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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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194/284

従依士《ツカエシ》⑦・キマイラ亜種。


グッドフレイムボアは口から火を吐き、ルピナスさんが防ぐ。

リヴさんが接近するが牙で阻まれた。


パキラさんが竜巻を起こし、グッドフレイムボアの炎が巻き込まれる。

おお、火炎竜巻。


「すごい」

「余所見は良くないわね」

「すみません」


シロさんに怒られる。

僕とシロさんはファイアウルフの群れに囲まれていた。

グッドフレイムボアが連れていた。赤く燃える狼の魔物だ。


つい戦いの最中に余所見してしまったのにも一応、言い訳がある。

ファイアウルフが取り囲んでいるだけで何もしないからだった。


一定の距離を保って警戒し、唸るだけで何もしない。

こちらから攻撃したほうがいいかと構えたら、シロさんから待ったが掛かった。


「待てとはいったけど、戦いには常に緊張を持ちなさい」

「はい」

「少なくとも、向こうの戦いが終わるまでは動かないわ。待ちなさい」

「終わったら動くんですか」

「ええ、間違いなく逃げるわね」


どう考えてもグッドフレイムボアは、ファイアウルフのボスか護衛だよな。

それがやられたら、逃げるか。


「戦うなっていうのは」

「逃げるなら必要ないでしょう」

「そうですね」


言われるとまあ、うん。

シロさんは気にせずグッドフレイムボアを見上げて言う。


「あの猪。この階層の魔物じゃないわね」

「確かに……」


苦戦というほどじゃないが『トルクエタム』が手間取っている。

それにグッドフレイムボアはレリックを使っていた。

ところで、グッドフレイムボアって名称なんなんだ。


「ハグレね」

「なんです?」

「たまにあるのよ。階層に合わない強さを持つ魔物が徘徊しているの」

「……たまになんですか」

「ええ、たまにね。運が悪ければの話よ」


つまり今は運が悪いと、あっ、倒した。


「はぁっ、はぁっ、なんでこやつがここに!?」

「ん……つよすぎ……つかれた……」

「はぁーはぁー……もう、よりにもよってハグレとはついてないですわ!」

「お疲れ様です」


僕は3人に小瓶を渡す。

小瓶を受け取ったパキラさんは微妙な顔をしていた。


「これ、あれじゃろ」

「ん……元気……百倍」

「疲労が一気になくなっていきますわ!」

「毎回思うんじゃが、これ、いいんじゃろうか」


パキラさんは飲むのを躊躇っている感じだ。

なんとなく気持ちは分かる。


ルピナスさんとリヴさんは気にしていないけど、ズルしていると思うんだろう。

別にズルはしていない。


それでも疲労が一瞬で無くなるのは卑怯だなと感じるのは理解できる。

ふたりに促されてパキラさんは飲んだ。


空になった小瓶は軽く洗って回収させてもらう。

後でまた入れて渡そう。もっとも彼女たちには別に渡してある。


シロさんは小首を傾げた。


「それ、なに?」

「エリクサーです」

「…………まだ、あるの?」

「はい。ありますよ」


無限のあります。シロさんにも小瓶を渡す。

エリクサー入りの小瓶、大量にありますぜ。


いざ卵からっていうの時間が掛かるから、小瓶分けにして大量所持している。

シロさんは渡した小瓶を興味深そうにみつめる。


「さて行きま」

「助けてくれぇぇっっ!」

「誰かあぁぁっっ!?」


急に叫び声が聞こえた。ふたりとも男の声だ。


「なんじゃ?」

「ん……近場……」


僕は【危機判別】を使用する。

無数の赤い点が見えた。ふたつの白い点を囲んでいる。

方角は、あっちだ。


「こっちです」

「ちょっと待ちなさい」


僕は急いだ。

赤い点が白い点に接近しているのが見えたからだ。


急がないと―――いた。

ファイアウルフの群れにふたりの男性の探索者が包囲されている。


ふたりも剣を手に抗っていて何匹が倒しているが、ファイアウルフの数が多い。

僕はアガロさんのナイフ改を手に参戦する。


「助太刀します!」

「おお、助かるっ」

「子供?」

「は、はい。第V探索者です」

「同じかよっ」

「すげー、どんどん倒していく……」


【静者】を使って的確に僕はファイアウルフを仕留めていく。

これなら【ナイフマジック】を使うまでは無いかな。

男性の探索者たちも奮戦し、残ったファイアウルフは逃げていった。


「ふうぅ、助かった」

「いやーどうなるかと思ったぜ……」


金髪のエルフの男性と黒髪の普遍人族の男性だった。

年齢は20代前半ぐらいかな。見た目は一般的な探索者って感じだ。

ふたりは剣を仕舞って僕に向き直る。


「ありがとよ」

「正直、居なかったら死んでいたぜ……」

「いえいえ、無事で良かったです」


ふたりと僕は握手した。


「俺はジェイムズ」

「ジョンソンだ」

「僕はウォフです」


名乗るとふたりは顔を見合わせた。


「魔女の弟子か!」

「ええ、はい」

「おー……初めて見た」


なんか照れる。

金髪のエルフの男性がジェイムズ。

黒髪の普遍人族の男性がジョンソンか。


なーんかどっかで聞いたことがある声なんだよな。

ジェイムズさんはジョンソンさんを羽交い絞めにして笑う。


「こいつ。魔女のファンなんだぜ」

「お、おいっ、そんなんじゃねえぞっ」

「ファンですか」

「前の祭りのとき難攻不落のブロマイド買っただろ。魔女が当たって喜んでいたじゃねえかっ!」

「おまえだって、『不死身の白薔薇姫』が当たって喜んでただろっ」

「……難攻不落……?」


ブロマイドがあることは知っている。

前世の記憶と殆ど変わらないのも知っている。

難攻不落?


