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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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193/284

従依士《ツカエシ》⑥・火のダンジョン。


昼食前。

話を聞くと、キマイラ亜種は未だに討伐できていない。

キマイラ亜種はキマイラと群れで行動する。

発見してもキマイラを囮にしてすぐ逃げてしまう。


それの繰り返しでラチが明かない。

そこで僕のレリックの出番というわけだ。


「【危機判別】をうまく利用するのですか」

「それとフォーチューン系統のレリックがあったじゃろう」

「ああ、あれは生き物には反応しないんですよ」

「なんじゃと、しかしモノケロスのときは反応しておったじゃろう」

「あれはモノケロスの角に反応していました。モノケロス全体じゃないですね」

「ふうむ。なるほどのう」

「キマイラに何か角とかそういうのがあれば反応すると思うんですけど」

「あったかのう? とりあえずそれ抜きにしても、ウォフには協力してくれると助かるのじゃが」


僕は魔女を見た。


「ああ、ああ、うんうん。心配いらないねえ。おそらくアルヴェルドが襲ってくることは無いと思うねえ。だけど、そうだねえ。念の為に誰か第Ⅰ級を護衛にするかねえ。それならウォフ少年も火のダンジョンに行けるねえ」

「あっはい。わかりました。パキラさん。僕で良ければ力になります」

「よろしくのう」


僕はパキラさんと握手した。


「それではそれでは、コンの番だねえ。ウォフ少年。アルヴェルドはどうレリックを使っていたのか覚えているかねえ」

「どうって……レリックを唱えていました」


言われて、ふと思う。なんでレリックを唱えたんだろう。

唱えなくてもレリックは使える。

それなのに唱えたということは、それが必要なプロセスだったのか。


「ふむふむ。他には?」

「……えーと」


あいつは確か……『何故、形作る? 見て呼べばいい』と言っていた。


「見て呼ぶ? でも意味が分からなくて」

「ふむ? なんじゃ? 何の話じゃ?」


パキラさんが首を傾げる。僕は説明した。

パキラさんは頷く。


「なるほどのう。ウォフは属性レリックが無いからのう」

「どういうことです?」

「考えてみよ。属性はどうやって使っておる?」

「えーと……すみません。わかりません」

「では実演してやるかのう」


そう言うなりパキラさんは中庭に出た。


「さすがに火はまずいから、風にするかのう」


パキラさんは唱えた。


「来い。【ウインドエッジ】」


風の刃を放つ。そして僕を見た。


「なにか気付いたかのう」

「唱えてました」

「それだけかのう」

「……ええーと……すみません」

「視線じゃ。見た方向に風の刃を放った」

「視線ですか」

「基本じゃがな。視線で方向を決めて唱えることにより発動する」

「…………」


そうだ。僕はシャルディナを見て唱えて―――同じだ。

そうか。これが基本だったのか。


「うんうん。それが基本だねえ。ただしウォフ少年の懸念は力の制御が出来ないことだねえ。制御というかコントロールだねえ」

「は、はい」

「そこで我の出番だ」


ハイヤーンが出てくる。

いつものように無駄に自信満々だ。


「ハイヤーン」

「魔女から聞いてな。データベースを確認したら、【邪視】を使ったトレーニングマシンを作成できることが分かった」

「トレーニング……マシン……?」

「更に調べたら、なんとラボのトレーニングルームを開放できたんだ。そしてトレーニングルームの機能にレリックの訓練プログラムがあってな。プログラム内容に視線によるレリックの調節や操作があり、それに用いるのがトレーニングマシンだ」

