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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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197/284

第Ⅰ級探索者①


シードル亭は今日も大繁盛。

連日アガロは無差別飲み比べ勝負をして連勝している。

その野次馬は増えに増えて、店主のバーンズは増築を本気で検討していた。


さて喧噪から離れたテーブル席に四人の男が座っている。

彼等の中で主にふたりは、店員ですら近寄りたくない見た目をしていた。


「ふむ。吾輩の勝ちだな」


そのひとり。魚を頭から尻尾まで丸々一匹を頭部にしている燕尾服の男。

『海元卿』・ギムネマ=シルベスター。


「ヘイユー、おまえヨー。本当にルール分かってんのかい。オイラの勝ちネ!」


そのひとり。大きなアフロヘアの男がカードを叩きつける。

金の月と銀の星を象ったド派手なサングラスを付けていた。


肌は土気色で背が高い。

銀色の肩幅が広くて胴の半分ほどしかない変なジャケットを着ている。


白いシャツにはヘタクソな黒い字で『ド覇』とある。

クロスしたベルトを巻いたズボンは普通だったが古いサンダルを履いていた。

『土っハ』・土っハ。


「ふう。呆れますね。勝ったのは、サアァオインさんです」

「えっ俺?」


青柳柄の着流し姿の美男子が頷く。

桜色の長い髪に儚げな印象の双眸。整った顔立ちをした線の細い男性だ。


白い角が生えているが片方だけで、しかもその角は髪に従って長い。

少し遠めにすると女性に見えなくもないが男だ。


しかしなんともいえない色気がある。だが男だ。

『飄々隆々』・ケッサイ。


「いやどいつも勝ってないぞ。おまえら。オムトのルール。なんも知らないだろ」


どこからどうみても吟遊詩人の格好をした金髪の男がため息をつく。

緩やかな金髪の目鼻が整ったスマートな美形の顔立ちだ。

長い耳をしてエルフだと分かる。


真っ赤なマントとド派手な花で飾った鍔広い大きな帽子。赤いシャツ。

白のズボン。金の靴など、土っハに負けないくらい凄い恰好だ

椅子に寄り掛かっているのは古いリュート。


古くはランツクネヒトという。

もう今の吟遊詩人はこんな旅芸人みたいな恰好はしていない。

だが彼はこの姿を貫く。

『流離いの吟遊詩人』・サアァオイン。


第Ⅰ級探索者が四人もひとつのテーブルに集まっていた。


「さてヨー。カードはこのくらいにして、本題に入ろうゼッ」


土っハは一枚の紙をテーブルに置いた。


「今年は異例尽くしですな」


それを見たギムネマが言う。


「場所もそうだけど、これは思わず笑いましたね」


ケッサイが楽しそうに笑う。サアァオインは苦笑する。


「俺はなんて言っていいか分からなかった。難攻不落だぞ。しかもそれが4人……ありえない。いいか。ありえないから難攻不落なんだ。彼女たちに数え切れないあらゆる地位や権力のある男たちが挑んだ。だが誰も踏み込むことすら出来なかった。ゆえに難攻不落。 それが従依士ツカエシ指名のしかも半分……異常事態以上だ。こんなことかつて無かった」

