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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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プレリュード①

あれから10日が過ぎた。

新しいダンジョンの異変であるミノスユニットの残務処理はまだ終わっていない。

ギルドは再開したけど、街のダンジョンは相変わらず閉鎖中だ。

唯一決まったのは《《ダンジョン12階は完全に崩落して立ち入り禁止になったことだ》》。


それに関して色々と思うことはある。崩落は僕がやったことだ。

さていま現在、僕はラボにいる。アークラボで肉を焼いている。


なんでラボで肉を焼いているか。

それは今日の焼肉パーティーの会場がラボだからだ。


ラボのゲートはもう12階にない。

僕の家の見張り塔の1階に設置し直された。

これで自宅からいつでもラボへ行ける。


「あのあの、ウォフ様が焼いたお肉、とっても美味しいです!」

「良かったです。まだまだあるので食べてください」


ジューシイさんがニッコリと僕の焼いた肉を食べている。

どういう仕組みか分からないが、テーブルがホットプレートみたいになっている。


テーブルの半分に肉とかの食材と飲み物が置いてあり、もう半分で焼いていた。

ふいにミネハさんが飛んできて、真下の肉を指差す。


「ねえ、これもう食べられる?」

「あっ、はい。それはもう大丈夫です」

「のう。この野菜はまだか?」


パキラさんが横から肉ではなく焼き野菜について尋ねる。


「それも、あーもうちょっとですね」

「ウォフ君も食べるっス!」


いきなり後ろから肉串を僕の口に入れようとするのはビッドさんだ。

しょうがないので食べる。うまい。


「おいひいでふ」

「うんうん。ウォフ少年。コンの厳選6種盛り召し上がるんだねえ」

「あ、ありがとうございます」

「あのあの、ウォフ様。この肉の塊をワタクシ。一緒に食べたいです」

「待て待て。肉ばかりではなく野菜も食べるのじゃ」

「ほらウォフ。これ美味しかったから」

「これも美味しいっスよ」

「ん……少年……食べてばかり……飲め……おねえさんの……飲んで」

「ちょっ、リヴさん!?」


な、なんだこの、僕の周り女の子だらけ。

しかも皆凄く綺麗で可愛くて、あと暖かくて良い匂いがするし。

ん?


「おおっ、アガロさん。第Ⅰ級になるんですかっ!?」

「おうよ。俺とメガディアともうひとりだ」

「もうひとりだべか」

「ああ、もうひとりだ。誰か分からん」

「なんにせよ。めでたい。7番目の姉と12番目の妹の頭ぐらいめでたい」

「それ、めでたくもなんともねえべ。つか、向こうに姉と妹がいるのに話さなくていんべか」

「言うな。ジューシイとは後で話す」


向こうでアガロさんとアクスさんたちが野郎だけで盛り上がっている。

ホッスさんとレルさんもお酒を飲んで楽しそうだ。


そうか。アガロさんとメガディアさん。第Ⅰ級になるのか。

おめでとう。


「うめぇなこれ」

「ナ!」

「ただ焼くだけでも美味しいですわ」

「ナ!」

「おっ、ダガア。もっと食うか?」

「ナ!」

「うふふっ、かわいいですわ」


ルピナスさんとシェシュさんとなんでかダガアが一緒に食べている。

ふたりとも歴とした貴族令嬢だけど……なんか不良とお嬢にしか見えない。


「ああ、うん。そうなんだけど、あの、その、シェシュが吊るしているウサギ。喋っていない?」

「気のせいですわ」

「普通のウサギが、乳、尻、ふとももって叫びながら抱きついてくるかよ」

「ああ、うん。それはそうなんだけど」


ドヴァさんが吊るされているハイヤーンを複雑そうに見ている。

あいつ。シェシュちゃんに抱き着こうとしたの? すげえな。

ワイワイガヤガヤと皆、楽しそうだ。


女性いっぱい呼んでパーリーしたいとあのウサギが言ったからこうなった。

肉は持ち込みにしたら何故かとんでもない量もになる。

僕としてもアクスさんやリヴさんに事の顛末を説明しないといけない。

それと女性陣だらけっていうのもなぁ。


そうしたらホッスさんとレルさんが無事に戻って来れた。

なので誘ったらアガロさんもきた。


それと同じタイミングでパキラさんとルピナスさん。

それとジューシイさんとドヴァさんとシェシュさんも一緒に戻ってきた。

なので誘ったらみんな来た。


なんでもトルクエタムの拠点の屋敷の半分をタサン家の別邸にするらしい。

ちょっと興味かあったので、タサン領どうでしたとパキラさんに尋ねてみた。


そうすると白目でタサン侯爵の城のダンジョンを探索する羽目になったと言った。

城って自宅だよな。城にダンジョンが? ゼカトリアのダンジョン? 


