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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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199/284

第Ⅴ級探索者⑫


ファイアマン。

全身が炎で出来ている人型のダンジョンの魔物だ。

13階の迷路で割と多く出る。しかしレリックはない。


消火するか。身体の中の火打石を破壊すれば消える。

水のダンジョンの水妖シリーズみたいなものだ。

こういった属性が魔物になったのは風も土にもいる。


「ああ、これ。あれだ」


思わずつぶやく。僕は【深静者】を使って思った。

光点を襲ってくるファイアマンに合わせて【バニッシュ】を放つ。

倒した次のファイアマンに合わせて【バニッシュ】を撃つ。

次は連続でファイアマンに―――消し飛ぶファイアマン。


これ、あれだ。アーケードのシューティングゲームだ。

ガンコンを画面に向けると光点が現れ、引き金を引くと敵が倒れる。

まさしくそれだ。そんな気分でファイアマンを殲滅する。


昔よくやったなあ。

襲ってくるサラリーマン風のゾンビを全て上司に見立てたり。

襲ってくる医師の格好をしたゾンビを全て上司に見立てたり。

襲ってくるゾンビを全て上司に見立てたり。


ストレス発散でよくやったなあ。


「マスター、強い、爽快感がある、デス」

「いい調子でやすな」


シャルディナは目を輝かせ、アレキサンダーさんは呑気に煙管を吸う。

殆どの魔物は僕が倒していた。


【深静者】にレリックが進化した結果。

稼働時間だけが10分になったので使い勝手が抜群にあがっている。


欠点としては【深静者】を使わないと狙って【バニッシュ】が使えないことか。

ターゲットポインター・光点が便利すぎるのもある。


ふと気になったことをアレキサンダーさんに尋ねた。


「転移陣を設置するだけじゃないんですね」

「ダンジョンの裏方全般と考えてもらっていいですぜ。今回のイベントの確認と処理も仕事に入ってますさ」

「イベントって初めて聞いたんですけどよくあることなんですか」

「大小違いはあれどよくあることでやす。ハッキリ言うと、どれがイベントか区別がつかないのが現状でさ。下層の魔物が低層でうろついているのはイベントかどうか専門家でも意見が分かれるぐらいでやすから。今回のはさすがに特大すぎてイベントと判明したというだけですぜ」

「なるほど」


いわれるとダンジョンで起きている全てがイベントといってしまえるのか。


そしてイベントが起きている場所に着いた。

キマイラの群れ。奥にキマイラの亜種。前と全く同じだ。

リポップしたのか。


僕は【フォーチューンの輪】を使う。

洞窟の向こうに緑の光が複数。黄色がふたつ。青がひとつ。青は一番奥か。

健在なら誰も取ってないってことか。


元々ここは早めに次の階層の転移陣が発見されたのでスルーされる階層らしい。

まあこんな迷路、誰だって嫌だよな。探索者としてはどうかと思うけど。


それ以前に火のダンジョンは下層に行けば行くほど過酷な環境になるからか。

探索者の数が少ない。そういえば風もそれほど居なかった。


それに比べて一番人気の土のダンジョンは入場制限が掛かっているほど盛況だ。

ダンジョンの入り口に宿村が出来るぐらい。ダンジョン格差も露骨だなと感じた。


ちなみに街のダンジョンはというと。

『グレイトオブラウンズ』が終わった1週間後に閉鎖が解かれる予定だ。

なおゴミ場だけは特別に今も開かれている。それだけは良かった。


アレキサンダーさんがキマイラの群れを眺めて唸る。


「あっしとしては放置しても問題ないと思うんでやすけどね」

「それは……そうですね。うん」

「そうなの、デス?」


この階層自体かスルーされるのが多いので放置しても構わないのはある。

まあでも仕事は仕事だ。


「どうやってイベントを処理するんですか」

「そいつはこれを使うんで」


アレキサンダーさんがそう見せてくれたのは石だった。

どこにでもありそうな半透明の色をした歪な石。


「それは、なに、デス?」

「イベントも建物もダンジョンに生成されるのは想いでやんす。想いはカタチではない魂の概念。こいつは現象石。そのカタチがない概念という現象を封じることが出来るレガシーですぜ」