「知らないのか。いや逆に魔女の弟子だからなのか」

「は、はい。なんですかその難攻不落っていうのは」

「第Ⅰ級探索者で絶対に男に落ちない八人の女性探索者のことだ」

「…………え」


落ちないってそういう。

何故か喜々としてジェイムズは言った。


「―――『天蓋の魔女』・『不死身の白薔薇姫』・『一刀両断斎』・『オートドール』・『良識ある獣』・『無口の音楽家』・『探索者騎士団騎士団長』・『緑の護り仔』の八人だ」

「…………」

「どうした?」

「い、いえ、なんでも」


変な汗が出た。その八人のうち半分ほど……知り合いです。


「そういえば、あっ、ウォフでいいか」

「いいですよ」

「ここには何をしに」

「こんなところにいたの」


シロさんが少しムッとした様子で現れる。


「あっ、シロさん」

「!?」

「へっ!? ふ、ふふふ、ふ、『不死身の白薔薇姫』……っ!?」

「なに、このふたり?」

「さっきの悲鳴のふたりです。ファイアウルフの群れに襲われていて」

「そう。助かったならもういいでしょう。行くわよ」

「は、はいっ」


そうだ。僕は向き直る。


「あの、ジェイムズさん。ジョンソンさん。お話、楽しかったです」

「お、おう」

「あ、ああ」

「じゃあまた。ん?」


シロさんが僕の手を握り、軽く引っ張るようにして立ち去った。


「な、なぁ、見たか」

「本物……初めて見た」

「最後、手を繋いでいたぞ」

「指を絡めていたな」

「……指を絡める……あ、あれが魔女の弟子」

「魔女の弟子すげえ……な」


後日、シードル亭で会ったとき、何故か僕は『ウォフさん』と呼ばれた。


「あ、あの……手」

「嫌なの?」

「嫌じゃないですけど」


握られた手は僕より小さく柔らかくひんやりとして気持ち良かった。

しかも指を絡めてきて、しっかり手を繋いでいるのが実感する。


「シロは、あの日のことをよく覚えているわ」

「あの日?」

「一緒にご飯食べたことよ」

「ミルクチーズライス」

「あれ好き」

「お代わりしてましたね」

「優しい味は初めてだったの」

「また今度、行きますか」


前より混んでそうだけど、またVIPルームになりそうだけど。

シロさんはクスクスっと笑う。


「あなた。魔女の弟子以前に不思議なひとね」

「そ、そうですか?」

「チャイブのあんな顔……あんな態度……初めて見たわ」

「チャイブさん?」

「ムニエカもそう。あの鉄面皮が感情豊かになっていたわ」

「あはは……」

「魔女も、そうね。変わったわ」


シロさんは僕を見ているが、その眼差しはどこか別の遠くを見ているようだ。

そして手を離す。すかさず僕は離れた手を握った。


驚くシロさん。真っ白い瞳が猫みたいに大きく開く。


「もう少し……繋いでいたかったから」


本音だった。でも自分でも自分自身の行動に吃驚した。

離れた女性の手を繋ぐなんて、未練がましい。


「本当に不思議なひとね。魔女の弟子」


シロさんは愉しそうに指を絡める。

























10階。

キーパーのサラマンダラは本当にアッサリと終わった。

サラマンダラの炎の牙をルピナスさんが防御。

パキラさんが風でサラマンダラの全身の火を吹き飛ばす。そして。


「ん……そらの型……すばる……マイアブレード……」


丸裸になったサラマンダラをリヴさんの赤い斬撃が真っ二つにする。

その様子に一瞬だけウナギのかば焼きが連想された。


サラマンダラを食べたいとは思わないが連想されてしまったんだ。


『トルクエタム』のコンビネーション。

特に今の戦いは実に流れるような美しさがあった。

シロさんも褒めた。


その後も順調だ。

さすが彼女たちは何度も行って慣れているからスムーズだ。


そしてやってきました。13階。

そこは黒い溶岩壁で囲まれた迷路だった。同じ壁が続いていて余計に迷う。


「ここが迷路で無ければのう」

「ん……複雑……怪奇……」

「迷路で阻まれて、いつも取り逃がすんですの」

「ああ、なるほど」

「キマイラも多いんじゃ。まあ更に下層のパイロキマイラみたいにレリックは使わないがのう」

「……キマイラ……嫌い……っす」

「キマイラ亜種も腹立たしいですわ。【邪視】が本当に憎たらしいですわ」


迷路を歩きながら『トルクエタム』の愚痴が止まらない。

それを聞いたシロさんもキマイラには思うところがあるのか悪口大会になった。

フロストキマイラの悪口がこれでもかと出た。どれだけ嫌いなんだろう。


僕は聞き頷きながら【危機判別】を使う。念の為に【フォーチューンの輪】も使用。

所々に緑と黄の光と青があった。

宝箱かな。うーん。壁に阻まれていて容易に行けないな。


「あっ! 前に沢山、敵がいます」


前方に複数の赤い反応。少し離れて黒がひとつだけある。

シロさんと何故かスイーツ談義していた『トルクエタム』は臨戦態勢になった。


急に開けた場所にキマイラの群れがあり、奥に真っ白いキマイラが見える。

アルビノのキマイラ。亜種だ。


書籍化の情報⓪です。

ありがとうございます。


レーベルはSQEXノベルになります。

あのスクエニ様です。


イラスト作者様は香村 羽梛様です。

ありがとうございます。


トップページのリンクです。

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/


『来月予定の新刊予定』に、こっそりとあります。


イラストなどを含めた続報は順次公開していきます。

よろしくお願いします。

ご期待くださいっ!


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