「そんなことが」


そこまで出来るのか。ラボ。


「トレーニングマシンには、必要なモノがある。それが【邪視】が宿っている目玉だ。ここら辺ならキマイラの亜種だな」

「目玉を採って来いってことか!?」

「そういうことだ」


僕はパキラさんを見る。


「構わぬ。わらわたちは討伐できれば良い」


そういうことか。納得した。

行こう。火のダンジョン。


火のダンジョンはハイドランジアの西にある。

西に向かうと段々と緑は無くなりゴツゴツとした岩場が現れる。


蒸気がいたるところから吹き上がり、地熱で周辺が暑い。

鎧なんて着てたら火傷しそうだ。


だからここではいつも鎧姿のルピナスさんも軽装だ。

なんだか新鮮な感じがする。


「ミネハさん。来られなかったんですか」

「ん……急な用事が出来た……とかで」

「仕方ないのう」


ダガアも一緒だとか。

そういえばミネハさんのお母さんも第Ⅰ級だから来るんだよな。

従依士ツカエシの希望表にもミネハさんの名前があった。


「火のダンジョン。初めて入るわ」


シロさんが入り口を見上げて言う。

ティーテーブルを背中に背負った白いドレス姿は異様に目立つ。


僕の護衛として名乗りをあげたのが彼女だった。

魔女とムニエカさんはハイヤーンを連行してラボへ向かって行った。


ムニエカさんはメノスドール。シャルディナについて。

魔女は分からない。


「まさか第Ⅰ級の方に同行してもらえるとは思いませんでしたわ」


ルピナスさんがやや緊張した面持ちで言う。


「勘違いしないで。シロはウォフ君の護衛。他は手出ししないわ」

「それでよい。これはわらわたちの問題じゃからな」

「ん……でも……自己紹介……オッス、リヴはリヴ……『トルクエタム』の……メンバー……やってる……よろしくな」

「『トルクエタム』のリーダー。ルピナス=ロードデントンですわ」

「パキラじゃ。同じくメンバーじゃな」

「シロ=ホワイト=ヴァイス=ブランシュ=アルブム=セフィド。第Ⅰ級探索者しているわ」

「知っておる。『不死身の白薔薇姫』じゃろ」

「『トルクエタム』も知っているわよ」

「あら光栄ですわね」

「頑張っている女の子は好感がもてるから」

「嬉しいのう。ところでウォフと近過ぎないかのう?」


シロさんは僕の腕にピッタリとくっついていた。

柔らかく真っ白だからかひんやりとする。


「それは護衛だからよ」

「ん……ボディ……ガードすぎる……」

「わたくしも、あまり男女が密着するのはどうかと思いますわ」


ルピナスさんが頬を少し赤くして苦言を呈する。

シロさんは残念そうに離れた。パキラさんが僕をジト目で見る。


「な、なんですか」

「随分と仲が良いのじゃな」

「僕もそう思います……」


なんでだろうって戸惑いが大きい。


「さて、わたくし達が向かうのは13階ですわ。度重なる調査の結果。そこにキマイラの亜種は潜んでいるのが判明しましたの。もっとも潜んでいる場所が分かっていても討伐するのは困難ですわね」

「分かっているのにですか?」

「行けば分かる。ウォフ。ルートの説明をするぞ。まず、わらわたちは4階まで向かう。そこで転移して9階。9階から10階まで行き、そこで転移して13階じゃ。それでじゃ。10階にはキーパーと呼ばれる魔物がおる」

「キーパー?」

「たまにダンジョンにあるのよ。門番みたいに次の階層を守るのがね」


エリアボスってやつかな。

そんなのも居るのか。


「サラマンダラ。でも大したことない魔物ですの」


何回も調査に行っているからそうなんだろうな。

名前からして炎の蛇かな。


「ん……だけど……油断しちゃダメ……ダンジョンは何があるか……分からない」

「は、はい」


僕は気を引き締めた。

まずは4階だ。






















火のダンジョンは溶岩窟だ。

黒くゴツゴツしていてどの階層も変化があまりない。

常に地熱で暑くジメジメしていて、出てくる魔物も赤く燃えていた。


4階。黒い岩の地面と低い岩の天井にいくつもの光球が浮いている。

リヴさんの光球だ。


「良いパーティーね」

「そうですね」


僕とシロさんは『トルクエタム』の戦いを眺めていた。

ルピナスさんが盾を構え、リヴさんがブレイドを光らせ、パキラさんが杖を振るう。


「役割分担がしっかりしている。コンビネーションもいいわ。なによりも目だけで互いに理解して動けるところがいいわね」

「アイコンタクトですか」

「ええ、素敵ね。だけど惜しいわ」

「なにがです?」

「それはたぶん彼女たちも分かっていると思うから言わないわ」


惜しい……か。

『トルクエタム』が戦っているのは赤い肌のゴブリンだ。

レッドゴブリン。

久しぶりに見たが相変わらず餓鬼にしか見えない。


肌が赤い以外は何も違いはなさそうにみえる。

だがこの赤い肌が少々厄介で熱に強い。


それがわらわらと出てくる出てくる。

軽く数えて20匹以上はいた。


ゴブリンは雑魚じゃない。

銅等級中位。湧いてくる敵としては適度に強く鬱陶しい。


ルピナスさんが盾を構え、相手の攻撃を弾き、その隙をリヴさんが斬る。

そしてパキラさんの属性レリックの風が切り刻む。


そのパターンを巧みに繰り返して数を減らしていく。

攻撃の要はパキラさんだ。


彼女の属性レリックは『魔法』と同じで大多数を攻撃できる。

その属性を快適に発動させる為、ルピナスとリヴさんが動いていた。


属性の攻撃は大規模になるほどクールタイムがある。

パキラさんは確かふたつの属性【火】と【風】を所持していたはず。

火のダンジョンは熱に強いのが多いから【火】は使い辛いと聞いた。


属性か。

ハイヤーンは属性のプレートは作成できると言っていた。

現段階では【火】・【水】・【風】は量産できるという。


僕も【火】は欲しいと思ったので頼んだら警告された。


レリックの所持数は魂の器の大きさと比例する。

魂の器が大きければ大きいほど、それだけレリックが所持できる。

器の大きさを無視してレリックを所持すれば、魂の器が崩壊しかねない。


魂の器が崩壊すると魂が開放される。すなわち死だ―――初耳だった。

それと魂の器を人工的に大きくする計画は何度も立ち上がって潰れている。


そしてレリックも強力なほど魂の器を占める割合が大きい。

最も割合を占めるレリックは、やっぱりか。【疑似化神レリック】だ。

それとラボのデータベースに魂の器をグラフ化する装置の設計図があるらしいが。


「終わったみたいね」


気付くとレッドゴブリンは全滅していた。

彼女たちに怪我はなかった。


「やはりもう少し強力な攻撃が欲しいですわね」

「確実に倒せてはいるが時間が掛かっておるのはのう」

「ん……今後の課題……」

「ミネハみたいにワタクシも……」


んん? ルピナスさん。いま僕を見なかったか。

気のせいか。


この調子で僕は特に何もしないまま、9階へ。

9階は夕日のような赤黒い空と火山近くに巨大過ぎる黒壁が聳えていた。


近くに黒い焼けた城があり、その上空を黒い翼の魔物が飛んでいた。

そして溶岩の河。まるで地獄の光景だ。


それらを背景に四つ目をした炎の雄々しい巨猪。

グッドフレイムボアと『トルクエタム』が戦っていた。


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