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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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188/270

従依士《ツカエシ》①・その名はウォフ。


1週間が過ぎた。

早いな。あと2週間ちょっとで祭りが始まる。

正直、僕にとって『グレイトオブラウンズ』は祭りという認識しかない。

間違っていないし多くの人間にとってもそうだろう。


まったく関係ないわけじゃない。

魔女が第Ⅰ級探索者で僕はその弟子だ。


でも当事者じゃないからあんまり関係ないと思っている。

今の僕はアルヴェルドに勝つことが目標だ。


あれからも毎日のレクチャーは続いている。

ただし倒す回数は午前10回で午後5回に減った。


「……はぁー……はぁーはぁー……」


最近、倒れないようになった。

そして1日に1回ぐらいで戦っているシャルディナが地に沈む。

倒したけど彼女は五体満足だった。それに違和感を持つ。

いつもなら角が折れたりしている。


「……なんか強くなってないか?」


ミノスドールは戦力に差はないはず。

なのに今日は見ているだけだったが手強かった。


うっ、そのとき。《《シャルディナと目が合う》》。


あれ、なんで目が開いているんだ? 他のミノスドールは目を閉じている。

視覚が無いので開ける必要はないからだ。


それなのにシャルディナは僕を睨んでいた。

しかも青白い生気溢れる瞳だ。んな馬鹿な。


(……次ハ……押シ倒ス……デス)


え?


「へ?」


そして消えた。

ミノスドールは倒すと一定時間で消える。それはいい。


「…………」


あれってやっぱり……いや、よそう。考えるのはやめよう。

次から次へと対応しきれない。


とりあえず特に理由は無い。理由はないけど。

ムニエカさんにシャルディナを出すのは禁止させてもらおう。

さて昼だ。その前にお風呂に入って汗を流す。


その後はムニエカさんの昼食が待っている。

彼女の料理は美味しい。レパートリーも豊富だ。


17歳の頃のミノスドールを出したときに説明された。

世界中を回って料理の修行をしながら探索者をしていた頃だと。


当時はまだメイドという天職を見つけて無かったともいわれた。

それは今も別に―――風呂から上がると、魔女が帰ってきていた。


全員ダイニングルームに居て、んん? なんだろう。

巻物じゃない。全員が紙を見ている。


探索者ギルドは十数年前に巻物を廃止して紙に移行している。

資料室では現在も巻物の記録を紙に写している作業が続いているという。


「……皆さん?」


なにか様子が変だったので躊躇いがちに尋ねる。

魔女もシロさんもチャイブさんもムニエカさんまで紙をジッと見ている。


皆が同じ紙ということは第Ⅰ級探索者関連なんだろう。

何が書いているのか気になるけど、僕には関係がない。


お腹が空いているから席に着く。

昼食は既に並んでいる。一斉に全員が僕を見た。


「えっ、あ、あの……?」


全員が困ったような、どうすればいいかみたいな表情をしている。

それと互いにこうバチバチとしている。


ムニエカさんが僕をご主人様と呼んだときみたいな雰囲気を感じた。

なにが起きているんだ。ふと魔女が紙をテーブルに置いて僕を見た。


「さてさて、ウォフ少年は従依士ツカエシというのは知っているかねえ」

「なんですそれ」


いきなりなんだろう。


「ではでは、コンが説明しようかねえ。従依士ツカエシとは、『グレイトオブラウンズ』において第Ⅰ級探索者に仕える助手や雑用係のことでねえ。開催中は常に一緒にいる存在なんだねえ」

「なるほど」

「まー大体は部下とか友達とか身内とかー、そういうを選ぶんだよねー」

「選ぶ?」

従依士ツカエシは指名制なのよ。指名するとこの希望表に名前が載るの」

「へえー……」

「ご主人様もご覧ください」


そうムニエカさんが場の空気を震わせて希望表を僕に見せた。

どれどれ。






『グレイトオブラウンズ』。従依士ツカエシ指名希望表。


『グランドギルドマスター』アルハザード=アブラミリン・(ウォフ)


『剣の剣』(セレスト)


『天蓋の魔女』(ウォフ)


『オートドール』ムニエカ=エルドラド・(ウォフ)


『破壊の崩者』アルヴェルド=フォン=ルートベルト・(レオルド)


『海元卿』ギムネマ=シルベスター・(ギルド)


『不死の白薔薇姫』シロ=ホワイト=ヴァイス=ブランシュ=アルブム=セフィド・(ウォフ)


『良識ある獣』チャイブ・(ウォフ)


