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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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156/284

即席狼団②・なんでそんなに。


聖室と違う、色褪せた青白い壁と床の通路を進む。


「…………」

「……」

「…………」

「……」


僕たちは無言だ。ミネハさんはリヴさんと一緒に先頭へ。

身体も大きくなったままで、何故かダガアが彼女の肩に乗っている。


空気が張り詰めて重い。僕の所為だ。いや僕の所為なのか?

でもこれは仕方ないというか、しょうがないというか。


「…………」

「……」

「……」

「…………」


確かに彼女には黙っていたけど、でもそれは―――前方から不穏な音がした。

レリック【危機判別】を使う。

赤が……5つ動いている。魔物だ。かなり近い。接敵する!


現れたのは赤い三角帽子を被った小鬼だった。それぞれ武器を持っている。

ナイフは……いないか。レッドキャップスだ。でも何か変だぞこいつら。


肌はゴブリンと同じ緑色のはずだが、このレッドキャップスは……土色。

岩肌ではなく本当に岩で出来たゴツゴツの肌だった。


螺旋突衝らせんとつしょうっ!」


いきなり力強くミネハさんがスピアーで突く。

レリック【スパイラル】の回転したチカラがレッドキャップスを2体、粉々にする。まるでドリルだ。


「……そらの型……昴……アルキュオネブレードっ……」


リヴさんのブレードが黒くなり、レッドキャップス3体を潰すように砕いた。

すさまじい。ひょっとして重力系統かな。


「岩のレッドキャップスか。亜種にしてもどうなんだこれ」


アクスさんは残骸を眺めて首をかしげる。


「大したことないわ」

「そりゃあそうだけどよ。でもこんなの変だろ」

「ん……確かに……珍しすぎ」


岩のレッドキャップスなんて魔物が居るのも驚く。

皆の疑問にミネハさんは苛立った。


「うるさいわね。現れたの倒せばいいだけでしょ」

「おまえなぁ……」

「ふんっ」


ミネハさんは一瞬、僕を見た。でも何も言わず先に行く。

その後も青銅製のゴブリン。鉄製のオーク。ミスリル合金製のグレムリン。

流体金属製のモスマンなどに遭遇。モスマン?


