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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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従依士《ツカエシ》⑨・トレーニング開始。


キマイラの目玉は大きい。ちょうど野球のボールぐらいか。

採取のときナイフが溶けた。


「…………」


嫌な予感がした。したんだ。

だからナイフの女神様のお守りナイフで目玉の裏側に入れて抉ろうとしたとき。

どろどろっと隙間から溶解液が出てきて煙と音がしたので取り出したら。


ナイフの刃が煙と音を立てて溶けていた。

慌てて放り捨てると完全に溶けてしまった。


「……」

「うわぁ、ひどいですわね」


ルピナスさんが悪気もなく言う。僕はアガロさんのナイフ改でキマイラの亜種の目玉をふたつとも取り出し、大きめの瓶に入れる。


保存液とかあったほうがいいか迷ったのでエリクサーを入れてみた。

なんともグロい。これ素材にするトレーニングマシンってなんなんだ?


シロさんがティーテーブルを担いでやってくる。光の壁は消えていた。


「終わったみたいね」

「うむ。礼を言う」

「ありがとうございますわ」

「ん……ナイス……壁」

「別にこれくらい。ウォフ君。素材はとれたみたいね」

「はい。おかげさまで」

「それなら地上に戻るわよ」


異論はない。僕たちは火のダンジョンを出た。

とりあえず全員で魔女の家へ。


「「「「「「おかえりなさいませ。ご主人様」」」」」」


ムニエカさんがメイドらしく……ええーと。


「こ、これは」

「壮観ですわ」

「ん……ごくろう」

「……た、ただいま」

「面白い趣向ね」


ムニエカさんを中心にシャルディナ以下メノスドールが並んで出迎えてくれた。

ど、どういうこと?


「『トルクエタム』の皆様。シロ様。お風呂の用意が出来ております」

「なん、じゃと……」

「入浴場があるんですの」

「……リヴ……お風呂……しゅき……」

「こちら、案内、します、デス」

シャルディナがぎこちなく喋って案内する。

『トルクエタム』は入浴へ。

シロさんはティーセットをムニエカさんに渡してから入浴へ。

他のメノスドール達もテキパキと家事をしていく。


「ど、どういうことですか」

「何か?」

「シャルディナとメノスドールたちですよ。あれではメイドじゃないですか」

「メイドです。ご主人様。彼女たちはメイドです」

「いやでも……」

「ご主人様。よろしいですか。メイド服を着ていればメイドなのです」

「……そ、そうなんですか」

「それに私めをベースにしているので仕事は出来るんですよ」


確かにメノスドールたちの動きに素人臭さが無い。


「どうしてこうなったんですか?」

「シャルディナたちと話をしました。どうしたいのか。何がしたいのか。尋ねました。すると全員がご主人様の為に働きたい奉仕したい仕えたいとおっしゃりました。なので『ムニエカメイド隊』がここに誕生したのです」


む、ムニエカメイド隊。

僕が困惑していると、シャルディナが頭を下げた。

咄嗟に僕は【静者】を使う。


「よ、よろしく、オルガイシマス、デス。ご主人様」

(イツカ絶対ニ押シ倒スデス。ゴ主人サマ)


なんでだよ。


「あ、ああ、よろしく」


シャルディナはニッコリと微笑むが、一瞬だけ僕に挑む眼差しを向けた。

そしてムニエカさんに指示されて厨房へ行ってしまう。はぁ、やれやれ。


「ムニエカさん。魔女とハイヤーンは?」

「ラボに居ます」

「じゃあ僕も行ってくるか」

「それならば、こちらへ」


ムニエカさんは廊下の一角にある姿見の鏡を示す。

あれ、こんなところに鏡なんてあったか。


しかもどこかで見た……ま、まさか。鏡には鍵穴があった。

僕は自然とムニエカさんに説明を求めるように見た。


彼女は何も言わず、鍵穴を示す。

そうだろうなと僕は鍵を入れた捻った。


姿見の鏡が鏡面が揺れて別の景色をあらわす。

積んだ木箱が目立つ部屋……なるほど。


「繋げたんですね」


この鏡は転移ゲートだ。

僕の家と魔女の家を繋げた。


「はい。魔女とハイヤーンがやりました」


せめて家主に許可をとって欲しかった。

通ると反対側の倉庫に使っている部屋に出る。


ダガアが誕生したときのままだった。

掃除しないとなぁ。そう思いながら見張り塔へ。


1階にある姿見の鏡。転移ゲートを通る。

ラボには魔女とハイヤーンがいた。

壁際にテーブルが置かれ、調合器具と素材で埋まっていた。

魔女はそこで何かを調合している。僕に微笑む。


「おかえりおかえり。ウォフ少年」

「戻ったか。ウォフ」

「ただいま。持ってきました」


机の上に素材の目玉を置くと、ハイヤーンが確認する。


「まさしくこれだ。今から作成するぞ」


ハイヤーンがパネルを操作すると、テーブルが起動。

目玉が瓶ごとテーブルに飲み込まれていった。


空中に現れたディスプレイには数字がパーセントで表示されている。

そして四つのテーブルの中心に台が下からせり上がり、そこには金属製の筒。

筒の両端には目玉か取り付けられていた。


「……トレーニングマシン?」

「よし。ではトレーニングルームへ行くぞ。ウォフ。それを持ってきてくれ」

「は、はい」


筒を手にする。結構、重い。

ラボを出て右手前の扉にハイヤーンが立つと、扉が開いた。

扉の先は殺風景な白い部屋。それなりの広さで入って左に操作室がある。

中心に台があった。


「その筒を中心に置いてくれ」

「ここかな」


台に設置する。ハイヤーンは操作室に居た。


「ウォフ。試運転だ」


そう言うとガコンっと台が下がって床に埋まり、部屋が暗くなって赤い線がはしる。

そして部屋の奥に目玉が浮かんだ。


キマイラの瞳が妖しく光り―――瞬間、理解する。【邪視】だ。

身体が金縛りにあったように動かなくなった。


「……ハイヤーンっ?」

「うまく動いたようだ。今、解く」


金縛りが解けたが目玉は浮いたままだ。


「……」

「あー、ウォフ。説明する。いいか。このトレーニングルームは【邪視】のマシンを入れたことにより、自由自在に【邪視】を発生することができるようになった!」

「なんですって……」


相変わらずオーバーテクノロジーだなぁ、呆れるぐらい。呆れ果てるぐらい。


「ウォフの目的はなんだ?」

「【バニッシュ】を制御する。視線でアルヴェルドみたいにする、です」

「―――そうだ。いいか。トレーニング方法を説明する。一定間隔で【邪視】を発生させ、解く。金縛りになりたくなければ【バニッシュ】で目玉を消去させず、【邪視】だけを打ち消せ。なお目玉は消してもすぐ再生する。トレーニングは1時間で解除される。どうだ?」

「目標は?」

「連続で【邪視】だけを消す。そうだな。最初は10回にしておこうか」


1時間で目玉を消さずに10回連続で【邪視】だけを消す……よし。やろう。


「やってくれ。ハイヤーン」

「ではトレーニングを開始する」


僕は気合を込めた。

1回でも、成功させてやる。


























1時間後。トレーニングルームが明るくなる。


「……1回も……できなかった……」


ちくしょう。でも、やってやる。

絶対にモノにしてやる。


僕はハイヤーンに続けてトレーニングを指示した。





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