。

なかなか依頼を受ける探索者が居なくて、僕に任せた。


そして依頼を受ける探索者がやっと出たけど忘れた。

あの魔女なら充分にあり得る。


「……僕は巣の中にあるモノを採取しないといけないんです」

「…………雇い仔の仕事……なの」

「えっ、あー……そんなもんです……」


僕は頷く。雇い仔という勘違いをしてるようだ。

ただ普通はそう思うので無理筋じゃない。

変に否定して怪しまれるより、それに乗っかる。


「……巣に入る……の」

「は、はい。入らないと採取できないので」

「……巣の中は危険……リヴに頼む……選択肢ある」

「いくらですか」

「……500」


安い。子供のおつかいじゃないんだぞ。

討伐依頼のついでの依頼だが、それでも安い。


ひょっとして、僕が払える範囲内を考えて?

優しいんだな。でも僕は首を横にふる。


「いいえ。お断りします」

「……なぜ」

「僕の信条ですが、依頼の二次受け合いは…失礼にあたります」


頼まれた依頼を誰かに引き受けてもらう。

代行や二次受け合い。

そういうことをしている探索者もいるだろう。


だが僕はそんなことはしない。

これは前世の性分。責任感だ。


「……それはそう……でもその考えは……探索者……の思考。少年は探索者……」

「違います。まだ13歳です」

「……依頼人は誰……」


リヴが何故か怒りを込めて尋ねた。

【危機判別】が彼女を薄く赤くする。


「それは……言えません」

「……ここはとても危険……子供が来ていいところじゃない……」

「確かにそうですが」


参ったな。彼女は善意で言っている。

僕が子供で弱いと思っている。その考えは正しい。


そしてわかってしまった。依頼人のことを聞いた理由。

それに怒りを込めた理由。


彼女が怒っていたのは僕じゃない。

こんな危険な場所に頼み事をした依頼人に怒っていた。


でも、それたぶん同じ依頼人だと思います。

だから魔女が怒られても仕方ない。。


ううーん。どうしようか。

僕が戦えるというのは見せたくない。


特に助けた事を内緒にしているトルクエタムには見せたくない。

だからといって頼むのもしたくない。


「……少年は……どうしても」

「え?」

「……ゴブリンの巣に入りたい……の」


懊悩する僕を見兼ねてか。

リヴはまっすぐな瞳で僕を見る。


「はい。入りたいです」

「……それなら……守る……」

「いやそんなさすがに」


狼狽する。

まさか僕をガードしながらゴブリンをせん滅するのか。

方法としては最適かも知れない。だけどリヴさんに負担が掛かる。


「……だいじょうぶ……必ず……リヴが守る……」


リヴさんは微笑んだ。

心配させないようにと笑みを浮かべている。


不安げな表情が出ていたのか。

それにしても……僕は問う。


「どうしてそこまで」

「……死なれたら……困る……」

「どうして、ですか」

「……死なせたく……ないから……」

「なんで? 何も関係がないのに」

「……関係がないとか……そういうのは……どうでもいい」


リヴさんはきょとんとして小首を傾げ、続けた。


「……リヴは……少年に……死んでほしくない……なぜと問われても……困る……誰かを……ひとを死なせたく……ない。そう思うのは……当然……それとも少年は……もしも瀕死で……今にも死にそうなリヴたちを……助けられるけど…………助けないの……」

「そ、それは、僕は……―――リヴさん」


その質問は―――仕方ない。僕は話すことに決めた。


「……なに……」

「僕には【危機判別】というレリックがあります。このレリックがあればゴブリンの奇襲も洞窟内の罠も分かります」


あんな質問されたらどうしようもない。

レリックのひとつぐらい話してもいいだろう。


「そう……わかった……任せる……」


リヴさんは小さく頷いた。


「は、はい。よろしくお願いします」

「……ん。じゃあ行こう……」


こうして僕はリヴさんとゴブリンの巣に入った。


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よろしくお願いします。



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