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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season3

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魔女の修行①

朝、起きたらミネハさんがいて、ねぼすけ、とデコピンされた。

朝食を一緒に食べる。

食べている間、皆が心配していることを聞いた。


迷惑かけて申し訳ない。

それとクーンハントの総本部が襲撃を受け、半壊になったと聞いた。

魔女たちの仕業と知るとミネハさんは苦笑する。


この4日間、眠り続ける僕を心配しつつ、依頼の調査も進んだという。

もう少しでキマイラの亜種と接触できるらしい。


あと僕が誘拐されかけた翌日、僕の為に1日調査を休んだ。

本当に申し訳ない。

ジューシイさんとレルさんとアクスさんとホッスさんが昨日、来た。

今朝の雑肉スープはホッスさんの作り置き。美味しい。


ジューシイさんは毎日で今日は家の仕事があるから来られないという。

弓の練習、約束したの破ってごめん。


「それにしてもアタシはともかく、あんたが誘拐されそうになるなんてね」

「ははっ…………ですよね」

「しかも『破壊の崩者』とはね。それで今後どうするの」

「しばらく魔女のところに居ることになりました」

「そう……」


ここも安全じゃない。アルヴェルドが襲来する可能性がある。

魔女の家なら少なくとも襲撃されても対応できる。


「すみません。家のこと頼めますか」

「いいわよ」

「あとダガアもお願いします」

「そうね」

「ナ?」

「待て。我をサラっと無視するな」

「……すみません。これと一緒で」

「はぁ、ほんとね」

「ちょっと!?」


ミネハさんは僕を見る。何か言いたそうにジッと見つめてから。


「あんた。強くなりなさいよ」

「はい」


朝食が終わって荷物をまとめたところで迎えが来る。

魔女の代わり。僕の護衛に来たのはムニエカさんだった。


相変わらずの皺ひとつない白と黒のスタンダードなメイド姿。

そのたぐいまれな眉目秀麗の容姿も相まって完璧ともいえる。


「それでは行きましょう」

「よろしくお願いします」


僕たちは魔女の家へと向かう。


「まぁ心配しなくてもあのプライドの高い男が襲ってくることは二度とありません」

「知り合いですか」

「同じ第Ⅰ級として見知っている程度です。ご主人様」


ムニエカさんは第Ⅰ級探索者の『オートドール』ってちょっと待って!?


僕は周囲を見回した。

ムニエカさんに無数の男たちの視線が注がれているが、バレてはいない。


「な、なな、なんですか。そのご主人様って!」

「私めはメイドでございます」

「そ、それは、そうなんですか?」

「どうして疑問符をつけるのですか。どこからどう見てもメイドでございます」

「……見た目は」

「中身もでございます」


そう銀色の瞳を光らせる。彼女はエッダだ。なので本来は紫の瞳。

だけどレジェンダリーで瞳の色を変えている。


例外なく貴族であるエッダがメイドをするのは何か問題があるらしい。

ちなみにエッダで孤児院で働いているシスターがいる。


でも彼女は紫の瞳のままなので問題ないようだ。

それともムニエカさんがエッダのままメイドをするのが気に入らないのか。


「……それで、どうして……ご主人様なんて」

「最初は坊ちゃまとお呼びしようと思いましたが、何かしっくり来なかったのです。それと実はご主人様はしっくり来た2位なのです」

「2位? 1位は?」

「旦那様でございます」

「それは絶対にやめてください」

「かしこまりました」


頭が痛くなった。あれでも。


「レオルドは普通に呼び捨てでしたよね」

「あれはそれが一番しっくりきました」


分かる気がする。僕も呼び捨てだし。


「あっ、そういえばレオルドの護衛はもういいんですか」

「はい。昨日クーンハントの総本部にでっかい契約中断を送り付けてきました」

「……あはは……」

「卑劣な行為は許せません。ですがレオルドは何も知らなかったようです」

「アルヴェルドは指名依頼と言ってましたからね」

「そのアルヴェルドの行動について色々気になることはあります。彼にしては今回の誘拐未遂はえらく雑で突発的で、彼らしくないところが多いのです」

「―――言われると腑に落ちないですね」


その辺は僕も気になる。

アルヴェルド=フォン=ルートベルト。


悔しいが負けた身として思う。

彼は本当にあのクーンハントのクランマスターなのか?


