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それなり僕のダンジョンマイライフ  作者: 巌本ムン
Season2

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152/284

第V級探索者⑨


基本的にハイドランジアの周辺にある4つのダンジョン。

それと周囲に点在する小さなダンジョン。


それらの度々ゴミという俗称に関して議論にあがる探索者とその他の遺品。

それらは街のダンジョンの1階に集まる。

だから他のダンジョンにはゴミ場は無い……はずだ。


「ウチも詳しくは知らないっスけど、全てのゴミが集まっているわけじゃないみたいっス。取りこぼしというか、街のダンジョンに何故か集まらないゴミがこういう隠しゴミ場に溜まるみたいっス」

「初めて知りました」


とりこぼしのゴミか。考えると回収が困難なところにあるゴミかな。

他のダンジョンにもあるんだろうな。


「ウチもこれを見つけたのは偶然っス。最初は宝を見つけたと思ったっスけど」

「それがこのゴミ場だったわけですか」

「それでも何かお宝がないか探したっスけど、なんかそれっぽいのをいくつかアリファのところに持っていったっスけど、小遣い稼ぎぐらいにしかならなかったっス」


僕は苦笑いする。

その小遣い稼ぎ程度でも日々生きるには十分な金額だ。


「それで僕に見つけて欲しいんですね」

「よろしくっス」

「わかりました」


僕はレリック【フォーチューンの輪】を使う。

しかしこの部屋のゴミはどれもこれも濡れて錆び付いている。

うわっ、この革の鎧なんてカビが生えているなぁ。


「うーん。緑ばっかりですね」

「緑?」

「あまり価値がないってことですね。売れないわけじゃ……あっ」


あった。隠しゴミ場の一番奥のゴミ山の中に―――黄色い光がひとつ。

黄色か。やはり黄色か。はぁー黄色か。もうトラウマになりそうだ。


「どうしたっスか」

「あ、ありました。あの奥のゴミ山の中に埋まってます」

「……これっスか」


一番奥のゴミ山は、なんというか乾いた珊瑚やフジツボがこびりついていた。

まるで海底から持ってきたようだ。黄色の光は……この山の奥の下だ。


「僕がやりますよ」


他に宝はない。【バニッシュ】を拳の前に出して殴る。


「バニッシュナックル!」


殴ったところが削れる。


「おおっ、【バニッシュ】っスね」

「は、はい」


ビッドさんは知っていた。まあ、いいか。

僕はゴミ山を殴って消していく。そのたびに感じる圧倒的な磯臭さ。


本当に海の底にあったのか。水のダンジョンに海があるのか。

その間、ビッドさんは僕が指定した緑の光を回収していた。もったいないっスと。


「バニッシュナックル!」


最短距離でお宝に近付いていく。どのくらい殴ったか。

ようやく辿り着いた。その黄色い光は剣だった。


丸みを帯びた白い柄でソードガードが無い。

鞘も白く、他のゴミに刀身部分が埋まっていた。僕は握って引き抜こうとするが。


「っ!?」


なんだっ? 剣を握った途端、信じられないほどの重さを感じた。

だから咄嗟に手を離す。


「どうしたっスか?」

「あっいやこの剣が」

「お宝っスか!?」

「は、はい。この剣がそうなんですが」

「おっ、見るからに値打ちがありそうっスね」


ビッドさんはそう剣の柄を握る。


「あっ、その剣は!」

「まだ埋まっているっスけど、これくらいならっ!」


ビッドさんは力を込めて剣を抜いた。直剣だった。

どのくらい埋もれていたか分からないが、その年月を感じさせない剣だ。


ビッドさんは剣を抜く。

キラリと閃いてうっすら映える荒波の刃があらわれた。

僕は無意識につぶやく。


「きれいだ」

「えっ、ええっ? なんっスか!?」

「ビッドさん?」


剣を手にしたビッドさんは何か様子が変だ。

僕に戸惑う表情をみせて言った。


「こ、これオーパーツっス!」

「本当ですか」

「し、しかもウチ、新しいレリックを覚えたっス!」

「おおっ! それってどんな、あっごめんなさい」


暗黙のルールだ。安易にレリックを聞いてはいけない。


「【瞬足】っス!」

「……それって歩法の」

「やってみるっス!」


するとビッドさんの姿が掻き消え、僕の後ろに居た。


「できたっス!」


瞬足。瞬くような足取りってところか。

まるで瞬間移動のようだ。


「なんで背後に、うわあぁっ」


いきなりビッドさんは抱きついてきた。


「ウォフくんっすごいっスすごいっス! ありがとっス!」

「ちょっ、礼はいいですから、その剣が! 刃が!」


ふわっとした柔らかさと暖かさと同時に抜き身の剣が目の前でちらつき死を感じた。

気付きビッドさんは慌てて離れる。


「ご、ごめんっス」


ビッドさんはそわそわと剣を仕舞った。そして改めてという感じで僕に抱きついた。

思わず倒れそうになる。


しばらく抱きつき、満足したのか僕から離れた。

満面の笑みで抱きついたとき何度も反芻した謝礼を述べる。


「ウォフくん。本当にありがとうっス!」

「ま、まぁ、約束でしたから」

「この剣。『瞬足剣』と言うらしいっス!」

「良い名前ですね」


というかまんまだ。わかりやすい。

僕が持てなかったのはオーパーツだったからだろう。うん。きっとそうだ。

他にも確認したが、緑が山の底に数個あるぐらいか。隠し壁とかも無い。


もうここには用が無い。依頼も終わったので外へ帰還することにした。

よっぽど嬉しかったのか。ビッドさんのテンションはあがっていた。


魔物が出るたびに【瞬足】を使って翻弄する。

ただ水妖の兵士相手に【瞬足】して『瞬足剣』で切りつけるのはちょっとなぁ。

ただの剣なので切っても水を散らすだけで意味がなく、核を狙っても外していた。


あと【瞬足】も思ったとおりの地点に移動するのはまだ安定してないとか。

まだまだ練習が必要っスねと笑う。


そんな感じで行きとは違って大きなハブニングもなく、僕たちは外へ帰還した。

まあ特にこれといって用事はないので、飯奢るっスと砦跡の酒場へ。


海鮮料理を堪能する。

それからまあ自然と一緒に帰ることになったけど、ふと雑貨屋の軒先が目に入った。

軒先には筒のような籠があり、『大特価』という札が貼られている。


その中には何本も剣が入っていた。

僕の視線に気付いたのかビッドさんが言う。


「剣が気になるっスか」

「ええ、まあ、ちょっと」


僕は雑貨屋に近付く。そして筒にある剣のひとつを握った。


「っ!?」


瞬間、握っただけなのに異様な重さを感じた。

僕が握った剣はどう見ても単なる剣だ。外見からナイフより多少重い程度。


なのに全く持ち上げられなかった。あまりにも重すぎる。


「ウォフくん?」

「ナ?」

「……あっいや、なんでもないです」


僕は剣から手を離す。


「そこらの剣はあまり使えないっスよ」


腰にある『瞬足剣』の柄頭を撫でるビッドさん。

僕はあはは……っと苦笑した。



















夜。

遠く……遠く呼ぶ声がする。


(ウォフ。ウォフ。目覚めなさい。ウォフ……)


「…………?」


目を開けると真っ白い空間にいた。

そこには刃物のように神秘的に輝く美しさを備えた銀色の髪の美女がいた。


「……ナイフの女神様……?」


にっこりと神々しい美女は笑った。


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