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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season1

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滅剣④


僕は唖然とする。


「アガロさん……?」

「よう。無事か」

「は、はい。なんでここに」

「話は後だ。囲まれた」


気付くとミミックが僕達を取り囲んでいる。

そして見上げるほど巨大なミミックが待ち構えていた。


「おにいちゃん……」

「大丈夫だよ」

「ウォフ。その子を守れるか」

「はい。守ります」

「いい返事だ」


アガロさんはニッと笑う徳利を腰に付け、後ろ腰のサーベルを引き抜く。

簡易なナックルガードが付いた飾り気のないシンプルなサーベルだ。


布を巻いた雑な柄。簡単なナックルガードに曲がった刀身。

鈍い鉄の色をしていた。似た刃物は包丁だろう。


「んじゃあ、やるか。フレイムタン」


アガロさんが呼ぶと刀身が赤くなって、うっすらと煙がのぼる。

何かを感じ取ったのか。ミミックが一斉に僕達に襲い掛かってきた。


僕は【バニッシュ】を構え、アガロさんはフレイムタンを振った。

ミミックが切断され、消滅する。


「強い……っ!」


これがレリック【滅】で【滅剣】なのか。

そしてあれがアガロさんのオーパーツ。


フレイムタン……なるほど。

確かに舌みたいなサーベルだ。


そしてこれが第Ⅱ級探索者の力。

後はあの巨大なミミックしか残っていない。


「しっかしよぉ。全部予想通りってさすが第Ⅰ級だな……」


巨大なミミックは口を―――蓋を閉じた。

そして揺るがすと蓋を開けて横転した。


「なんだ?」


ミミックの中から人形がぞろぞろぞろぞろと出て来た。

木製の素体と呼ばれる人形だ。

顔はなく簡素な造りだが装備を付けて武器を持っている。

装備も武器もバラバラで整合性がない。


「パペットか」

「魔物なんですか」

「もう魔物だな。パペットポックス。あれに喰われたヤツはパペットになる。強いぞ」

「食われたら……数が多くないですか」


数えきれないほどのパペットがゴミ場を占領する。

これが全員、犠牲者なのか。


「ウォフ。逃げ道はつくってやる。その子を連れて逃げろ」

「アガロさんは?」

「心配するな。これくらいドラゴンよりマシだ」


アガロさんは腕を伸ばす。フレイムタンが燻る。

火炎舌(フレイムタン)が伸びて大きく膨らむ。


「合図したら出口に走れ」

「わかりました」


アガロさんはフレイムタンを振るう。

大迫力でフレイムタンに触れたパペットが何十体も滅した。

ゴミ場に隙が出来る。


「今だ行けっ!」

「はい!」


僕は幼女を抱えるようにして出口へ走った。

パペットがざわざわっと向かってくる。もう真っ赤で何も見えない。


「くっ!」


仕方なくレリック【危機判別】を解除する。

もう一度アガロさんがフレイムタンを大きく振りかぶった。


それでパペットの群れが一掃され、僕と幼女はゴミ場から脱出できた。

そのままダンジョンを脱出する。


ダンジョンの入り口には沢山のひとが居た。

探索者と衛兵と門番と。


「エニー!?」

「あっ、おねえちゃん!」


幼女が僕から離れて少女の元へ走っていく。

泣いて抱き合うふたり。


「よかった……」


疲れた。僕は思わずその場に座り込む。

結局なにも……それよりもアガロさん大丈夫かな。


僕も行ったほうが、よし。手助けに行こう。

立ち上がると同時に動きがあった。


「ほら下がって下がって、ウォフもここから離れろ。危険だぞ」


ガウロさんたちがダンジョンの周囲に居る探索者と野次馬を追い払う。

これじゃあダンジョンに入れない。


無事を祈るしかないのか。

そのとき、ダンジョンの入り口から誰かがやってくる。


「ふぅーったく、これが前座かよ……酒飲みてぇなぁちくしょう」


アガロさんだ。

所々怪我をしているが無事だ。


「アガロさん!」

「おう。そっちは無事か」

「はい! アガロさんは、頭から血が出ていますけど」

「こんなん大した怪我じゃねえ」


角にヒビが入っている気がする。

フォーンのことよく知らないがあれは治るのか? 


「パペットボックスならなんとか倒した」

「す、凄い」


あの性能なら銀等級上位の魔物だろう。

それをソロで倒した。これが第Ⅱ級探索者。


「だがあんなのがゴミ場に出たならもう閉鎖だな」

「そうなりますか……」

「そんな顔すんな。俺が異変を倒すからよ」

「は、はい。お願いします」

「ああ、必ずだ」


頼もしい笑顔を浮かべ、アガロさんは僕の頭を優しく撫でた。

そしてダンジョンは閉鎖された。


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