『妖精女皇』ルリハ・(ミネハ)


『無口の音楽家』ディメロ=サイレンス・(パプリカ)


『ジェネラスの再来』ナーシセス=ユートピア・(ウォフ)


『ダンジョン屋店主』ジョン・(ディド)


『竜眼の女傑』ドラロフ=フレイムタン・(チェルヴェニー)


『緑の護り仔』ゼレナ・(ギルド)


『一刀両断斎』カエデアキマ・(小烏丸)


『ナイトメアパレード』クロウ=ディスター・(ギルド)


『流離いの吟遊詩人』サアァオイン・(チキチィタ)


『アフターライフビジョンシステムverβ』・(ギルド)


『水風の舞姫』ロリーフ=ギルバランド・(ギルバルド=ドゥ=ギルバランド)


『土っハ』ドッハ・(ギルド)


『千面相』・(ギルド)


『探索者騎士団騎士団長』ピアニー=モンクシュッド・(ハルス=ビンドウィード)


『ストレンジ料理人』ジェフ・(ギルド)


『六属性使い』ジークス・(エアー)


『飄々隆々』ケッサイ・(ギルド)


『人間要塞』ヴォーバン=フォルトゥレス・(ギルド)


『オモキチカラヲエタモノ』グラビス・(ギルド)


『滅剣』アガロ・(アリファ)


『黒呑み』メガディア=メガロポリス・(パキラ)


『深淵の底渡り』エンス=ハイラント・(アクス)


総勢30名。なんか所々気になるのはあるなぁ。


「……えーと、この()がその従依士ツカエシに指名されたひとなんですね。ギルドっていうのは?」

「それはそれは、ギルド職員だねえ。特に何も指名が無いときはそうなるねえ」

「なるほどなるほど…………へえ、メガディアさんはパキラさん指名か。あっ、ミネハさんはそうかお母さんが……あれ、アクスさんの名前がある?」


エンス? この並びだと今回の昇級者だ。

なんでアクスさんを指名しているんだろう?


「魔女。なんでアクスさんが?」

「ああ、ああ、うんうん。それは、近々分かるから今は何も言えないねえ」

「そうですか」


なんだろう。


「ねえーウォフっち。一番気になるのあるよねー」


チャイブさんが突き付け、シロさんがため息をつく。


「ハッキリ言って前代未聞よこれ」

「私めも初めてみました」

「…………」

「さてさて、これはこれは、一体どういうことかねえ」


魔女が僕ではなく他の3人に言う。黙る3人。

僕は観念した。


「なんで僕の名前があちらこちらにあるんですか……」


全部で6人が指名している。

しかも男性1人で女性が5人だ。

そしてその内の4人がここにいる。


「シロは言ったわよ。ふたりっきりのとき覚えているわよね。君に決めたって」

「確かに言ってました」


食事した後に言われた。

そうか。これのことか。


「ボクもふたりっきりのとき言ったねー、指名するってー」

「言いました」


壺風呂に入っていたときだ。

その、おふたりとも、ふたりっきりを強調するのやめていただきたい。

ムニエカさんはごく当然と言った。


「私めは言っておりません」

「言ってくださいよ」


いやそういう問題じゃない。言うか言わないということじゃない。

ムニエカさんは丁寧に頭を下げる。


「もうしわけございません。ご主人様だから主従なので言わなくてもいいと思っていました」


いやあの、そもそも、その主従も勝手にやっていることでは?


「コンはコンは、他の連中と違って別に言わなくてもいいんだねえ。ウォフ少年はコンの弟子だからねえ。コンの弟子だからねえ!」


二度、言った。気のせいか。

魔女はどこか焦っているように見えた。

でもその通りだ。

あえてナーシセスを無視する僕たち。


「ところでところで、なんでアブラミリンのジジイが指名しているんだねえ」

「あー、なんでだろうねー、いやホントマジでー」

「シロもビックリしたわ」

「私めも思わず二度見しました」

「……なんで?」


ホントなんでぇ?

そしてこの希望表は第Ⅰ級探索者全員が持っている。

つまり第Ⅰ級探索者全員がこの事を知っているわけだ。


はぁ最悪だ。




















深夜。

リビングの黒いソファはすっかり僕のベッドになっていた。

幅広だから不便なく眠れるのも魅力だ。


「……?」


ふいに奇妙な気配を感じて、僕は目を開ける。

魔女がいた。

黒いソファに手と足を付いて僕に覆いかぶさるようにして魔女が見下ろしていた。


ん?


「…………」


ん?


え?






え?


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