とても悔しいが彼は……はぁー褒めたくないが完璧に近い。

ムニエカさんと同じタイプだ。

だからこそ彼女は違和感を覚えたのかもしれない。


「ところでご主人様」

「は、はい」


慣れないなあ。


「魔女から話は聞いております。オートタイプのレリックを持っていると」

「はい。あります」

「無意識系とも伺っております」

「はい。扱いが難しくて」

「ええ、【サイレントムーヴ】―――かくいう私めも所持しておりました」

「えっそうなんですか」


彼女も? いやでも過去形だ。


「はい。現在は進化して【オートムーヴ】となっております」

「……【オートムーヴ】……進化……ですか」

「レリック【オートムーヴ】は無意識ではありません」

「それは!?」


目を見開く。

つまりそれは僕の【サイレントムーヴ】も可能性があるということだ。

ムニエカさんは自分の紅に染めた唇に指をあてて、淡く笑みを浮かべた。


「ご主人様は強くなりたいと伺いました。私めで良ければ協力いたします」

「よ、よろしくおねがいします」

「かしこまりました。ご主人様」


慣れずに顔を赤くする僕。ムニエカさんはクスリっとする。

僕、遊ばれてない?














魔女の家。

てっきり魔女が居ると思ったけど不在だった。

リビングに荷物。とはいってもリュックひとつだけ。置いて中庭へ。


既にムニエカさんが待っていた。

ん? なんか……浮いている……白い球?


「それではご主人様。カリキュラムを説明します。まずご主人様には毎日、最低10回以上。【サイレントムーヴ】を使用していただきます」

「10回以上っ!?」

「はい。戦ってもらうのは」


パチンっとムニエカさんが指を鳴らすと、浮いている白い球の側面が赤く輝く。

青色のミノタウロスがあらわれた。


「!? ミノスユニットっ?」

「さすがご主人様。ご明察でございます」

「その球は、ま、まさか無限増殖……コアシステム……ですか」

「左様で御座います。スケベウサギもといハイヤーン様に頼んで制作していただきました。ミノスドールの有限増殖コアシステムでございます」

「ミノスドール?」

「はい。こちらはサンプルです。本番は」


パチンっと指を鳴らす。青色のミノタウロスか消え、次に現れたのはメイドだった。


「……えーと」


真っ白い肌の女性で髪は金色で長く、顔はムニエカさんに似ている。

青い牛の角を生やし、ムニエカさんと同じ白黒のメイド服を着ていた。


「こちら、ミノスドールです。ベースは私めが務めております」

「……ハイヤーンが指示したのですか」

「いいえ。全て私めの指示で作成してもらいました」

「た、戦うんですか」

「もちろんでございます。ミノスドールの強さは通常ミノスユニットから最新型のミノスユニット。それと古式ミノスガーディアンまでとなっております。魔物の脅威度でいえば銀等級上位までです。最新型のミノスガーディアンは金等級に入ります」

「……銀等級上位」

「驚くことではありません。御主人様が討伐しようとしているアルヴェルドは通常時で魔物の脅威度なら黄金級上位に匹敵します」

「討伐しようとはしてませんが」


魔物かアイツは。

そんなに強いのか。覚悟していたけど、それほど強いのか。

ん?


「通常時?」

「本気ならば宝石級中位にも届くと思います」

「…………それもう人外じゃないですか」

「さようでございます」


僕はそんなのに勝とうとしているのか。

いいや。勝つぞ。そうだ。ムニエカさんなら知っているかな。


「あの、ムニエカさん。僕、どうしても気になることがあるんです」

「なんでしょうか」

「アルヴェルドが言ってたんです。僕のレリックと彼のレリックは同じタイプで、僕はレリックでたぶん形作っていて目線で使わず呼びもしない……そう言ってました」

「ナゾナゾみたいですね」

「僕もそう思いました。悔しいですけど、これたぶん。ヒントなのだと思います」


僕のレリック【バニッシュ】はあいつの【クラッシュ】に相殺されたが、あいつは何もしてなかった。ただ唱えただけで、それだけで【バニッシュ】が消された。


同じタイプなら僕にも同じことが出来るはずだ。

そしてそれを習得できないと僕はアルヴェルドと同じステージに立てない気がする。


つまりこのヒントから習得しないと僕はあいつに勝てない。

だから絶対に解き明かして習得してみせる。


あいつと戦い、勝つために!



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