ジューシイさん曰く地下墓所で引き籠もっている一つ上の姉の部屋だとか。

タサン姉妹ってどうなってんだレルさん。


まぁ、それはいいとしてだ。


「皆様。味付けが欲しいひとは言ってくださいませ。各種20種ほど取り揃えておりますゆえ。お勧めは私めお手製のムニエカちゃん特ソースです」

「シロは基本的にお肉はそんな得意じゃないけれど、でもこのスープは好き」


ラボの一角に場違いすぎる真っ白いティーテーブルが置かれている。

その上に20種類の小壺が置かれ、隣で真っ白い少女が雑肉スープを飲む。


メイドのムニエカさんと第Ⅰ級探索者の名前が長いシロさんだ。

なんでこのふたりが? 特にムニエカさん。あっ、こっちくる。


「魔女の弟子」

「は、はい」

「焼いてばかりではなく、もっとたくさん食べなさい。あちらに20種のソースがありますが、このムニエカちゃん特ソースで食べなさい」

「は、はい。ありがとうございます」


更に山盛りした肉へ、ムニエカちゃん……特ソースを沢山かける。


「食べなければ大きくなりませんよ」

「は、はい」

「ちょっとちょっと、ウォフ少年の母親みたいなことするんじゃないねえ」

「な、なにこのメイド」

「あのあの、あの、あの?」

「圧力があるのう」

「なんであのときのメイドさんが居るっスか?」

「ん……おいしい」


な、なんで、なんでこうなる。あっ、あの肉。まだ切っていない。


「あ、あの、この肉、まだ焼いていないので、その、切ってしまいますね」


僕は彼女たちが逃げるようにまだ切っていない肉の塊のところに行く。

そういえばこの死の墓のところから持ってきたナイフ。まだ使って無かったな。


死の墓の最深部にあったけど特に何もないごく普通のナイフ。よし。使うか。

肉は分厚く切断したから薄くするのがいい。なので幅をとって、肉も少し硬そうだ。

それなら一気に振り下ろす。


「待つっス。その肉は骨があって」


ガギンっと何か硬いモノに刃が思いっきり食い込む。

力を入れて引き抜くと同時に―――バキッとナイフが斜めに割れた。


「あの」

「えっ」

「あら」

「おやおや」

「あちゃーっス」


ああっ。

















『山喰い』と呼ばれる宝石級中位の魔物がいる。

それは首が五つある巨大なヒュドラだ。

それぞれ火と風と雷と刃と毒のレリックを放ち、そのひと噛みは山をも食い尽くす。


『山喰い』は近隣の街や村に多大な被害を与えていた。

その巣が民族紛争で不安定地域で険しく深い谷底にある為、討伐は困難だった。


だが近年、民族紛争が終わり『山喰い』の討伐に本格的な動きがあった。

しかし大規模討伐に発展しても『山喰い』を討伐することが出来ず、逆に全滅する。


『山喰い』を決して侮ったわけではない。

討伐隊は第Ⅱ級探索者を中心に実力派を揃えた。


それでも全滅した。

もはや『山喰い』は宝石級上位に届かんとしていた。


そして『彼』は苛立った。羽虫が五月蠅いと思った。

だから羽虫が最も大量にいる場所を壊して沢山の羽虫を殺そうと考えた。


『彼』にとって羽虫殺しは趣味だ。憂さ晴らしでもある。

羽虫は放っておいても増える。だから数年ごとで遊ぶ。


その羽虫にここまでイラつかされるのは我慢できなかった。

そんな怒り心頭の彼の前に―――ひとつの影が現れた。


1時間後。


巣の谷は完全に崩落し、周辺の山も吹き飛ぶ。

そしてこの周辺で一番広い平原に『山喰い』の切断された五つの首。

真っ二つになった巨体がまるで倒された証拠というように堂々と転がっていた。


「お、おおっ……これが……第Ⅰ級の……『剣の剣』……」


その死骸が眺められる崖の上で、第Ⅱ級探索者の男性は打ち震えた。

彼の前には堂々と腕を組み呵呵大笑する大男がいた。

逆立った金髪で筋骨隆々の男だ。


傍らに青髪で褐色肌で耳が長く尖ったエルフの美しい女性が控えていた。

両腰に大小の白い剣を携え、目を閉じて黙っている。


少し後ろに青い毛並みの大型犬がいた。

つまらなさそうに木の幹に寄り掛かって寝そべっている。

その木には長い大剣が置かれていた。


第Ⅰ級探索者。世界最強の一振り。その名称は『剣の剣』という。


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