「ヘイヨー、落ち着け。サァオイン。このウォフって何者なんだゼ?」

「魔女の弟子だ」

「あの魔女の……ワォ、マジカヨーっ!」

「ほう。噂に聞いていたが」

「男とはね。しかしどういう人物なんでしょう」

「ふむ。吾輩、実は会っている」


えっへんとするギムネマ。


「ヘイユー、ホントカヨー?」

「そいつは意外だな。どんなヤツだった?」

「川で溺れる吾輩を助けてくれた。恩人である」

「いいひとってことか」

「うむ。よいひとであったぞ」

「さすが難攻不落を陥落させたということですか」

「デモヨー、それだけであいつら落とせるカヨー?」


土っハの言葉に黙る3人。


「まっ、なんにせよ。あと1週間すれば会えるわけだ」

「どんなのか楽しみですね」

「吾輩はもう既に会ったぞ」

「ヘイユー、何者なんだぜ。ウォフ。ヘイヨー」


そして人知れず、クシャミを連発するウォフなのであった。

















閃く刃。真っ二つになる愚かなる者ども。


「何故にこうも命を散らすのか。理解できぬでござるな」


薄紅の唇を不快に開く。

白い布でひとつにまとめた真っ黒い髪。その瞳はピッタリと白い布で覆われていた。

そして長く尖った耳と凛々しくも麗しい美貌を晒している。


山徒民族の証である白い袴に薄い鎧姿を身に纏い、黒い大笠を背中に背負っていた。

腰には二本差し。もっとも本差しの刀は手に握られている。


山徒民族は世界に点在している。

この国にも里があり、彼女はその里の出身だ。


不埒な企みを持ち、実際に実行しようとした者たちは例外無く真っ二つだ。

すなわち一刀両断である。


『一刀両断斎』・カエデアキマ。難攻不落のひとりでもある。


もっとも彼女は難攻不落になりたくてなったわけじゃない。

恋愛の条件が厳しすぎるので今でも独りなだけだ。


「この程度、稽古にもならぬでござる」


ため息交じりに呟くと、浮遊するピンク色をした丸い物体が接近してきた。

その丸い物体には惑星のような輪があり、周囲に無数の球体が浮いている。

カエデアキマは一瞥して尋ねた。


「某に何用でござるか」

「ピー……ピーピー―――ピー……―――ピーピー……―――ピー…………ポ」


音が鳴るたびにピンク色の球体の中心部が赤と青に点滅する。


「ふむ。ふうむ。相変わらず分からぬ」

「ピー……ピー……ピーピー……―――ポ」


無数の球体が死体に触れると、死体が消える。


「片付けてくれるでござるか」

「ピーピー……―――ポ」


次から次へと真っ二つになった死体を消していく。

その手際を感心したように見守るカエデアキマ。


そしてこう思う。このピンク色の球体は本当になんなのだろうか。

彼女と同じ第Ⅰ級探索者であるが、そもそもこれは最低限、生物か。


「ピーピー……―――ピー……ピーピー……ピー……―――ポ」


唯一分かっているのはその名称だけ。


『アフターライフビジョンシステムverβ』


そしてその名称がなんで分かっているのかも不明である。

つまりは何も分からないのであった。


死体を全て消すと、『アフターライフビジョンシステムverβ』は去っていった。

まるでゴミ掃除が終わったといわんばかりの無機質さだ。


実際にそうなのかも知れないし、違うのかも知れない。

それの真意を知ることは誰もいないのだ。


「あれでしっかりと第Ⅰ級としての実績を今も積んでおるから分からぬでござるな」


微苦笑して刀の血を振って落とし、鯉口を鳴らして刀を収める。

そこに近付く気配。振り向いて、クスっと笑う。

青い大きな犬が座っていた。黒い首輪をして大剣を背負っている。


「また弟子に探させておるのか。確かにお主を探すのは良い鍛錬になるでござるが、知らぬ街でやるのはどうかと思うでござるよ」

「………………」

「大方、血の匂いに誘われてきたようでござるが、残念だったな。片付いておる」

「…………」

「それとも某と死合うでござるか? 山徒魂と云うは死ぬと見つけたり」

「……」

「―――冗談でござる。こんなところでやるのなら……えきしびじょんまっちのほうがマシでござるか」

「…………」


青い犬はまるでつまらなそうに後ろを向いて歩いていく。

その横についていくカエデアキマ。そっと犬の背を撫でたりした。


犬は気にしていない。それでは―――っとカエデアキマは犬の背に座った。

大剣の鞘の上の脚を揃えて彼女は座るが犬は全く気にしていない。

だがさすがに目立ち、セレストが見つけるのは間もなくであった。


その様子を何の変哲もない男が見ていた。

そしてすぐさま女性に変わると歩き出す。


千の顔を持つ『千面相』だ。




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