アレキサンダーさんは現象石を投げた。

キマイラたちが気付くと、現象石は光り輝き、粉々に砕けた。


そして無くなるとキマイラの群れは憑き物が落ちたような様子を見せる。

キマイラの亜種と共に後ろの洞窟へ入っていった。


「これでここのイベントは消えたんですか」

「そうですぜ」


それはそれでいいんだけど、後ろの洞窟に入ってしまったか。

僕も用があるのが……まぁしょうがない。


出会ったら戦うまでだ。


洞窟を抜けると、さっそくキマイラに襲われる。

鋭い爪をシャルディナがカトラスで弾き、その隙を狙う。

ターゲッティング。


「【バニッシュ】」


ショット。キマイラの頭が消えた。

蛇の尾をアレキサンダーさんが切断する。


「いきなりとは」

「さっきの一撃、重かった、デス」

「助かりました。シャルディナ」

「マスター、守るの仕事、デス。でも、どうしても、というなら、頭を撫でても、いいデス」


僕は少ししゃがむシャルディナの頭を撫でた。

嬉しそうだ。それからまずひとつめ。緑の光の宝箱を開ける。


「ポーションでやすな」

「まぁ、これはこれで」


次の緑の光はパワーポーションだった。

一時的に身体強化できる珍しいポーションだ。


「まぁ、これはこれで」


次は黄色の光だ。

黄色の光は……ああ、こういうこともあるのか。


「おや、こいつは珍しい。ゴミが集まってますぜ」

「どれも、砕けて、ボロボロの武器や防具ばかり、デス」


そこは行き止まりで、朽ちた武器や錆びた防具などが寄せ集まっていた。

小さなゴミ場だ。黄色の光は……ゴミを掘る。あったこれだ。


僕が手にしたのは小さな細長い木箱だった。

古い箱で表面に文様が刻まれている。


開けると、中にはあったのはペンダントだった。赤い宝石が付いている。


「良いモノでやす」

「分かるんですか」

「おっと、あっしは直感で悪くないということぐらいですぜ」

「ワタクシメ、興味ない、デス」


シャルディナが素っ気ない態度を示す。


「まぁ、これはこれで」


ポーチに仕舞う。

さて次がメインディッシュだ。


2体ほどキマイラを倒す。アレキサンダーさんが教えてくれた。

キマイラの討伐部位は爪と尻尾の蛇の牙だ。買取金額は1500~3000オーロ。


この手にしてはそう高くない。戦う手間と考えればなおさらだ。

まあ持っていくんだけど。せっかくだし。


青い光は奥まった行き止まりのゴミ場だった。

錆びたナイフと破損した鎧の隣に無造作に白いプレートが刺さっている。

その白いプレートが青い光だ。


「これは珍しいでやすね。あっしも見るのは2回目でやす」


僕が手にしたプレートを見てアレキサンダーさんは驚きつつ感慨深く言う。


「これ、なんですか」


見た目はレリックプレートの色違いだ。


「レリックプレートでやすよ。それも複製レリックプレートと呼ばれるレジェンダリーですぜ」

「複製?」

「レリックを複製してプレートに入れることが出来るでやす。ただし何でもというわけではなく、属性などの大量に所持がある一般系のレリックだけでやすぜ」

「へえー、それでも便利ですね。そうするとこの中にはレリックが入ってないってことですか」

「白紙だからそうでやすね」

「あの、マスター、お願いがある、デス」

「なんです?」

「ワタクシメ、マスターのレリック、欲しいデス」

「あー、僕のレリックを複製して、それが欲しいってこと?」

「はい、デス!」

「そうするとシャルディナはレリック持ってないんですか」

「はい、デス!」

「なるほど。アレキサンダーさん。これの使い方は?」

「プレートを手にしたままレリックを扱うように思い浮かべるだけですぜ」


こうかなと僕はレリックを思い浮かべた。

【フォーチューンの輪】は駄目。【バニッシュ】も駄目。【深静者】も駄目。

【サイレントオートムーヴ(ハーフ)】も駄目。【ジェネラス】はもちろん駄目。


あっ【危機判別】が出来た。プレートが黒くなる。


「それで入ったことになりますぜ」

「どう使えば?」

「プレートを相手に渡し、『所持する』と宣言すれば手に入りますぜ」

「じゃあ、はい」

「……マスター。本当に良いんデス?」


シャルディナは自分で言ったのに躊躇する。


「こういうのは早く使ったほうがいい」

「それなら、使うデス」


シャルディナは受け取り、『所持する』と宣言する。

プレートは崩れて消えた。


「どう?」

「わっ、わわっ、マスター、マスター、ワタクシメの胸の奥に、ふたつ、レリックが出来たデス」

「ふたつ?」


複製したのはひとつだけだ。


「は、はい。【危機判断】と【インパクト】デス!」

「判別じゃなく?」

「はい、デス。判断デス」

「しかも【インパクト】って」


アルヴェルドのレリックじゃないか。

どうなっているんだ。


「こいつは珍しいことが起きたでやすな。さすがはウォフ殿。愉快痛快ですぜ。分裂現象なんて一生にあるかないかでやす」

「……分裂……」

「元のレリックの一部が分裂したでやす。それがふたつレリックとなって複製したんでしょう」

「【危機判別】から【危機判断】で【バニッシュ】から【インパクト】か」

「マスター! マスター! ワタクシメ、嬉しいデス。とっても、嬉しいデス!」


シャルディナがはしゃいでいる。顔がムニエカさんだから違和感バリバリだ。

だけどまぁ喜んでくれるならなによりだ。うん。その笑顔。プライスレス。


「ウォフ殿。あっし。思うんでやすが」

「なんです」

「こういうことしているから今みたいな現状になっている気がするでやす」

「…………」


否定できなかった。

火のダンジョンを出てアレキサンダーさんとは別れる。

本当に色々とお世話になった。


帰った後、シャルディナは魔女の家へ。僕はラボへ。

トレーニングルームに渋るハイヤーンを連れて開始。


10回連続【邪視】だけを見事消す。

そんな僕に対してとてもウサギじゃない表情を浮かべていた。

名探偵かな?


にしても晴れやかな気分だ。

これでやっとアルヴェルドの舞台に立てた。


その後、シャルディナのレリックについてムニエカさんに怒られた。

シャルディナと一緒に正座して1時間近く説教された。

なんか説教なのに嫉妬と拗ねている感じがあるのは気のせいだろう。



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