それら全ての魔物がミネハさんの【スパイラル】で粉砕されていく。

流体金属も形無しで、なんだか魔物が気の毒に思えた。


一切の容赦がないミネハさん。その貫き砕き方は強引で怒りを感じた。

ダンジョンの魔物に八つ当たりしている。誰が見ても明らかだ。


アクスさんは金になるからと金属魔物の破片を拾って、ふとぼやく。


「いくらなんでもおかしいだろ」

「まさに……亜種の……オンパレード」

「しかも土のダンジョンでも出現しなさそうな魔物のラインナップだぞ」

「ナ?」


僕は考える。

明らかに不自然なダンジョンの魔物の亜種。これはおそらく。


「ひょっとしたら、ハイヤーンの作品かも知れない」

「作品?」

「僕、調べたんです。錬金術師ハイヤーンのことを」


ハイヤーンは遥か大昔の錬金術師。三つの卵の童謡が有名らしい。

その童謡の為か、実在していない立ち位置になっている。


なのでハイヤーンについては殆ど伝説みたいなのが多い。

ダンジョンを造ったりとか。魔物を造ったりとか。


至宝級下位の魔物をソロで倒したりとか。

石ころから黄金を造ったりとか。一夜で要塞都市を造ったりとか。


レリックを開発したりとか、色々だ。

だから何が現実で何がお伽噺なのか分からない。


ハイヤーン。いったい何者なんだ。

そんな彼の夢とは。


「つまりハイヤーンは魔物を造ったってことか。錬金術師ってそんなに凄いのか」

「ん……錬金術師……なら……可能……」

「マジか。というかハイヤーンって実在しているのか?」

「実在しているわよ。だって三つの卵のひとつが現実に此処にあるじゃない」


皮肉を言ってミネハさんは僕を見る。


「…………」


僕は黙った。何も言えない。


「あのなぁ、ミネハ。いい加減にしろよ」


アクスさんが堪らずという感じで言う。


「なによ」

「おまえだって分かっているはずだ。ウォフが黙っていた理由。俺だって同じ立場なら……ホッスとレルに言わないかもしれない」

「ん……リヴも……黙って……いる」

「分かっているわよ」

「それなら」

「分かっていても…………分からないこともあるのよっ」

「ミネハっ!?」

「ナ!」


ダガアを落とし、先へ走って行ってしまった。僕は咄嗟に追いかける。

光の球がついてきて、僕の行く先を照らす。

見えた。ミネハさんだ。


「ミネハさんっ」

「うるさい。ついて来ないで!」

「暗闇で危ないですよっ」

「うるさいっ、あんたなんかにっ……はぁっーはぁっー……くっ」


追いついた。荒い息をしてミネハさんも止まる。


「ミネハさん。あの、すみませんでした」

「なんで謝るの」


ミネハさんは僕をジッと睨むように見ている。


「そのずっと……エリクサーの神聖卵のこと黙っていたこと、です」

「―――いいわ。そのことはアクスの言う通りだから」


ミネハさんの視線が変わる。とても悲しそうだ。いや。


「なんでそんなに寂しそうなんですか」

「……なに言っているの。別に寂しくないわ。悲しくもないわよ」


嘘だ。今は縋るような眼差しをしている。なんでそんなに……僕がさせているのか。

僕がこんなにもミネハさんを傷つけてしまったのか。


「すみません。ミネハさん」

「だからなんであんたが謝るのよ」


まっすぐミネハさんをみつめて言う。


「僕は、僕はミネハさんにそんな顔をさせたくないです」


言われたミネハさんは目を開いて、とても困ったような表情をした。

そしてため息をつく。


「はぁ、なに言ってんのよ。あんた。させたくなかったらちゃんとしなさいよ」

「すみません」


そうだよな。僕がしっかりしないと、ダメだよな。

ミネハさんは深くため息をつく。


「ねえ、ウォフ」

「はい」

「あんた……いいわ。もう」

「ミネハさん?」

「自分だって分からないのに、あんたに分からせようとするのはさすがに酷いわ」

「……」


なんのことだろう。

そしてアクスさんとリヴさんと合流して、ふたりに僕とミネハさんは怒られた。

あとダガアはリヴさんが抱えていた。











その先で金属製の魔物と何度か交戦し、辿り着く。

黒い扉だ。

4人で協力して開けると、黒い柱が真ん中にある部屋に入る。

奥に青い祭壇。石碑があって碑文が刻まれている。


「えっと―――『永室の祭壇に永遠なる卵を捧げん』とあります」

「それって三つの卵の二つ目だよな。確か……」

「どんな生き物も永く生きる生命のたまご~♪……よ。なによ?」


いきなりミネハさんが歌い出したのも吃驚した。

でも、その鈴と鳴るような透明感のある歌声には目を見張った。

アクスさんが感心したように言う。


「ミネハ。おまえ。歌がうまいんだな」

「ん……天使の……歌声……」

「別に、そんなんじゃないわよ。それでどうするの。まさか二つ目の卵があるって言わないわよね」


僕を見る瞳が怖い。


「それはさすがに」


背筋が冷える。10歳の女の子がしていい眼じゃない。


「ん……なら……どうするべ……?」

「ここで終わりってことになるわね」

「まぁそうだな」


ふたりとも案外あっさりしていた。

おそらく予想はしていたんだろう。でもそれは僕も同じだ。

なのでこんなことはあろうかと準備はしてきた。


「……方法はあります」

「は? あるわけないじゃない」

「……ほう」

「……そいつは、あれか。魔女の……なのか」


アクスさんは何か知っているようだ。

バツの悪そうな顔をする。


まぁそういうことです。


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